最高裁への異義申立書

投稿日時 2005-09-10 | カテゴリ: Iさん裁判

最高裁への異義申立書

異議申立書

平成17年(あ)第1175号 大麻取締法違反、関税法違反
被告人 ■■■■
最高裁判所 第3小法廷 御中

平成17年9月7日
弁護人 真木 幸夫

 頭書被告事件につき平成17年9月5日上告棄却の決定があり、同月6日決定謄本の送達を受けたが、下記理由により異議を申し立てる。

異議の理由

1.はじめに

 御庁がなされた9月5日付け上告棄却決定は、理由が簡略に過ぎ、根拠も示さず理解し難いものであって裁判を受ける被告人、国民の側からすれば、憲法に保障された裁判を受ける権利(憲法31条、32条)というものはこの程度の意味しかないものかと誤解を招く虞すらある。

2.

 同決定は、弁護人の上告趣意に対して、「大麻取締法違反及び関税法の各規定違憲をいう点は、大麻が有害なものではないとか有害性が非常に少ないものとはいえず、また、これらの法律が定める所論は刑が違反行為の罪質に対して著しく均衡を欠くものとはいえないから、所論は前提を欠き、その余は、違憲をいう点を含め、実質において単なる法令違反、事実誤認の主張であり、被告人本人の上告趣意のうち、大麻取締法の規定違憲をいう点は、前同様前提を欠き、同法の適用違憲をいう点は実質において単なる法令違反の主張であって、いずれも刑訴法405条の上告理由に当たらない。」としている。

3.最近の大麻取締りについての立法的事実精査、検討の重要性

 少量の大麻製品の非常習的な自己使用目的の行為は訴追を免除すべきであると結論付け、大麻法自体を基本法違反と断じた少数意見も付されているドイツ連邦憲法裁判所の1994年3月9日決定等の海外の裁判所の動向も参考にされるべきであり、又20世紀末から21世紀に入って加速している大麻についての欧米先進諸国の最近の非刑罰化、医療合法化等の顕著な合法化傾向に鑑みても、約60年前の大麻取締法制定当時や20年前の最高裁の合憲決定が出された時点とでは、大きく法規制を支える立法事実が変化している。

 さらに、規制緩和が要請されているわが国全体の昨今の社会情勢からも、大麻取締法自体が見直しを求められていることは、明らかである。

 法規制の見直しをしないのは、明らかに国会の怠慢である。

 最近の医学的、科学的根拠にも裏打ちされた上記欧米を中心とする先進国で大麻規制が非犯罪化され、非刑罰化されている状況は、現時点での法律の合憲性、違憲性を支える重要な立法事実として十分に考慮に入れられなければならないのである。

4.司法裁判所としての責務

 立法、行政の過誤、怠慢を糾すことこそ、司法裁判所の責務である。

 理に基づいた個人の自由、権利の主張が窒息させられようとしているのであるから、これ以上意味の無い「立法裁量」の隠れ蓑で違憲の瑕疵を覆い隠し続けてはならない。特に人の健康や人心の自由に拘わることについて、法律の改廃、修正は一刻の猶予もならないはずである。大麻(THC)の薬効を欧米の大手製薬会社が研究して抗うつ剤やエイズ、末期癌の患者に対する薬として製品化もされ始めている世界的現実を直視しなければならない。

 以上により、本件上告趣意に鑑みるならば、9月5日付け上告棄却決定は、理由が付されておらず、内容に明らかに重大な誤りがあると愚考せざるを得ないものであり、人権擁護の最後の砦である司法裁判所の責務を放棄したとの誹りすら免れ得ないものであると考える。

 よって立法事実の検証、すなわち、記録の精査と再度の考案を求め、敢えて異議申し立てに及んだ次第である。

5.むすびにかえて

 最後に司法裁判所の責務ないし「実質的法治国家の実現」という点に関して、次の法律書の一節を特に掲記したい。

 「第2次世界大戦後、まず最も強く指摘されたのは、『法律による行政の原理』とは、『法律によってさえいればよい』あるいは『法律によりさえすれば何でもできる』ということと同義ではない、ということであった。これは、…しばしば『形式的法治国に止まらず実質的法治国の実現を』という表現によって主張されたところである。

 この『実質的法治国』ないし『法の支配』の標語の下に問題とされてきたことは、伝統的な『法律による行政の原理』との関係では、おおよそ2つの事柄であった、ということができよう。第一は、『法律による行政の原理』とは、行政はともかく法律に従ってさえいればよい、ということなのではなく、その場合、法律自体が一定の内容の保障のあるものでなければならない、ということであり、第二は、伝統的な『法律による行政の原理』のみでは、これを如何に全行政活動にわたり貫徹したとしても、国民の権利救済という観点からは不充分なものが残る、ということである。

 ところで、右の第一については、実は、日本国憲法が立法権に対する関係でも基本的人権を保障し、更に、裁判所に違憲審査権を与えているということにより、法制度は一応の決着がなされている、と言うことができる。」(藤田宙靖『第3版 行政法Ⅰ(総論)〔改訂版〕、1995、122頁以下』)






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