上告趣意書(弁護人作成)
平成17年(あ)第1946号
平成17年10月×日
最高裁判所第二小法廷御中
弁護人 立田廣成
被告人 ■■■■
事件名 大麻取締法違反・麻薬及び向精神薬取締法違反
上告趣意書
本件について、上告趣意は下記の通りである。
記
原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがあり、また、原判決は、被告人を懲役2年に処した一審判決の量刑を相当としたが、この量刑は被告人のために酌むべき下記事情を十分に考慮しておらず、著しく不当に重く、これを破棄しなければ著しく正義に反するものである。
第1 法令適用の誤り
大麻の所持を懲役刑のみをもって処罰する大麻取締法24条の2第1項、3条第1項は、憲法13条、14条、31条に違反するから、大麻取締法24条の2第1項、3条1項を適用して被告人に有罪を言い渡した一審判決には法令適用の誤りがあるのに、同判決には法令適用の誤りはないと断定する原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある。
原判決は、大麻の有害性の程度は、たばこ、アルコールと同程度かそれより低い程度の、極めて低いものとはいえないから(最高裁第1小法廷昭和60年9月10日決定.裁判集刑事240号275頁参照)、一審判決には法令適用の誤りはないと説示する。
しかしながら、大麻には依存性・毒性はなく、大麻を使用したことによる第三者に対する暴力的・攻撃的行為の可能性もないから、大麻の有害性の程度は、たばこ・アルコールと同程度かそれより低い程度の、極めて低いものであるが、仮に、有害性の程度が極めて低いものとはいえないとしても、基本的人権は「公共の福祉に反しない限り」最大限に尊重されなければならないから、人の身体・行動の自由に対する重大な制約を加える刑罰、特に懲役刑による規制は、人権保障の観点から必要最小限のものでなければならない。
ところで、大麻取締法の保護法益は毒物及び劇物取締法1条のような目的規定がないため、法文上具体的でなく、不明確であるから、上記罰則規定が必要最小限のものとは考えられない。
したがって、大麻取締法の上記罰則規定は、法の下の平等原則を定める憲法14条、適正手続を保障する憲法31条に違反するものである。
以上の通り、大麻取締法の上記罰則規定は、憲法13条、14条、31条に違反するから、同罰則規定を適用して被告人に有罪を言い渡した一審判決には法令適用の誤りがある。
第2 量刑不当
本件は大麻及び麻薬所持の事案である。
大麻の所持は、自己使用目的で営利目的ではなく、その量も拡散のおそれを生じさせるような大量のものではない。麻薬の所持量も少量であり、犯行の態様は悪質ではない。
被告人は、深く反省し、更正を誓っている。
被告人は、本件犯行を後悔し、捜査段階において大麻吸引などにつき具体的・詳細に供述し、麻薬が染み付いた紙片の入手についても、日時、場所、状況など具体的に供述し、事案の解明に協力しており、その反省は真摯である。
被告人は、両親に迷惑をかけたことを痛感し、早く両親のもとに帰り、二度と大麻等に手を出さない旨を誓っている。
被告人は、本件により平成17年2月4日に逮捕され、以降8ヶ月余身柄を拘束されている。また、前刑(平成15年6月3日 本件と同様の罪により懲役2年6月、3年間執行猶予・付保護観察)の執行猶予が取り消され、相当長期間刑に服することになる。
被告人は、24歳の若年で、更生の見込みは十分であり、両親や知人も被告人の早期社会復帰を望んでいる。
上記事情を考慮すると、被告人を懲役2年に処した一審判決の量刑は、著しく不当に重い。
以上
|