公判速記録<2005年2月8日 高松高裁>
午前11時.
裁判官
では審議を始めます。被告人のお名前、生年月日を確認します。名前からいってください。
M
MHです。昭和53年1月13日です。
裁判官
本籍を言ってください。
MH
徳島県■■■■■■■です
裁判官
住居を言ってください。
MH
徳島県■■■■■■■です。
裁判官
仕事は何をしておられますか?
MH
家業の■■■■■を手伝っております。
裁判官
で後ろの椅子に座ってよく聞いていてください。
それでは弁護士から控訴趣意書を提出して頂いております。この通りという事でよろしゅうございますね?
弁護士
はい。
裁判官
次に検察官のほうから答弁書を提出して頂いております。この通りという事でよろしいですね?
検察官
はい
裁判官
それから双方の方から訴訟あるいは被告人質問等の請求がありまして弁護人請求の書証については検察官同意という事でよろしいですね?
検察官
はい
裁判官
それから検察官請求の訴訟については弁護人いかがですか
弁護士
はい。主に書籍ですけれども、どうしても予弁ではございますが、内容も多いものですから内容を検討して次回に。
裁判官
今日はできないんですか?
弁護士
今日はできません。内容をまだ検討できていません。次回に弁論さして頂きます。内容の問題ではなくて論文であればですね、証拠能力の関係から言うと証拠事実という形にはなりませんね?
裁判官
多分ねー、そうだと思います。
弁護士
だから 内容を検討するお時間とお考え頂きたい。
裁判官
それはむしろ何といいますか、弁論とかご意見の方に反映させようとされるご趣旨じゃないかとおもうんですけどもね。訴訟同意というかあれよりは。じゃあ訴訟については同意という形でよろしいですか?
弁護士
今言いましたように意見を検討するお時間をいただきたいという事に変更します。
裁判官
じゃそれぞれ1から5号書、同意書面として採用いたしますので。まず弁護人の方から1号書から5号書まで内容などをどうぞ。
弁護人(一部速記欠落)
請求番号1番は、メルクマニュアル第17番でございまして大麻の使用は人体的な依存を引き起こさないこと等でございます。 請求番号2番は書籍になりますが、マリファナの科学でありまして起訴趣旨は大麻の成分が極めて安全な薬剤であると。第3は法学セミナーでございますが、マリファナの身体的効果については、結論として、通常の摂取量ではマリファナの毒性はほとんど無視してよいこと等でございます。
裁判官
はい、それじゃ提出していただけますか。当該文面コピーしていただいているという形になるんですかね。検察官、そういう形でよろしいですかね?
検察官
はい
裁判官
全体ではないんですね
弁護士
全体ではありません。
裁判官
それではそういうことで証文の趣旨だけ取調べするということで。
(被告人質問)
弁護人
大麻が有害かどうか、これは先ほども裁判官がおっしゃられた通り、きちんと科学的に立証すべき問題なのだけれども、あなたが大麻に対してどのような認識を持っていたか、または持つようになったか、まずこれを質問しますね。
まずあなたは、逮捕されて、警察の人や、検察官から大麻の有害性、なぜいけないのかということについてどのような説明をうけましたか?
MH
はい、今回僕は捕まったのは2回目なのですが、大麻については有害だとか、あまり害がないだとか色んな情報が流れているので、僕はまだ知らないことがあるかもしれないと思っていました。そこで今回、検察官から大麻に致死量があると聞きました。
弁護人
致死量があると、そういう説明をされたわけですね。
MH
はい。
弁護人
あなたは第一審で保釈になって、大麻が本当にそういう有害性があるのかどうか、色々文献などを見て検証しましたね。一般的に有害であるというのはどういう根拠から言われていましたか?
MH
厚生労働省が委託で運営している「ダメ、絶対」というホームページでは、大麻を使用すると幻覚や幻聴があるとか、無動悸症候群になるとか、神様が見えるとか、自分の体験と照らし合わせてみても、そんなことあるのか?というようなことが書かれてありました。
弁護人
それから最高裁判例などですね。
MH
はい。
弁護人
この最高裁判例には、特に有害性に関してこのような表現はしていませんけども、有害であることは公知の事実であるということが書かれていましたね。これに対してもあなたは色々検証してみたのですね。 その結果どうでしたか。
MH
僕も自分を正当化するために、無害性を主張する意見ばかりを都合よく考えているのではないかと思って反対の意見も色々調べてみたのですが、「ダメ絶対」などの情報もどこから来たものなのか公開されていないし、無害性を主張するものの方がきちんとした研究機関で調べてあるものがありました。
弁護人
今回裁判所に提出した文献もあなたが見た文献の中の一部ですが、この中でも大麻は害があるというものよりも、無害性を主張するものの方が科学的根拠があり説得力があるということですね。
MH
はい。
弁護人
では、あなたは今大麻を使用したり栽培することについてはどう思っていますか?
MH
法律で禁止されているかぎりは二度と手を出すことはありません。ただ大麻を使用することが、懲役刑に値するようなものかといえば、それはどうなのかと思います。大麻取締法が制定された経緯を調べても、害があるからということではなさそうですし…
弁護人
あなたが今まで調べてきた結果、大麻は法律で禁止されている、だからあなたはもう大麻は使用しない、けれども法律で規制されているということには多いに疑問が残るということですね。
MH
はい。覚せい剤などと同等にされているというのは、厳しすぎると思います。
弁護人
あなたは家業を手伝っていて、お父さんの手助けをするためにも社会復帰をしなければいけませんが、こういう大麻に関する運動は、刑とは別に、あなたは信念として持っているわけですね。
MH
はい。
弁護人
そういう意味での活動はしていきたいと。
MH
はい。もちろん生活の立て直しが先だと思いますが。
弁護人
終わります。
裁判官
検察官どうぞ
検察官
あなたは大麻を音楽との関係で吸っていたわけね。
MH
はい。
検察官
で回りの人も音楽が好きなの?
MH
はい。僕の場合逮捕されるのは2回目なのですが、一回目もまあそういった音楽仲間と一緒でした。
検察官
あなたの場合大麻を吸ってどれくらいききめがあるの?陶酔感などあるみたいだけど、時間とか。
MH
2、3時間ですね。
検察官
大麻を吸わないと音楽はできないの?
MH
そういうことではないです。
検察官
なくてもできるの?
MH
なくてもできます。
検察官
あなたはこれからも音楽を続けていくわけでしょ?
MH
先のことはわかりませんが続けていきたいと思っています。
検察官
大麻を吸わなくてもそういうことはできるの?
MH
はい。
検察官
あなたは大麻吸って車に乗ったりするの?
MH
しません。
検察官
今回大麻の有害性とか資料を弁護士さんが出しているけど、あなたもこれはインターネットなどで調べたんしょう?
MH
はい、色々調べました。
検察官
じゃあ、この5号書には、運動能力が減退するとか、精神病を発病するとか書いてあるけど、あなたはこういうのは読んでないの?
MH
例えば、「ダメ絶対」などもそうですし、調べたらこういったものにはすべて、逆の意見の、きちんとした科学的根拠があるものが存在しました。幻覚幻聴なども、まったくないものが見えることはないですし、大麻を吸って人に迷惑をかけるものでもないし、やはりなぜいけないのかと思います。
検察官
それはあなたの経験から言って? それとも本やインターネットを見て?
MH
例えばそういう、薬理作用みたいなものは、独自性のあるものじゃないですか。それぞれの精神状態があって人と比べようがないので、自分の主観的な体験と、あとインターネットなどを調べて他の体験した人はどう思っているか、体験したことない人は大麻のことをどう思っているかなども色々調べた結果です。
検察官
やっぱりインターネットとかそういうのでは、大麻を認めたらいいじゃないか、という情報が溢れているわけ?
MH
はい。例えば大麻で検索するとダメ絶対のホームページやニュースなども出てきますが、石油のかわりになるエネルギーになるとか、大麻には有用性があるといった情報などの方がどちらかというと多いです。
検察官
じゃあ大麻についてっていうのは色々議論が分かれているのはあなたも知っているわけでしょう?あなたは前に一度裁判も受けているわけだしもうそういうのをやってはいかん、という気持ちはなかったの?
MH
前回捕まったときも、具体的に何が悪いのか、刑事さんも知らなかったのです。大麻自身のことも知らなかったし。で裁判が終わって、自分で何が悪いのかなど、大麻のことを調べるようになったのですけど、まだまだ知らないことがたくさんありました。
検察官
じゃあまたやり始めた理由というのは、自分で調べたからなの?それとも誘われたから?
MH
僕の場合は音楽で、海外のアーティストでは大麻を賞賛する人もたくさんいますし、ジャマイカなどでは文化的にそういうのが根付いているのでそういうのを見たり…
検察官
じゃあ、あなたは今でも大麻をやることが悪いとは思っていないの?
MH
全部が全部悪くないとは思ってないです、法律で禁止されているのでもうやるつもりはないですし、悪いところもあると思います。しかし、身体的害薬など、タバコと比べても低いと色々な研究機関で証明されていますし。
検察官
あなたはあまり大麻を悪いと思ってないようだけど、それでは大麻をやめるつもりはないと。
MH
いえ、そうではなく、全部が全部悪くないということではなくて、それについてきちんと検証する必要があると思います。今まで大麻取締法というのが検討されずにきていると思うんですよ。ヨーロッパなどでの非犯罪化の動きも最近活発ですしきちんと検討すべきだと思います。
裁判官
今、あなたは法律で禁止されている限りは大麻を使わないと言ったけれども、どうして一番最初の裁判の前、あるいは裁判の後はそういう気持ちになっていなかったのでしょう。
MH
やはり最初の認識が薄かったと思います。 最初は音楽から興味をもったのですが、一回目の裁判の後、インターネットなどを見て、やはりそれほど悪くないのではないかと思いました。大麻で取り締まられること事体が理不尽であるというようなことも見たりして…
裁判官
君も大麻の使用や栽培を禁止するという法律はおかしいから、その法律には従わなくていいという気持ちになったんですか?
MH
いや、そこまでではないですが、理不尽だという意見があって、僕もそれに共感はしましたし、科学的根拠などもありましたし、大麻についてそんなに検討もされてないままきているのではないかと思うところもありました。
裁判官
はい、お疲れ様でした。では椅子に座って下さい。
それでは証拠調べ以上ということで、証拠調べ後の弁論ということで期日を決めたいんですがどれくらい先がよろしいですか?
弁護人
証拠調べ後の弁論と申しましてもまだ終わったというわけではなくて、新たな文書を証拠として申請して、また意見を述べたいのですがよろしいですか?
裁判官
はい、結構ですよ。
弁護人
では次回期日は一月空けてお願いします。
裁判官
3月15日10時半から11時でどうでしょう。
弁護人
結構です。
裁判官
では、証拠申請等ありましたら早めに出して頂くということでお願いします。
裁判所としましては、証拠調べ等ありましたら、それでよろしいんですけれども、一応次回終結予定ということにしておりますので、その点よろしくお願いします。
では次回は3月15日火曜日の10時半ということですので、それでは今日は以上です。
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