NORML "急進的" ルース・ベルヴィレ - 2011年3月15日 火曜日
私はここのところ日本で次々に展開して行く数々の惨劇について報じられるテレビ番組やネットの記事にくぎ付けになっている。まず最初にこの島国の近辺をマグニチュード8.9の地震が襲い(訳注: 後の再評価により実際には9.0であった事が判明している)、続いて途方もない規模の津波が陸地を洗い流し、その跡には 1 万人を越えると推定される死者、そして更に多くの行方不明者を残して行った。また現在それにより発生した停電と予備冷却機構の破損のため、この国の原子力発電所がメルトダウンを起こす可能性が現れている(訳注: メルトダウン = 炉心溶融は既に発生したと見られる)。
(CleanEnergy.org) 本日ニューヨーク・タイムズ紙が報道した通り、東京から170マイル(訳注: およそ274 km)北に位置する福島第一原子力発電所で部分的な炉心溶融が発生した模様、その付近にある福島第二原子力発電所では冷却機構が動作不能となっている。揮発性の放射性物質が漏洩したが、その正確な量は未だ不明である。報道によれば放射線量は法定許容値を既に越えており、この二カ所の原発の近隣に住む20万人以上の住民が避難した。発電所の数名の作業員が深刻な被曝をしたとの報道もあり、確認されている限り1名の作業員が死亡し、発電所の外に居た160名以上の者が放射性物質に汚染された。放射性のセシウム同位体も検出されており、この事実は核燃料棒の損傷を明らかに示している。
私の友人や家族は、どんな事件がニュースになっていても、私ならばそれを大麻に結び付ける方法を見付けられるのだろうと私をからかっている。その関連付けには日本の人々に(日本の大麻活動家である Gomyo^、Hannabis、the Hoodie Monks、そして Taku も含めて)心からの哀悼の意を表明することを前置きするけれども、この話題にしてもやはり同じ事だ。
大麻と日本との関連付けは、1986年、ウクライナのチェルノブイリで起きた原子力災害によって汚染された土壌を浄化するために行われた取り組みから見出す事ができる。
(マグロウヒル高等教育) 爆発事故から三年が経過した 1989 年、ソビエト政府は国際原子力機関(IAEA)に対し、発電所の周辺地域における放射性物質のもたらす健康への影響を査定するように依頼した。それにより発見された最も重要な事実は、放射性があり有毒でもある物質、例えばヨウ素、セシウム137、ストロンチウム、プルトニウムなどが土壌、植物、そして動物の体内に濃縮されていた事であった。このような物質はヒトの健康に害を及ぼす恐れがある。例えば(訳注: 放射性同位体の)ヨウ素は数週間のうちに崩壊して消滅するが、吸入もしくは食物からの摂取により甲状腺に蓄積され、それが崩壊するまでの間に高い放射線量を発する事になる。1991 年よりカナダ原子力協会は、事故の起きた原発の周囲で甲状腺癌の発生率の著しい増加が見られている事を指摘している。質量数 137 の放射性セシウムであるセシウム137は食物連鎖システムの中に入り込み、摂取されてから代謝によって排出されるまでの間に内部被曝を引き起こす。
このような有毒物質および放射性物質を土壌から取り除くことは、原子力災害の起きた後の生態系を回復させる上で極めて重要である。それらの物質を土壌から特定の植物に吸収させる「ファイトレメディエーション(phytoremediation; 植物による浄化)」と呼ばれる技術があるのだが… この仕事に最も向いている植物のうちの一つは何だと思う? それは古き良き産業用大麻、薬用にはならない大麻の従兄弟であり、この国の警察があまりにも無知であってその違いがわからないために我々の政府が栽培を禁じている産業用大麻だ。
(Hemp.net) 1998年、Consolidated Growers and Processors 社 (CGP)、PHYTOTECH 社、ウクライナの Institute of Bast Crops が、歴史上最も重要なプロジェクトの一つともなり得る活動を開始した。チェルノブイリ周辺の汚染された途上に産業用大麻を植えて汚染物質を取り除こうとしたのである。
ファイトレメディエーションは兵器製造工場跡地の土壌や水から放射性物質を取り除くために用いる事が可能であり、またこれは金属、農薬、溶剤、爆発物、原油、芳香族多環式炭化水素、そして埋立地から浸出する毒素を除去する手段にもなる。
植物は、有機汚染物質を破壊、分解し、また金属汚染物を濾過したり内部に閉じ込めたりする事でこれを固定する。PHYTOTECH 社は植物を用いて鉱床の土壌や水からウラニウム、セシウム137、ストロンチウム90をより効率良く抽出するための実地試験を行っている(訳注: 原文では feild trials とあるがそのような語は存在しない。field trials の誤りと思われる)。
PHYTOTECH 社の研究科学者である Slavik Dushenkov は、「産業用大麻は我々の発見した中で最も効率良く汚染物質を除去する事のできる植物のうちの一つである事がわかった」と述べている。この試験の結果は大いに期待を持てるものであり、CGP 社、PHYOTECH 社、Bast Institute は 1999年の春にはチェルノブイリ区域での本格的な試験を行う事を計画している。
産業用大麻によるファイトレメディエーションという技術の適用可能な範囲は、単に原発事故後の汚染除去という枠に収まるものではない。もし大麻栽培の禁止令が撤廃されて、その産業を発展させる事ができるようになれば、数多くの雇用機会を作り出す事も可能であろう。
(Damn Interesting) 全体的に見て、ファイトエクストラクション(植物による抽出)は世界中にある何十万ヶ所もの危険物廃棄場(EPA によればアメリカ国内だけでも 3 万ヶ所)を浄化する上での最も有望な手段のうちの一つだ。仮にその取り組みから僅かな成功しか得られなかったとしても、植物を用いて汚染物質を除去する事が可能であれば、浄化作業に必要なコストを大幅に押し下げる事ができるであろう。しかもファイトエクストラクションという概念はファイトレメディエーションの領域全体から見た一つの例でしかなく、植えられた植物は単に有毒物質を取り除くのみならず、それを分解したり(ファイトトランスフォーメーション)、微生物の活動を活性化させたり(ファイトスティミュレーション)、元の場所から汚染物質が周囲に滲み出すことを防ぐ(ファイトスタビライゼーション)。
チェルノブイリ原発事故の発生したベラルーシでは、産業用大麻はただ土壌の浄化の為に用いられているだけではなく、そのようにして栽培した大麻からバイオ燃料を作り出すことで収益を上げてもいるのだ。
(CannaZine.co.uk) ベラルーシ外務大臣 Sergei Martynov は次のように述べている。「我々はエタノールこそ安価で自然に優しい持続可能エネルギー源として最も有望なものの一つであると考えており、そしてそれを生産するに当たって、この国には様々な強みがある。」
「ベラルーシは恐らく欧州の中で唯一の、バイオマス生産に適した広大な土地を持つ国である。それは21年前にチェルノブイリ大災害が発生した大地だ。」
「ベラルーシ政府はエネルギー開発の面でエタノールが重要課題であると宣言している。その最初の一歩を既に進んでいる事に我々はとても喜んでおり、今後の大規模なエタノール生産の成功を確信している」。外務大臣はこのように話を結んだ。
グリーンフィールド議長アン・マクレーンは次のように述べている。「グリーンフィールドのバイオエタノール製造計画では、放射性同位体に汚染された土地を用いてバイオマス作物を生産、エタノールを蒸留する。また同時に我々は、バイオマス作物を栽培することで事故の影響を受けた地域を浄化する事ができると信じている。」
日本では産業用大麻の栽培の認可を得る事はできるものの、1948年、アメリカ政府が占領した日本に大麻取締法の成立を強要したおかげで、実際にその認可を得る事は不可能に近い。アメリカの法律と同じように日本の大麻取締法は、薬用でない産業用大麻の栽培者と医療用もしくは嗜好品としての大麻の栽培者を混同しているのだ。
(JapanHemp.org) しかしながら第二次世界大戰後の 1948 年、アメリカGHQ 占領下で大麻取締法が成立した。その結果、大麻を栽培するためには都道府県知事に許可を毎年申請しなければならなくなった。この許可制のために、産業用大麻の生産者は麻薬を製造しているのと同じであると思われたのである。それからというもの、植物由来の大麻製品は戦後の石油製品の普及に伴って次々と姿を消して行った。そして大麻の栽培者数は徐々に減少して行く事となった。
1950 年の時点では、日本の大麻農地面積は繊維の生産と種の生産を合わせて 4049.2 ヘクタールであり、その農業人口は 25,118 名の規模であった。しかし農林水産省の資料によると 1996 年にはその面積が 12.4 ヘクタールにまで減少している。そのうちの 12.0 ヘクタールは東京から 50 km 北に位置する栃木県にある。
今では大麻生産者はたったの102名しか居ない。
(厚生省・医薬安全局、1999年1月1日の資料による。)
少なくとも日本には幾らかの大麻生産者がおり、法的には今すぐにでも大麻を用いたファイトレメディエーションを開始できる状態にある。もしアメリカの原子力発電所がメルトダウンを起こしたら、我々はまず全ての政治的駆け引きと議論を切り抜けて必要な法案を成立させ、産業用大麻をスケジュール I の薬物に指定して栽培を禁じている連邦法を撤廃しない事には、大地の浄化を始めるための産業用大麻の最初の一株を植える事も適わないであろう。
この記事は当初NORMLで発行された記事です。
Source: Cannabis Culture Magazine
Could Hemp Help Nuclear Clean-up in Japan?
By "Radical" Russ Belville, NORML - Tuesday, March 15 2011
翻訳とコメント by PHO
ファイトレメディエーションという概念は初めて知ったが、要するに土中の放射性物質を水と一緒に吸い上げて植物の内部に取り込む事を言うのであるから、それを吸い上げた植物は内部の放射性物質が崩壊を終えるまで何処かに閉じ込めて置かなければならないのでは無かろうか? そこに含まれる炭水化物を糖化、醸造、蒸留してエタノールを生成したのでは、折角閉じ込めた放射性物質が再流出する結果になりそうだ。正直に言って私は薬用にならない大麻に興味は持てないのだが、土壌汚染、水質汚染というものが本当に深刻な結果をもたらす事は確かであり、大麻を植える事で汚染された土壌を浄化できると言うのならば、それは積極的に実行すべきであろう。
[THC編集注:ラジカル・ルースさんの話に出てくる日本の活動家Takuさんは、大麻報道センターのブレーンの1人で、当サイトに薬物政策論を寄稿して頂いたTakuさんのことです。以前、大麻報道センターがラスさんの電話をインタビューを受けた際、Takuさんに対応して頂いたのでした。]
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