今はバリ島の刑務所に収監されているマナリ亭茶楽助さん。その前にインドで捕まったときの刑務所体験記第2弾です。刑務官の目の前でジョイントが回り、針と木の枝とボールペンのインクで囚人仲間に刺青を・・・。刑務所もいろいろですね。
初めてインドでもって逮捕された時の事 その2
オールドマナリの茶楽助の家の部屋の中
ードクターチェックー
「スリーピングピルをくれ」
やっと順番が回ってきたので週三回のドクターチェックでいつもの様にスリーピングピルを乞う。
「アイ キャント スリープ」
するとドクターは
「何故バング(チャラス)を吸わない?誰それが持っているだろうが!眠れないならバングを吸えや!ドクターはジェイルの中の事は何でも知っているんだ!」
しかしココで負ける訳にもいかず
「でもジェイルの中は何かとストレスだらけでして、俺は外国人であるし特に酷い、精神安定剤を下さい、ドクター、プリーズ!!」
必死に懇願する。うまくするとかなり強力な睡眠薬をくれる場合もある。それを飲んだり時には粉にして鼻から吸ったりして長い時間が過ぎるのを待つ。
サブジェイルマンディの見取り図
ーチャラスを吸うー
(写真はマナリ)
マンディのローカルチャラスを1トラ120ルピー(当時,約360円)で買った。クオリティーはマナリやパールバティの物より落ちるがココはジェイル、贅沢は言えぬ。
前回の裁判所に出廷の時に国際電話をかけて金をたくさん使ったフリをしてコッソリと中に持ち込んだのだ。再入所の際の身体検査の度合いは担当のお巡りの裁量によるが俺は気に入られていたのかノーチェックだった。
久し振りの事であるしとにかくジョイントをたくさん作って吸う。ローリングペーパーは無いので煙草の葉を抜いてチャラスを混ぜ入れ直して吸う。
娑婆ではラスタカフェなどで仲間達と1日に数十回でもチロムをパカパカと吸う日々であったのにココではチビチビと吸う日々だ。しかし特別な環境下も手伝ってか、良くキマる。
房が開く朝の6時から房が閉じられる18時までの間は刑務官が一人、全ての房内の見張りをするが刑務官と囚人は殆ど友達の様な接し方だ。
ある刑務官が受刑者数人とカードゲームを始めた。そのすぐ側で俺と他3人が今まさにジョイントを作り終え吸おうとしているところだったのだが、刑務官はその場から暫くは動きそうにない。カードゲームに夢中の様だ。せっかくジョイントを作ったのにこんな近くに刑務官がいたんじゃ吸えねーなーと思っていると一緒にジョイントを吸おうと座っていた2号室のボス格が「構わねーから火をつけろ」と目で合図を送ってくる。
俺はジョイントに火をつけ何事も無い様な素振りで吸い始める。ビリージョイントは中のタバコの臭いが強くチャラスを混ぜても臭いでバレる事は無い。
しかしまだ何も知らぬ俺はエラくビビる。何せ刑務官は2メートルと離れていない。他の皆も素知らぬ顔でジョイントを回し続けるが俺は緊張する、だから余計にキマる。
この時でマリファナを吸い続けて10年位になるが、こんなにキマったのは初めてかも知れぬ。トビの強さは量では無いんだな、なんて思う。
ーイレズミー
(写真はマナリ ドゥングリのハディンバテンプル)
「お前の身体のイレズミは何処で彫った?いくらかかる?何時やった?痛くはないのか?お前もできるか?」
ひょんな事から他の囚人にイレズミを彫ってやる事になった。
針と木の枝とボールペンのインクを用意して手彫りで彫ってやる事になった。清潔とはとても言えぬ環境下での事だ。他の囚人や刑務官も珍しい物見たさで見物している。皆、尋ねる事は一緒「痛くはないのか?」だ。針を刺してるんだから痛いに決まっている。
どんなに彫ってやったところで彼らは貧しく金など払える訳もない。手彫りだし時間もかかる上とても疲れる。
「もうやり方は解ったろう?」
と言って俺は投げ出してしまったがこのジェイルに俄かイレズミブームが到来した。
ー文字ー
(写真はオールドマナリ)
刑務所の中では懲役が無ければ、かなりの時間があり何かを作ったり覚えたりするには良い環境かも知れぬ。娑婆で同じ事をしようとしても、そうそうやる気が出る訳でもない。
暇にまかせて誰かにヒンディー語を教わっていると、そこにある真面目なオトコがやって来て紙にズラリとヒンディー語のABCを書き出し、俺にも書いてみろと促す。一つずつ発音までも教えてくれる。頼んでもいないのに、だ。
断りづらく、仕方無しに有難く教えを受けるが、机がある訳でも無く床に紙を置いて長時間芋虫の様な格好で慣れぬヒンディー語に取り組んでいると腰が痛くなってくる。まるで懲罰だ。
しかしこの時の苦労の甲斐(?)あってか今ではいくらかはヒンディー語を読み書きできるようになった。
(3)に続きます
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