ハームリダクションの国家レベルでの実践 ─オランダモデル

投稿日時 2006-11-29 | カテゴリ: オランダの薬物政策

ハームリダクション政策(有害性縮減政策)とは、ヨーロッパやアメリカでソフトドラック(主にカナビス)の個人使用を非犯罪化することで、それを犯罪として厳罰化することにより生じる他の社会的有害性を実質的に縮減させることを目的とした政策です。

このハームリダクションの考え方は、薬物問題以外でも多くのコントラバーシャルな社会問題の対策の中に幅広く認められます。

例えばメキシコとアメリカの国境付近で違法入国者が密入国の最中に死亡する事件を回避するため、メキシコ政府がサバイバルマニュアルのパンフレットを配布した事例があります。
法的には不法入国は違法ではあるが、実際に実行するものが後を絶たない以上、彼らの生命を保護する為にはこうしたパンフレットの存在はその目的にとって有効な政策です。

また中学・高校で生徒にコンドームを配布し、彼らの性病感染や妊娠を防ごうとする社会運動の事例も同じ考え方です。つまり、理念的には彼らの性行為は望ましくないが、実際に彼らの多くが性行為を行っている以上、彼らが安全に性行為を行えるようにしようという考え方です。

このように、ハームリダクションの考え方では、硬直化する危険性が常にある道徳的・法的要請を反省的に捉え、ある社会状況が生み出す人間の生命・身体の危険性を極力回避させるために有効な手段を優先させます。

以下に紹介する論文の目的のひとつは、このようなハームリダクションが、オランダのカナビスの非犯罪化政策の中でどのように実践されているのかを明らかにすることです。

これをまずご一読いただき、皆様とともに日本の政策に今後どのような示唆が可能なのかを一緒に考えて行くことができればと思います。






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