サル・パラダイス
さて、このような判決をいただいた山さん、白坂はん、土屋弁護士。驚きあきれたと思います。
当然、上告します。その趣意書が先に紹介した、このホームページに載ってる「上告趣意書 山崎一夫」(2011.5.17)です。
名文ですよ。これだけでも現在の「マサラ」、おっと、もういいでしょう、「マサラ」は「大麻」のことです。現在の日本における大麻制度の大いなる矛盾を的確に検証しつくした立派なルポルタージュです。
さあ、最高裁での裁判官が下す判決はどう出るのでしょう。
結論からいいます。この物語の終わりは10中8、9、こうなります。
先の話の繰り返しです。
確かに被告の指摘はよくできているが、まだ「大麻」にはわからないことが多い。依って、山さん、刑務所に行ってください。
結論は変わらず、世の中は変わらず、あいかわらず無悪の多くの国民が刑務所に入れられ、その制度ゆえに闇組織が栄え、もしかしたらこうでなければ、かなり楽になれる難病者はそのままです。
そして、物語が残りました。
そのタイトルはどうしましょうか。
「日本一の大バカ者、そなたは裁判官」「大バカ裁判官、活躍す」
ねえ、ねえ、今回だけ子供支店長ならぬ子供裁判官にやってもらいましょうよ。純粋、ピュアな。
「山崎のおにいちゃん、もう刑務所から出ていいよ。だって、おにいちゃんはだれにもわるいことしてないし、自分のからだだって傷つけてないんでしょ。」
あるいは、AKB48とかのアイドルの一日裁判長でもいい。
「山さん、あなたは悪くないよ。どう考えたって、この法律のほうがおかしいよ。だって、大麻が悪いことの証拠もってないんだもん。それで刑務所いれるなんて。ねえ。うん、そうだよねえ。」
まあ、こう書いてきましたが、裁判長、あなたの苦悩もわかります。
この内容で普通に結論を出していいなら、素直に無罪です。
しかし、あなたが向かっている先はおそらく国家でしょう。
山さん一人を無罪にすることで、あなたは国家というか日本政府に反旗をひるがえさなければならない。
それも、この件に関しては、日本人としては今まで誰もやっていない初のことです。
学生がアイガー北壁に臨むより難しいかもしれない。
しかし、これはあなたにしかできないことなのです。
山崎さんを無罪として救うことは、天から見て、人間の良心、人間の正義にかなっています。このことは間違っていません。
あとは、できるかどうか。やるかどうかです。
第二次大戦における杉原千畝のような心境かもしれません。
ナチスの迫害から逃れようとするユダヤ人数千人に脱出するためのビザを彼は不眠不休で発行しました。
当時、同盟国であったナチスドイツに逆らった行動を起こしたのです。
ありえない。当時の政府の者の行動としては。
しかし、そうしなければ何千もの無実の人がガス室に送られたのです。
悩みに悩んで最後に彼は、人間の良心と正義にしたがったのです。
人間は賢くなるとあたりまえのことができなくなります。しにくくなります。
しかし、我々は人間なのです。人間は良心と正義であってほしいと思うのです。
そして、裁判官、あなたには間違いなくそうであってほしいと思うのです。
この物語の最後は、私はこうしたい。
裁判官はふだんはパッとしない普通のどこにでもいるようなおじさんでした。
彼は山さんの話に耳を傾け、この日本の大麻制度の矛盾に気づくのです。
このことで、これ以上無実の人を刑務所に送ってはならない。
そうわかったものの、彼は自分の立場、地位、家族、あらゆることを考え、悩みに悩みぬきます。
最後に彼は、心の底からの良心の声に従います。
「無罪」
その判決を下した時、彼は自分に未来がないことを悟っていました。
しかし、その一方で彼の心は妙にすがすがしい気持ちで満たされていました。
おそらく、自分はこのような仕事をするためにこの道を選んだのではなかったか。
それが初めてかなったのです。
さて、この物語のタイトルは何としましょうか。
「裁判官」
それだけで、私はいいと思いますよ。
(おしまい)
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