薬物犯罪撲滅に苦労する中国

投稿日時 2012-02-25 | カテゴリ: 海外情報

1840-1842年のアヘン戦争の一方の主役、中国(当時は清)では、いまだに薬物犯罪が大きな社会問題になっている。

 1949年の中華人民共和国成立時に、中国ではアヘンの原材料であるケシの栽培面積は133万ヘクタール、ケシ栽培を行う農民は1000万人、麻薬の製造・販売などに関わる人口は60万人、麻薬使用者は当時の人口の4.4%にあたる2000万人いたとされる。

 中国政府は1950年から徹底した麻薬取り締まり運動を実施、1952年には国内でのアヘンの流通、犯罪は撲滅された。その後も30年近く、薬物犯罪は防止されてきた。

 しかし、1970年代末の改革開放が再び中国に薬物犯罪をもたらすことになった。特に、タイ、ラオス、ミャンマーの国境地帯(いわゆる黄金の三角地帯)に近い雲南省など西南部では薬物の密輸、販売などの犯罪件数が増加、薬物使用者も急増し、社会問題となった。

 そこで、中国政府は08年6月、初めての薬物規制に関する専門的な法律である「薬物禁止法」を施行、さらに11年6月26日の「国際麻薬乱用撲滅デー」には「薬物依存治療条例」を施行し、薬物犯罪の防止と薬物依存者の回復に取り組んでいる。

 中国公安部禁毒局の「2011中国禁毒報告」によると、10年に検挙した薬物犯罪は8万9000件、1991年の8395件と比べ、この20年間で10倍以上になっている。没収された薬物は、ヘロイン5.3トン、アヘン1トン、メタンフェタミン9.9トン、ケタミン4.9トン、大麻3.2トンにのぼる。

 国外からの流入は、依然として黄金の三角地帯から密輸されるものが多く、以前はヘロインが中心であったが、最近では合成薬物が増加している。さらに、インターネットによる薬物製造法の伝達、薬物原料の販売、郵便小包や航空宅配による犯罪も増加している。

 10年末に公安部に登録されている薬物乱用者数は154万5000人で、10年には新たに登録されたのは21万4000人超と、その数は年々増加。登録者のうち69%にあたる106万5000人はヘロインを乱用する依存者となっている。

 中国には、薬物依存者に対する2種類の強制的な治療が定められている。1つは公安機関による強制治療で、もう1つは司法行政部門による労働矯正治療だ。強制治療所は1987年に最初の強制治療所が設立されて以来、03年までに全国に583(病床数11万6054)が設置。労働矯正治療を行う施設は03年までに全国に165(病床数14万3000)が設置された。さらに、1989年には雲南省精神病院に中国で初めての自発的な治療を行う機関が設立され、03年までに全国に247機関(病床数8000)が設立されている。

 「薬物禁止法」が施行されてから3年。全国の強制隔離施設では21万6000人が治療を受けている。中国の薬物犯罪、薬物依存者の回復の道程はまだまだ険しい。

提供:モーニングスター社

詳しい所は:http://www.morningstar.co.jp/portal/RncNewsDetailAction.do?rncNo=631688

薬物依存者を刑務所に送る代わりに治療するのは良いことだが、労働矯正施設だの強制隔離施設だの、精神病院だの、中国の強制治療はちと恐ろしいものがある。日本では欧米式にドラッグ・コートを導入すべきであり、依存者、中毒者は病人として正しい知識に基づく治療を専門病院で受けられる、という選択肢を刑務所の代わりに設けるべきである。とりわけ、増加傾向にある末期の覚せい剤事犯は病院に収容されるべきである。そこから、第二の人生がはじまることも多々ある。

アジア全体の麻薬政策の道のりは未だ遠い。




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