マナリ バシシュトの寺院内にある温泉
ー保釈ー
オールドマナリに住むローカルのラジューー俺は後にオールドマナリに家を建てる事になるのだが彼の土地に家を建てさせてもらい、それ以外にも多岐に渡り協力してもらう事になるーー彼に俺が保釈できる様にお願いした。
チャラス1kg未満のケースで外国人が保釈を得る為には裁判所に1ラークルピー(当時、約30万円)の現金か相応の価値の土地、それとHP州に住むローカルの保証人の提示が必要になる。ラジュはその両方を用意してくれた。
ある日突然に
「マナリ亭茶楽助~、保釈だ!ジャルディ(急げ)!」
と呼び出された。
丁度ジョイントを吸おうとしていたところだった。刑務官が急げ急げと急かすのを「1分待ってくれ!」と言い無理やりにジェイル最後のジョイントを吸い荷物を持って外に出ようとすると、メンタルプロブレムのサドゥーが
「飯はいらないのか?」
と呼び止める。丁度夕飯の配給の時間だった。
「外で食うからいらない、じゃーまた。ハリオーム!」
鉄扉を潜るとそこにはラジュと(後に解った事だが悪徳の)弁護士グプタが待っていた。
3週間だけだが強烈な印象を残す初めてのジェイルライフは終わった。
「エンジョイ!ジェイルライフ!」
俺はどうだったか?
初体験や新発見や瞬間的なエンジョイはあったろう。そして、過去を悔やむ事なく将来に不安を抱かず、この瞬間をエンジョイして宇宙との一体感に陶酔・・・・・そんな涅槃の境地にまで達するまでには当然及ばず。
オールドマナリ
オールドマナリ
ーその後の判決と出国ー
保釈で娑婆に出てから判決が出るまでなんと4年もかかってしまった。
最初に選んだグプタと言う弁護士は外国人の逮捕者ばかりを狙い、高額な請求をしてその上ロクな仕事をしない悪徳弁護士であったのでラジュの知り合いの他の弁護士に替えた。
新しい弁護士への報酬は裁判所出廷の都度に500ルピーとか1000ルピー払い最後にはデジタルカメラを一台あげた。
判決は無罪。判決の後3ヶ月待ちその後パスポートを返してもらった。ビザは切れているし出国の為の書類を揃える為にマナリから50キロ程離れたクルの警察署に友人の弁護士と共に向かった。
少し手違いがあり書類を貰えたらその足でバスに乗りデリーへ向かい、デリーに到着したその日にインドを出国しなければならぬ。クルからデリーまでダイレクトのツーリストバスで16時間かかる。
警察署で書類を揃えた後、知人の(吸い友達でもある)弁護士が
「バスの出発まではまだ時間があるんだろ?一服していかないか?」
クルの警察署、裁判所、刑務所が隣接する裏側に景色の良いカフェテラスが一軒ある。場所柄、近くで働く人達(!)がよく利用する。
俺は弁護士と景色を眺めながらジョイントを吸う。そこへ見た事のある男が入って来て俺達のテーブルへと座る。
(…………さっき警察署で俺に書類を渡したお巡りだった)
奴はニヤニヤしつつ
「俺の顔を覚えているだろう?お前が最後にHP州でジョイントを吸ったのは俺達だって事忘れるなよ、フレンド!」
…粋だが嫌なこと言ってきやがる。
終わり
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