検証「大麻の身体的影響(詳細)」[脳](2)

投稿日時 2006-12-22 | カテゴリ: フロッガー医師の検証「ダメゼッタイ」

「ダメ。ゼッタイ。」ホームページの「大麻の身体的影響(詳細)」というページに記載されている、大麻の脳に対する影響について、医師のフロッガーさんに検証して頂きました。
この文章は、(財)麻薬・覚せい剤乱用防止センターに、「ダメ。ゼッタイ。」ホームページの大麻に関する記述を改めるよう申し入れるため素案です。ぜひご意見などTHC談話室にお寄せ下さい。メールでのご連絡も歓迎です。

乱用防止センターの糸井専務理事は、来年度、ホームページの内容を、予算を付けて全面的に見直し、10月にはリニューアルの予定だと明言しましたが、来年の10月まで現状の誤った情報を放置して良いことにはなりません。そこで、THCは、フロッガーさんのご協力を得ながら、また、貴重な情報を提供して下さっている関係サイトの力なども借りながら、具体的な内容についての要望を、暫時、厚労省とダメセンターに提出し、回答を求める予定です。

下記はその第1弾です。

* * *

■大麻の身体的影響(詳細)

脳に対して;心拍数が50%も増加し、これが原因となって脳細胞の細胞膜を傷つけるため、さまざまな脳障害、意識障害、幻覚・妄想、記憶力の低下などを引き起こします。また、顕著な知的障害がみられます。

(1)大麻で心拍数が50%増加するかについて。
大麻を使用することで、心拍数は20-100%増加すると報告されている(参考文献1-5)。
これは、吸引後急性の反応として起こってくるもので2-3時間持続する。
この文章は正しいが、「心血管系について」の項目と重複する為削除を要求する。

(2)心拍数の増加が脳神経の細胞膜を傷つけるかについて。
大麻使用時の心拍数の増加が原因となって脳細胞の障害が起こったとする論文は見つけることが出来なかった。
これについては、根拠となる論文の提示、もしくはこの文章の削除を要求する。
(そもそも大麻以外であっても、心拍数の増加が原因となって脳細胞の障害が起こるということは、医学的に一般的では無い。もしそのような報告があるのなら提示して欲しい。)

(3)脳神経の細胞膜を傷つけるかについて。
1980年代の研究で、2匹のリス猿にTHCを投与した後に解剖し、脳皮層の海馬部位に傷害が見られた、というものがありこのようなことが主張され始めた(6)。
ただ同じ結果を得るためには人間の精神作用必要量の200倍以上もの多量なTHCの投与が必要だった。実際、100倍ではいかなる損傷も見つかっていない(7)。
また、CTスキャンを用いた研究でも、器質的な変化は立証されていない(8,9)。
これらの結果からは、大麻が脳の器質的損傷を起こすことは結論付けることは出来ない。
以上より、この文章の削除を要求する。

(4)さまざまな脳障害、意識障害、幻覚・妄想、記憶力の低下などを引き起こします、について。
「脳障害」というのが、次に続く「意識障害、幻覚・妄想、記憶力の低下など」と意味が重複しているので訂正、削除を要求する。
また、幻覚・妄想というのは大麻の精神的影響の項目と重複する為削除を要求する。

(5)意識障害・記憶力低下・顕著な知的障害を起こすかについて。
急性の影響(すなわち大麻の効果が出現している間)においては、認知障害・記憶障害があることは知られている。(これについては根拠となる論文の記載が必要である。センターの方が自分で探してください。)
しかし、それが後遺症として長期間残ってしまうことに関しては、コンセンサスが得られていない。
連邦政府が資金を拠出して行ったジャマイカ、ギリシャ、コスタリカの人口調査では、長期喫煙者と非喫煙者の認知機能に目立った違いは見られなかった(10)。
しかし、厳密な検査方法と電気生理学的な方法を用いて微妙で選択的な認知障害を認めたとする報告もある(11)。
1999年に全米疫学学会誌に掲載された1300人を対象とした研究では「15年以上にわたってカナビスをヘビーに使った人とライトに使った人、全く使わなかった人の間で有意な認知機能の低下はなかった」と報告されている(12)。
以上から、大麻による知能低下は概ね一過性のものであり、もし残存したとしても顕著なものではないと考えられる。
顕著な知的障害については、削除を要求する。意識障害・記憶障害については主に急性の影響であることを追記することを推奨する。

1. Hollister LE: Health aspects of cannabis. Pharmacol Rev 1986;38:1-20.
2. Hollister LE: Cannabis―1988. Acta Psychiatr Scand Suppl 1988;345:108-118.
3. Beaconsfield P: Some cardiovascular effects of cannabis.AmHeart J 1974;87:143-146.
4. Beaconsfield P, Ginsburg J, Rainsbury R: Marihuana smoking: cardiovascular
effects in man and possible mechanisms. N Engl J Med 1972;287:209-212.
5. Reese T. Jones: Cardiovascular System Effects of Marijuana. J Clin Pharmacol, 2002;42:58S-63S
6. Heath, B.C. et al; Cannabis Sativa: Effects on Brain Function and Ultrastructure in Rhesus Monkeys. Biological Psychiatry 15:657 (1980).
7. Scallet, A.C; Neurotoxicology of Cannabis and THC: A Review of Chronic Exposure Studies in Animals. Pharmacology Biochemistry and Behavior 40:671-82 (1991).
8. Rimbaugh CL et al: Cerabral CT findings in drug abuse: Clinical and experimental observations. Journal Computer Assisted Tomography, 4:330-34 (1980).
9. Hannerz J., Hindmarsh T.: Neurological and neuroradiological examination of chronic cannabis smokers Annals of Neurology, 13: 207-210 (1983).
10. E. Russo et al. 2002. Chronic cannabis use in the Compassionate Investigational New Drug Program: an examination of benefits and adverse effects of legal clinical cannabis. Journal of Cannabis Therapeutics 2: 3-57. See Specifically: Previous Chronic Cannabis Use Studies.
11. Fletcher JM, Page BJ, Francis DJ.Cognitive correlates of long-term cannabis use in Costa Rican men. Archives of General Psychiatry, 1996, 53: 1051-1057.
12. C. Lyketsos et al. 1999. Cannabis use and cognitive decline in persons under 65 years of age. American Journal of Epidemiology 149: 794-800.






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