2011年3月31日 - アメリカ合衆国メリーランド州ベセスダ
メリーランド州ベセスダ: 米国立衛生研究所 (NIH) の一部門である米国立癌研究所 (NCI) は、そのウェブサイト上で大麻の活性成分が抗癌作用を持つ事を認めた。しかしながら、癌専門医が増殖抑制治療の目的で大麻の使用を奨める事を認めるまでには至らなかった。
先週この機関は cancer.gov のウェブサイトに大麻と癌の問題についての新たな項目を追加した。"Cannabis and Cannabinoids (PDQ)" と題されたこの項目には、「癌自体やその治療のために起こった症状の治療のために、大麻およびその成分を用いる事についての概略」が記載されている。
このウェブサイトでは、大麻に含まれる活性化合物が癌細胞に対して選択的に働き掛けてその増殖を抑制する事が前臨床試験から示された旨を、次のように述べている。「カナビノイドは様々なメカニズムによって抗癌作用を発揮している可能性がある。例えば細胞死の誘導、細胞増殖の抑制、そして腫瘍における血管形成や転移の抑制などである。カナビノイドは癌細胞を死滅させる一方で、変異していない細胞には影響を及ぼさないようであり、むしろそれらを細胞死から保護している可能性さえ存在する。」
サイトには更に次のように書かれている。「医薬品としての大麻が癌患者らに与える可能性のある利益としては、他にも鎮吐作用、食欲増進作用、鎮痛作用、睡眠改善作用などが挙げられる。」
一方で、以前この項に含まれていた次の文言は 3 月 28 日の月曜にサイト管理者によって削除された。「統合腫瘍学の慣行では、医療従事者は医療大麻を症状管理の目的で勧めるのみならず、直接的な抗癌作用を目的として勧める事もできるものとされている。」
サイト上の該当する部分は現在次のように書き換えられている。「医療の実例に関する調査結果は存在しないが、癌患者のために医療大麻を処方する医師は、主として症状管理の目的でそれを処方しているものと見られる。」
また次の文言が同ページに追加されている。「米国食品医薬品局はいかなる疾患に対してもその治療のために大麻を用いる事を承認していない。」
NCIがその文言を修正したのは、メディア各社がその初期評価を「大麻は現在スケジュール I のドラッグに分類されているが、この分類に影響を与える事になるかも知れない」と報じた後の事だった。連邦法では大麻はスケジュールIの規制物質とされており、医療目的での使用は一切認められていない。
NCIの声明によれば、サイト上の文書は「治療法の推奬として読まれる事を意図したものではなく、またいかなる連邦政府政策をも代表するものではない」との事である。また NCIは次のように付け加えている。「Cannabis and Cannabinoids の項目にあったPDQの概要が注目を集めたことを考慮して、(訳注: 研究所の)レビュワーはその記述を見直し、表現を変更する事に決めた。委員会が元々表明したかった内容を明確にして、幾つかの点で招いた可能性のある誤解を訂正する為である。」
過去数十年の間、カナビノイドおよび内在性カナビノイドが様々な種類の癌細胞に対して抗癌作用を持つ事が幾つもの前臨床試験によって立証されている。その種類としては乳癌、前立腺癌、結腸直腸癌、皮膚癌、肺癌、口腔癌、リンパ腫などがある。
カナビノイドの抗癌作用についての研究がアメリカで最初に行われたのは1975年の事であり、その研究報告は国立癌研究所の発行するジャーナル上で発表されている。
より詳しい情報についてはNORML事務局長アレン・サンピエール (202)483-5500 もしくは NORML 副事務局長ポール・アルメンターノ(paul@norml.org)にお問い合わせ下さい。大麻の持つ抗癌作用に関しての文献レビューは http://www.norml.org//index.cfm?Group_ID=7002 にあります。
Source: NORML NEWS
National Institutes Of Cancer Website Recognizes Cancer-Killing Properties Of Cannabinoids
March 31, 2011 - Bethesda, MD, USA
翻訳とコメント by PHO
表明の内容そのものは既にさまざまな研究機関が繰り返し述べて来た事であり、何ら目新しいものではないが、この見解を国立の研究機関が表明したという事に私は驚く。もしこれが日本であれば、このように政府の意向に反する見解を、たとえそれが実証された事実であったとしても何処の機関が表明できるだろうか。アメリカでは、少なくとも大麻問題に関しては連邦政府の意向が国の隅々まで反映されなくなっている事が見て取れる。何とも羨しくもあり、情けなくもある話だ。
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