検証「大麻の身体的影響(詳細)」[生殖器官](5)

投稿日時 2007-02-18 | カテゴリ: フロッガー医師の検証「ダメゼッタイ」

某有名医大フロッガー医師による「ダメ。ゼッタイ。」検証です。一方的な大麻擁護ではなく、医師として公平で科学的な視点から注意が喚起されてもいます。それは大麻を擁護する者にとっても留意すべき大切な姿勢ではないでしょうか。

大麻

引用元:http://www.dapc.or.jp/data/taima/3-3.htm

生殖器官に対して;
生殖能力に障害が生じ、遺伝子の異常や突然変異をもたらします。男性ではテストステロン(性ホルモン)を44%も低下させます。また、女性では生殖細胞に異常を生じます。大麻の有害成分は胎盤関門(母胎血液と胎児血液の間に胎盤膜によって形成されている半透過関門)をも通過して胎児にも影響を及ぼしますので胎児の大麻中毒や流産、死産の原因にもなります。

1.生殖能力に障害を生じるか。男性でテストステロンを低下させるか。
生殖機能というと、広い範囲の言葉となるため、男性ホルモン、女性ホルモン、精巣、卵巣と言い換えたい。男性ホルモンを減少させるかについてもここで検証を行う。

男性ホルモンについて。
動物実験においては大麻、THCが男性ホルモンを減少させるとする報告がある(1)(2)。しかしヒトにおいては、初期の研究で大麻の曝露はヒトの男性の血漿中LH、テストステロン濃度の一時的な減少を生じるとする報告があるものの(3)、その後の研究で経口のTHCあるいは大麻喫煙のどちらもLHとテストステロンの血漿中濃度への影響はないとする報告が続き(4)(5)(6)、ヒトにおいては大麻の男性ホルモンへの影響は不明瞭である。
もしあったとしても、生殖機能に影響を出すレベルではない。
以上より男性ホルモンを低下させるという文章の削除を要求する。

女性ホルモンについて。
動物実験において、LH、FSHとプロラクチンの下垂体分泌を変えるとする報告がある(7)(8)。ヒトにおいては、月経周期の黄体期の間にLHとプロラクチンが抑制され、それによって性周期が短くなるという報告がある(9)(10)。しかし、慢性的な大麻使用者でLH、FSHとプロラクチンの変化が無かったとする報告もある(6)。

精巣卵巣機能について。
動物実験においては、精巣や卵巣の重量が減少したとする報告がある。しかし、ヒトにおいてそのような報告は無い。
総合して、大麻が生殖能力を障害するという疫学的研究報告は見つけることが出来なかった。
もしそのような報告があるのなら提示を要求する。
もし無いのであれば、生殖能力に障害が生じるという文章の削除を要求する。

2.遺伝子の異常や突然変異をもたらすか。
大麻が遺伝子への変異原性を持つかについては、今まで幾つかの実験室レベルでの報告があり、大麻の煙成分を濃縮したものを細胞に加え(エイムス試験法)変異原性を認めたとするものがある(11)(12)。
しかし純粋なTHCには変異原性が無いという報告がある(13)(14)。
このことは大麻の煙による発癌の危険性を示唆するが、前項「気管支・肺に対して」で検証したとおり、大麻による発癌は確認されておらず、実際のリスクとはなっていない。
以上から煙成分を濃縮したものでエイムス試験法を行ったときに変異原性が確認されている、という記載に変更する事を推奨する。

3.女性で生殖細胞に異常を生じるか。
WHOレポートでは大麻使用で親が子供に伝えるような染色体や遺伝子の異常をもたらすという証拠ほとんどないとしている(15)。この項目の削除を要求する。

4.胎児の大麻中毒、流産、死産の原因となるか。
WHOレポートでは、妊婦の薬物使用の疫学的研究はサンプリングが不確実なため評価するのが難しいとしている。
その中で出生時体重の減少は関連がありそうである(16)。
これは、煙草と同じメカニズム、低酸素血症によるものではないかと考察されている。流産・死産についてはエビデンスのある報告を見つけることが出来なかった。論文の提示、もしくはこの項目の削除を要求する。

追記:医師としての意見。
ただし、妊娠中の大麻使用が問題ないとは言えない。これについては不明な点が多く、妊娠中の大麻使用は控えるべきである。医師として、そして子供を持つ親として、この点は強調しておきたい。

(1) Symons AM, Teale JD, Marks V. Effects of Δ-9-tetrahydrocannabinol on the hypothalamic-pituitary-gonadal system in the maturing male rat. Journal of Endocrinology, 1976, 68: 43.
(2) Puder M et al. The effect of Δ-9-tetrahydrocannabinol on luteinizing hormone release in castrated and hypothalamic differentiated male rats. Experimental Brain Research, 1985, 59: 213-216.
(3) Schaefer DF, Gunn CG, Dubowski KM. Normal plasma testosterone concentrations after marihuana smoking. New England Journal of Medicine, 1975, 292: 867-868.
(4) Markianos M, Stefanis C. Effects of acute cannabis use and short-term deprivation on plasma prolactin and dopamine-B-hydroxylase in long-term users. Drug & Alcohol Dependence, 1982, 9:251-255.
(5) Dax EM et al. The effects of Δ-9-tetrahydrocannabinol on hormone release and immune function. Journal of Steroid Biochemistry, 1989, 34: 263-270.
(6) Block RI, Farinpour R & Schlechte JA. Effects of chronic marijuana use on testosterone, luteinizing hormone, follicle stimulating hormone, prolactin and cortisol in men and women. Drug and Alcohol Dependence, 1991, 28: 121-128.
(7) Steger RW et al. The effect of Δ-9-tetrahydrocannabinol on the positive and negative feedback control of luteinizing hormone release. Life Sciences, 1980, 27: 1911-1916.
(8) Steger RW et al. Interactions of cocaine and -9-tetra cannabinol with the hypothalamo-hypophyseal axis of the female rat. Fertility & Sterility, 1981, 35: 567-572.
(9) Mendelson JH, Mello NK, Ellingboe J. Acute effects of marihuana smoking on prolactin levels in human females. Journal of Pharmacology & Experimental Therapeutics, 1985, 232: 220-222.
(10) Mendelson JH et al. Marihuana smoking suppresses luteinizing hormone in women. Journal of Pharmacology & Experimental Therapeutics, 1986, 237: 862-866.
(11) Busch FW, Seid DA, Wei ET. Mutagenic effects of marihuana smoke condensates. Cancer Letters, 1979, 6: 319-324.
(12) Sparacino CM, Hyldburg PA, Hughes TJ. Chemical and biological analysis of marijuana smoke condensate. NIDAResearch Monographs, 1990, 9, 121-140.
(13) Zimmerman AM, Stich H, San R. Nonmutagenic action of cannabinoids in vitro. Pharmacology, 1978, . 16: 333-343.
(14) Berryman SH et al. Evaluation of the co-mutagenicity of ethanol and Δ-9-tetrahydrocannabinol with Trenimon. Mutation Research, 1992, 278: 47-60.
(15) Division of Mental Health and Prevention of Substance Abuse, World Health Organization: Programme on substance abuse Cannabis: a health perspective and research agenda. 1997.
(16) Day NL, Cottreau CM, Richardson GA. The epidemiology of alcohol, marijuana, and cocaine use among women of childbearing age and pregnant women. Clinical Obstetrics and Gynaecology, 1992, 36(2): 232-245-






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