衆院厚生委員会質疑(昭和23年06月16日)

投稿日時 2006-06-14 | カテゴリ: 大麻取締法国会議事録

2-衆-厚生委員会-10号 昭和23年06月16日

昭和二十三年六月十六日(水曜日)
    午後一時五十八分開議
 出席委員
   委員長 山崎 岩男君
   理事 有田 二郎君 理事 中嶋 勝一君
   理事 田中 松月君 理事 武田 キヨ君
   理事 徳田 球一君
      井上 知治君    大石 武一君
      小笠原八十美君  近藤 鶴代君
      山口六郎次君    太田 典禮君
      福田 昌子君    荊木 一久君
      最上 英子君    野本 品吉君
      松本 眞一君    齋藤  晃君
      榊原  亨君
 出席國務大臣
        厚 生 大 臣 竹田 儀一君
 出席政府委員
        厚生事務官   木村忠二郎君
        厚生事務官   久下 勝次君
 委員外の出席者
        專門調査員   川井 章知君
    ―――――――――――――
六月十五日
 優生保護法案(太田典禮君外五名提出)(第七号)
 優生保護法案(参議院送付)(予参第七号)
の審査を本委員会に付託された。
六月十五日
 療術業存続の陳情書(療術者支持同盟会山口縣大津郡仙崎町長谷川正也外四十名)(第五七八号)
 復興住宅建設促進の陳情書(神奈川縣知事内山岩太郎外九名)(第五九三号)
 療術業存続の陳情書(山口縣大津郡深川町字河原山根ソノ外四十二名)(第六二四号)
 建築制限並びに無届建築取締の強化に関する陳情書(岩國市長津田彌吉)(第六三二号)
 恩給増額に関する陳情書(恩給増額期成全國大会)(第六四五号)
 計画住宅建設費全額國庫負担の陳情書(島根縣議会土木部委員長岡本善三郎外四名)(第六五四号)
 生活協同組合法制定促進に関する陳情書(長野縣購買利用生活協同組合連合会專務理事塩入胤
 雄外八十一名)(第六五八号)
 部落問題の解決に関する陳情書(近畿二府五縣同和事業協議会)(第六六二号)
 潟町村結核療養所施設の完成に関する陳情書(新潟縣中頚城郡潟町村長柳澤守之輔外七名)(第六七一号)
 癩患者の生活保護に関する陳情書(生活擁護患者大会代表者藤田武一外二十五名)(第六七四号)
 國民健康保險制度の強化に関する陳情書(北海道網走支廳管内國民健康保險組合連合会委員長千葉朝雄)(第六七六号)
 療術業存続の陳情書(山口縣大津郡深川町板持立野新一外四十名)(第六九〇号)
 藥事法改正に関する陳情書外一件(京都府医藥制度改善期成大会外一名)(第七〇八号)
 生活協同組合法の制定に関する陳情書(大津商工会議所会頭小幡文次郎)(第七一六号)
 療術業存続の陳情書(療術者支持同盟会代表山口縣阿武郡三見村駅通長島重成外三十三名)(第七三四号)
を本委員会に送付された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 藥事法案(内閣提出)(第八八号)
 麻藥取締法案(内閣提出)(第九一号)
 民生委員法案(内閣提出)(第一〇〇号)
 大麻取締法案(内閣提出)(第一一四号)
 厚生年金保險法等の一部を改正する法律案(内
 閣提出)(第一三一号)
 國民健康保險法の一部を改正する法律案(内閣
 提出)(予閣第一〇号)
    ―――――――――――――
(中略)

○山崎委員長 懇談に入りました以前に引続き会議を開きます。麻藥取締法案及び大麻取締法案を議題といたしまして審査に入ります。

○榊原(亨)委員 大麻取締法案第五章第五十二條に「大麻草の栽培区域及び栽培面積は厚生大臣及び農林大臣がこれを定める」とありますが、これと食糧確保臨時措置法案との関係はどうなつておりますか。

○久下政府委員 大麻草の栽培区域及び栽培面積については、農林大臣がその大綱を定め、これに基いて厚生大臣がその細部を定めることになつておりますので、農業大臣が大綱を定めるとき、食糧確保臨時措置法との関係を調整するものと考えられますとともに、大麻草の栽培地は主要食糧の栽培地と重複する場合が少いので、問題はないものと考えております。

○榊原(亨)委員 ただいまの政府委員の答弁は了承いたしかねます。主要食糧の栽培地が大麻草の栽培地と重複しないという点も事実と違うので、両法の運用上多大の問題を起すと思うが、政府はいかに考えますか。

○久下政府委員 大麻草の栽培地と主要食糧の栽培地とが全然重複しないと申したのではないのでありまして、さような場合にも、大麻草の栽培地に関して大綱を決定する農林大臣が食糧確保臨時措置法との関係を調整することと考えるのであります。

○榊原(亨)委員 麻藥取締法第二條第十二項に家庭麻藥の定義があるが、この規定によつて、実際上支障を來すおそれはありませんか。

○久下政府委員 支障ないものと考えて居ります。

○榊原(亨)委員 麻藥取締法第十四條第一項但書に、病院、診療所の麻藥管理者が記録をつくらなければならない規定がありますが、これは各医師が診療録に麻藥の使用に関して記載する以外に、別に管理者が帳簿に記入しなければならないという意味ですか。

○久下政府委員 さようであります。

○榊原(亨)委員 第三十九條の規定によると、麻藥中毒患者で、麻藥を絶対に用いないことにすると生命の危險があるというよう者に対しても、麻藥を使用することができないことになり、適当でないと考えるが政府はどう考えますか。

○久下政府委員 麻藥中毒患者に禁断療法を施す場合、麻藥を與えないからといつて、そのために生命の危險を生ずるということはないと承知しております。

○榊原(亨)委員 もし生命の危險を生ずることがあつたらどうしますか。

○久下政府委員 さようなことはないと考えますが、もしあつたら適当に考慮します。
 なお食糧確保臨時措置法案と大麻草の栽培面積との関連につきまして申し上げます。主要食糧の生産数量及び供出数量は食糧確保臨時措置法案第三條の規定によりまして、農林大臣が都道府縣別に定めることになつております。從いましてその栽培面積もおのずから定まるものであります。從來の実作反別を見まするに、主要食糧の栽培面積のほか工藝農産物の側培面積が約十三万町歩ございます。この中に大麻栽培面積である五千町歩が含まれております。從いまして主要食糧の栽培面積には何ら関係がございません。大麻草の從來の実作反別は許可面積である五千町歩以内でありますので、大体において栽培者の希望通り栽培を許可することができるものであります。
    〔以下速記〕

○山崎委員長 ではこれから速記を始めてください。

○榊原(亨)委員 その点に関してはまだ了解に苦しむのでございまして、これは一應当局におかれて農林当局とよく御相談の上、食糧確保臨時措置法案とのつながりをはつきりさしていただきたいと存じます。

○久下政府委員 ただいまの榊原委員の御発言につきましては十分農林当局とも話合いをいたしまして、調整をはかるようにいたしたいと思います。

○山崎委員長 大麻取締法案に関する質疑はございませんか。
    〔「なしと」呼ぶ者あり〕

○山崎委員長 大麻取締法案に関する質疑を打来つて差支えありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○山崎委員長 それでは大麻取締法案に関する質疑を打切ります。
    ―――――――――――――

○山崎委員長 次に麻藥取締法案及び民生委員法案の審議にはいります。質疑を許します。

○榊原(亨)委員 麻藥取締法案第二條十二項で、これらの麻藥の含有量が示されておりまするが、これを大量に集めまして、これから麻藥を抽出するようなおそれはないのでございますか。

○久下政府委員 事実的にそういうふうな心配はないものと考えます。

○榊原(亨)委員 第十四條の二項の「麻藥管理者のある病院又は診療所の麻藥施用者が当該病院又は診療所において」云々ということがありますうちに、「当該麻藥管理者がその麻藥の品名数量及び施用又は交付の年月日を記入し」ということがあるのであります。在來の実例から申しますと、これらの病院、診療所におきましては、その交付の日にちを便宜診療のカルテ記載の日をもつて代用されておるのでありますが、このたびの法案によりますと、これらの病院における診療当事者は責任をもたず、ただ管理者のみが責任をもつてこれらの記帳をはつきりしなければならぬということになりますと、非常に煩雜なることが起つてくるのでありますが、この場合にカルテその他の記載をもつて便宜これにかえるというお考えはございませんかどうか、承りたいと思います。

○久下政府委員 この場合に麻藥管理者に特別な措置をお願いたしておりまするのは、ただいまお話のございましたカルてとは別のものを考えておりまして、カルテにこうした記載をすることはもちろんでありまするが、それ以外に麻藥管理者が毎日麻藥を交付しました量、何時にどれだけのものを出したというような品名、数量と、その年月日を毎日集計をして記載をしていただきたいという意味でございます。

○榊原(亨)委員 それではその一日の集計でよろしゆうございますか。

○久下政府委員 それで結構でございます。

○榊原(亨)委員 第三十九條の中毒を治療するために麻藥を施用することができないということでありますが、現今の麻藥の禁断療法によりまして、強力な麻藥中毒患者を、初めから麻藥を使わないで禁断療法をするという実際的療法があるのでありますか、承りたいと存じます。

○久下政府委員 麻藥中毒者の治療のためには、麻藥を使わないということが最も理想的な療法であり、それ以外に療治の方法がないように考えておりますので、さような特殊な麻藥中毒患者でありましても、これを治療いたしますためには、麻藥を使わないでやるという建前でまいりたいと思います。

○榊原(亨)委員 実際上強力なる中毒患者の場合には、急激に禁断療法をすることによつて、脈搏その他が惡くなつて、生命の危險をも來す場合があるのでありますが、それでもなお中毒患者には麻藥を施用することを禁止しようというお考えでございますか。

○久下政府委員 私どもとしては、麻藥中毒患者に麻藥の施用を禁止いたしますために、生命の危險に瀕するというような実例を聞いておらないのでございます。

○榊原(亨)委員 それでは生命の危險がないという前提のもとにこの法律をおつくりになつたのでありまして、もしも事実上生命の危險があるという場合には、便法としてこれをお認めくださいますかどうかを承りたい。

○久下政府委員 ただいま申し上げましたように、私どもとしては生命の危險がないものという認識のもとに、かような規定を設けたのであります。実際問題として御質疑のようなことが起りました場合には、適当な考慮を拂うつもりであります。

○榊原(亨)委員 第四十九條に「麻藥のため公安をみだすもの又は麻藥の中毒により自制心を失つたものを発見したときは、」云々「六箇月收容しなければならない。」ということがありますが、これらの公安をみださない者、あるいは自制心を失わない者の中毒患者については、どんな処置をおとりになるおつもりでありますか。

○久下政府委員 その程度のものにつきましては、監視をいたすことになりまして処置いたしたいと思つております。

○榊原(亨)委員 その監視をするといいう法律的根拠はどこにありますか。

○久下政府委員 監視をするということにつきましては、特段の法律的な根拠を設けてないのでありますが、御承知の通りに麻藥主務警察権をもつております麻藥統制官が全國に配置されておりますので、それらの者が十分注意するようにいたしたいと思つております。

○榊原(亨)委員 終りました。

○山崎委員長 それでは委員長からお尋ねしますが、麻藥患者に対して朝日賞をいただいたアイエムという藥がありますが、その効果について政府でもつて実驗されたことがありますか。

○久下政府委員 政府といたしましては実驗したことはございません。お話のような藥がありますことは承知しておりますし、またこの藥が中毒患者に対しまして禁断療法を施します場合、この禁断症状を緩和いたしますために、相当な効果があることを聞いております。從いましてこの法規によりまして、麻藥中毒患者を收容いたしますような場合には、活用いたしたいと思つております。

○山崎委員長 それからお尋ね申し上げますが、國立病院でもつて、たとえて申しますると、青森縣の大湊にあります國立病院のごとく、ああいう所に患者を收容しまして、そうして療法を與えていつた方が大変好都合であると思うのであります。ただいま中國その他から引揚げてまいりました引揚民の中にも、麻藥患者が非常に多いのでありまして、これをこのまま捨ておくということは、人道上の重大問題であると考えますので、國立病院における状況を御調査の上で、適当な処置をとつてくださつたならば、大変患者に対しても有益であり、また地方の人も喜ぶだろうと思います。その点について御御見を伺います。

○久下政府委員 お話の通りに十分処置をいたすつもりであります。なお御引例にはございませんでしたけれども、東京附近には武藏野療養所という精神病の療養所もございます。これらも相当なベツトが空いておりますので、これらの者の收容施設として十分活用してまいりたいと思います。

○山崎委員長 麻藥取締法案について他に御質疑ございませんか。
    〔「なし」と呼ぶ者あり〕

○山崎委員長 麻藥取締法案に対する質疑は打切つて差支えありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○山崎委員長 それでは麻藥取締法案に対する質疑を打切ります。
    ―――――――――――――






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