欧州胃腸病学・肝臓学ジャーナル 2011年10月23日
炎症性腸疾患患者における医療大麻の使用について
IBDクリニック、マウント・サイナイ病院、トロント、オンタリオ、カナダ、simon.lal@srft.nhs.uk
概要
背景: 数々の実験結果が証明し、又示唆するところによると、内因性カンナビノイドが結腸の炎症を抑制する効果があることが判明し、内因性カンナビノイドの活性化により、炎症性腸疾患(IBD)に対して医療大麻が有効であることが伺われます。大麻の医療利用は、慢性的な痛みの緩和や他の症状に効能があるとの報告もあります。本研究は、炎症性腸疾患(IBD)患者における大麻の医療利用を検討し、精査することが目的です。
方法: 外来患者のうち、第3期の潰瘍性大腸炎(UC)の患者100名とクローン氏病(CD)の患者191名にアンケートを取りました。内容は、過去や現在の大麻使用経験や社会経済的な条件、病歴や医薬品の処方歴(代替治療も含む)というものです。患者の生活の質は、IBDに関する短い質問状にて判断、評価されました(得点の高い方が生活の質が低い)。
結果: UCとCD患者においては、生涯の大麻使用者が次の結果を出しました:[48/95(51%) UC vs. 91/189(48%) CD]。現在は使用していると答えた患者は次の通り:[11/95(12%) UC vs. 30/189(16%) CD]。生涯を通じて大麻を使用してきたと答えた患者[14/43(33%) UC、40/80(50%) CD]等は、IBDに伴う腹痛や下痢、食欲不全の解消のために大麻を使用していました。又、腹部の手術を施している患者には、症状緩和のための大麻使用に増加傾向が見られました[29/48(60%) vs. 24/74(32%);P=0.002]。慢性的にIBDを患い、鎮痛剤として大麻を使用するものは[29/41(71%) vs. 25/81(31%);P<0.001]、そして代替療法として大麻を使用するものは、[36/66(55%) vs. 18/56(32%);P=0.01]で、同患者等の間ではIBD質問状に関する得点の減少が見られました(45±2.1 vs. 50,3±1.5;P=0.03)。大麻使用経験者[60/139(43%)]の方が未経験者[13/133(10%);P<0.001 vs. 経験者]よりも大麻の使用による(仮想の)IBD治療に意欲を見せました。
結論: IBD患者の間では大麻使用は一般的で、症状の緩和に使用されます。これは腹部の手術をしたものにとりわけ顕著な傾向で、慢性的な腹痛が伴う症状を持つものや、生活の質の得点が高いものにも当てはまります。カンナビノイド抽出薬によるIBD治療は更に研究されなければならない課題です。
PMID:21795981 [PubMed - indexed for MEDLINE]
Source: NCBI PubMed(米国立医学図書館学術文献検索サービス)
Cannabis use amongst patients with inflammatory bowel disease.
2011 Oct;23
翻訳:麻生しげる
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