参院厚生委員会質疑(昭和23年06月25日)

投稿日時 2006-06-14 | カテゴリ: 大麻取締法国会議事録

2-参-厚生委員会-16号 昭和23年06月25日

昭和二十三年六月二十五日(金曜日)
   午前十時四十九分開会
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  本日の会議に付した事件
○健康保險法の一部を改正する法律案(内閣提出)
○恩給法の一部を改正する法律案(内閣送付)
○國家公務員共済組合法案(内閣送付)
○理容師法特例案(内閣提出、衆議院送付)
○麻藥取締法案(内閣提出、衆議院送付)
○大麻取締法案(内閣提出、衆議院送付)
○性病予防法案(内閣提出、衆議院送付)
○医療制度調査に関する小委員長の報告
○医業類似行爲者のあん摩、はり、きゆう施術禁止に関する請願(第五百十五号)(第七百三十五号)
○國民健康保險事業費國庫補助に関する請願(第七百十七号)
○國立長野療養所上田分院の移轉に関する請願(第八百十六号)
○らい療養所患者の生活改善に関する陳情(第三百六十二号)(第四百四十号)
○國民健康保險制度改革に関する陳情(第三百七十六号)
○藥務局設置に関する陳情(第四百四号)
○健康保險事業費國庫補助に関する陳情(第四百三十六号)
○らい患者保護法制定に関する陳情(第四百四十一号)
  ―――――――――――――
(中略)

○理事(谷口弥三郎君) 他に御質疑ありませんか。定数が足りませんから、後で人数が集つたところで討論採決をいたすことにいたしまして、それでは次に麻藥取締法案、大麻取締法案の一括質疑に移りたいと思いまいます。御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○理事(谷口弥三郎君) それでは麻藥取締法案、大麻取締法案について質疑應答を始めます。質疑のあります方はどうぞ……

○中平常太郎君 大麻取締法案の第五條でありますが、第五條の第二項に、一、二、三とありまして、「一、麻藥又は大麻の中毒者、二、禁錮以上の刑に処せられた者、三、禁治産者、準禁治産者又は未成年者」とございますが、この三つを以て大麻を取扱うにふさわしくないと見ておるようでありますが、それ以外に重要な問題が落ちてはいないか。つまり身体上の欠陷者がここに附いていないように思うのでありますが、例えば精神病者、或いは白痴に近い者、その外、認めて以て一般人に劣るような状態におる者などは、外の法律ではいろいろな問題を取扱うことができないように、そんな者はなつておるが、この大麻だけは、その人がそういうものを取扱うてよろしいのかどうか。これが各号の一に該当する者には、大麻取扱者の免許を與えないとありますが、身体上の欠陷が起きて來る者は、大麻取扱の免許が與えられるのでありますか、この点をはつきりしたいと思います。御説明願います。

○政府委員(久下勝次君) 私から只今の御質問に対してお答え申上げます。第五條の第二項に掲げましたのは、絶対的に大麻取扱者の免許を與えない者を掲げたのでございまして、御引例になりました精神病者等につきましては、許可の場合に考慮をいたしたいと思つておるのであります。御参考に申上げますけれども、医師会歯科医師会法等におきましても、從來は精神病者に絶対に免許を與えない取扱にいたしておりましたが、今回の新らしい法律案におきましては、これを相対的な欠格條項として取扱うことにいたしております。免許を與えることもあり、與えないこともあるというような工合にいたしておりますので、それは本條の二項には該当しないものでありますが、この法律の考え方では、第五條の許可をいたします場合に十分考慮をいたしたいと考えております。

○中平常太郎君 それでは、法律にないところの重要問題を何でお決めになるのですか。法律は人権の擁護に欠くるところがあつてはならないのでありますが、法律の條文に禁止してないものが政令、省令で勝手に禁止されるのでありますか。何故に、その身体上の欠陷甚しい者に対しては、やはり大麻のごとき極めて重要なものを取扱わせない、免許を與えないということが法案になぜお示しすることができないのか。その許可を申請したときに勝手に主務省の方で與えたり、或いは與えなかつたり、勝手にするとは私は受取れないのでありますが、やはり何か準拠すべきものがあつて、そういうことがなさるべきものと思うのでありますが、それはどういう標準を、何によつてお作りになるのでありますか。

○政府委員(久下勝次君) お話の通りに、私が先程申上げましたような事柄は、或いは法律に書く方が正しいと思うのでありまするけれども、実際問題といたしまして、大麻の取扱をいたします者というのは、殆んど大部分が農民でございまして、そういう事例は比較的少いと思われますことと、精神病者でありますれば、必ずそれに代るべき者が、実際農業に携わつておるものと考えらまするので、特別に法規の上にこれを相対的な欠格條項として掲げなかつたのでございます。ただ從來の扱いも、免許をやるかやらんかというようなときに十分考慮をいたしたいと思います。若しさような者が免許を申請して参りましたならば、こちらの方でよくお話をいたしまして、そして更に別の同一戸籍内にある適当な者から申請をするというような方法で、人権を蹂躙することなしに措置ができるものと考えて、かようにいたした次第でございます。

○中平常太郎君 まだ不満足でございますけれども、その次に移りましよう。
 第九條に届出の手数料が書いてありますが、これはいつ頃案を作られたか知らんけれども、大麻栽培者は六十円、大麻研究者は五十円と書いてあります。それから第十一條の2に、免許証を紛失した場合の再交付申請の者は、手数料として十円國庫に納めなければならないとありますが、こういう問題はやはり時勢に應じたように、もう少し増額してはどうかと私思うのです。大体免許証を捨てて再交付を受ける者は、受益者がそれだけの責任があるわけでありまして、これはそんなに遠慮せいでも、十円なんかという銭は実際丼一つ買えない。それを主務省へ申請するには、各種の段階を通じて漸く厚生大臣の所に行くのです。そうして行つてそれが免許証を貰うという場合に、たつた十円の印紙を貼るだけで貰うというのは、そんなみずから捨てたところの責任はどこにあるか。十円というものはいつ考えられた数字か知らんが、これは何年前かに考えたままで置いてあるのではなかろうかと思うのでありますが、こういうことに対して、大麻栽培者が六十円ということを言いますが、藥剤師が年々免許を更新する際も五百円出さなければならない。これは大麻の栽培者が六十円、大麻の研究者五十円とありますが、これはもとより百円にしていいのでありますが、なぜこういうややこしいことをなさるのか。大体政府はいつでも、運賃を算定した場合にも何十何銭、一キロ何銭何厘何毛何糸、そういうことをやるんだが、それは理論の上から出て來る数に相違ないのです。それは腕と力で大体分るようになすべきです。そういう場合には、賃金ベースの場合でも、或いは又農産品のスライド決定の場合でも、何厘何毛まで出さないでも、四捨五入で明らかに、何人にも分るように……政府はいつもこういうことをやるから、ここで僕は質問するのです。
   〔理事谷口弥三郎退席委員長著席〕

○政府委員(久下勝次君) 私からお答え申上げます。実は大麻栽培者及び研究者の手数料の額でございますが、主としてこれは大麻栽培者に関係することでございますが、從来は三十円でありましたけれども、今度の法律案ではその倍額にいたしておるのであります。実は大麻というものは、一方におきまして國内の繊維資源として非常に重要ものでございまして、その意味におきまして、農林省当局におきましても非常に関心を持つておることでございます。現在大麻栽培の許可をし得る範囲が、連合軍当局の指令によりまして、五千町歩が許されておるのでありますが、実際に栽培の許可をいたしました所はまだ三千八百町歩に足りないという実情で、これをできるだけ多く栽培して貰うというようなことから、農林当局におきましても、これを是非できるだけ安くして欲しいという、きつい御註文がございました。相手は零細な栽培地を持つ農家も含まれておりますので、この程度にいたしたのでございます。
 それから大麻取扱者の再交付の手数料でございますが、実は大麻取扱者の再交付の免許証というものは、実に簡單な、実はザラ紙程度で、小さなもので簡單にやつておるのであります。從いまして今申しました農家の人を相手にすることでありますので、余りこういうものに沢山の手数料を取るのは如何かという考慮から、先程免許の手数料について申上げましたと同樣な考え方で、極力に安いことにしたいというので、今日の情勢に合わんようなことでございましようが……。

○中平常太郎君 それは安くして政府の財政が持てれば結構であつて、あらゆる方面から財源を捻つてお出しにならんければならん場合だから、少しでもという考えでお話をするのでありますが、要らねば結構なことで、國民が喜ぶだけのものであります。
 次に第二十條の第二項、「厚生大臣は、法令の規定により沒收された大麻について前項の処分をなすには、大藏大臣及び農林大臣と協議しなければならない。」とありますが、この大麻を沈收した犯罪行爲、その他によつて沒收した大麻について、その量のことを言わずにおいて、その者を大藏大臣と農林大臣とに、いつでも厚生大臣が協議しなければならないというのはどういうわけか、こういう問題は省の内部において、法律でこういうものを決めんでもよい筈であるし、又厚生大臣が独断でこれを処理していい筈のものであるが、どういうわけで農林大臣や大藏大臣をそこへ引つ張り出して協議しなければならないのか、これを質問します。

○政府委員(久下勝次君) 先ず大藏大臣と協議をすることにいたしました理由は、実は沒收をされました大麻は、國庫の所有に帰属いたすことになつておりまして、法律的に申しますと、大藏大臣の権限に属してしまいますので、その意味におきまして大藏大臣と協議をすることにいたしてあるのでございます。又先程から申しておりますように、大麻の繊維というものが國内の繊維資源として非常に重要なものでありますので、この点について、所管をしておりまする農林大臣とも相談するのが適当であると、こういう考え方で規定をいたしたものであります。

○小杉イ子君 第二十五條の「麻藥製造業者は、各業務所につき翌月十日までに左に掲げる事項を厚生大臣に報告しなければならない。」、この項に対しましては、私は非常な不安を感ずるものでございます。その一、二、三、四、五項の品名及び数量並びに容器の讓渡の時期、これを本当に正直に報告するか、せんかということに、もう少し何か力をお入れなさつては如何かと、こう思います。夜中によく出て行く婦人がございまして、何処に行くのかと尾いて行きましたところが、毎晩阿片吸入に行く、こういうことがございましたり、又麻藥を密賣しておる者も現にございます。こういうことがありますというと、賣つたものと又残つたものとの報告が、本当は正確でないということが分ると思います。この点を私は厚生大臣におかれては、これでよいと思われるのか知らんと、こう思つて非常に不安に思うのでございますから、一言申上げて置きます。

○政府委員(久下勝次君) 御引例になりました條文は、麻藥製造業者に関することでございまして、少しこの御質問は如何かと思いますが、麻藥法の第二十五條の御質問と思いますが、二十五條は製造業者に対する届出義務に関する規定でございます。御質問の御趣旨は麻藥が闇に流れ、只今御引例になつたような麻藥中毒患者が、これを吸引に使用するという御引例を御指摘になりましたが、実は本法の麻藥取締法の全体の構想が、さような事柄が世の中に発生いたしますことを嚴重に防止する意味で、この法律を設けておるのでございます。私共もその意味におきまして、できだけ正確な報告を徳するようにいたしておるのであります。ただ月毎に報告を求めておりまするのは、余りこれを嚴密に短い期間毎にやりますことは、徒らに煩瑣でもありまするので、かような方法によつて、常に厚生大臣が麻藥の所在について一般的な認識を持ち得るようにいたしたのでございます。尚これと関連をいたしまして、各府縣には麻藥統制官がおりまするし、又司法警察権をそれらの者が持つておりますので、常にそれらのものは必要な管理をすることになつておりまするから、それらによりまして、御質疑のありましたような問題はできるだけ排除するように、撤底的な排除するように努めておる次第であります。

○草葉隆圓君 大麻の第四條の第二号の「医藥品を施用」するのは、大麻を配合した処方箋を交付することを含むかということをお尋ねします。

○政府委員(久下勝次君) 御趣旨の通りでございます。

○草葉隆圓君 そうしますと、大麻の取締法の中で、全体について私はどうしても不可解な点が一つあります。それは大麻の取扱者という者は栽培と研究者である。この十二條には取扱者でない者は他に讓つてはいけない。そうすると、これからできた品物はどこがどう取扱い得るか、この條文には一つも出ていない。以前の條文、旧法には出ておる。

○政府委員(久下勝次君) 御指摘の通りに、実は大麻から麻藥を取りますこと、そのことが禁止せられておるのでございます。そういう意味におきまして、大麻かに麻藥を取ることは全然行われてないのでございます。ただ大麻の繊維だけが一條で除去されて、これはできることになつております。

○草葉隆圓君 そうすると、先程申上げました第四條の第二号の「施用」というのは、大麻の配合した処方箋の交付を含むと、こうおつしやつたように私伺いました。で大麻から作つたものは一切禁止をするということが、この法の精神であるなら、「施用」という中には、大麻から製造した麻藥というものは今後作らないという方針でありますので、大麻を配合した処方箋の交付を含まないというものが、大麻から製造された麻藥品を施用すというのが、何にもならないという、この條文を、どうしてここに出したのでありますか。

○政府委員(久下勝次君) お答えいたします。私共はこの点は、実は從來大麻から作りました麻藥がまだ國内に残存をいたしておるように思います。さような意味におきまして、この規定を置きましたのであります。

○草葉隆圓君 現在大体麻藥中毒患者が三千百四十八名という御報告であります。その他にも潜在患者が相当多数ある見込だ。これらの患者をどういうふうに、この両方の法案では相当嚴格に取扱つてありますが、社会問題として、どういうふうになされるという予想の下に、この法案をお作りになりましたか。

○政府委員(久下勝次君) 麻藥中毒患者の取扱の問題は、本法を施行します上に最も重要な問題であると思うのであります。その意味におきまして、今回の法律案におきましては、麻藥取締法第四十九條に、麻藥中毒患者を一定の場所に收容をいたす規定を設けたのでございます。大体具体的には精神病院等に入院せしめまして、いわゆる麻藥の禁断療法を施す、これ以外何ら麻藥中毒患者を治療を治療する方法が現在ないように思いますので、さような方法によりまして、結局麻藥中毒患者をなくすという以外に方法がないと思いまして、特に今回の法案にかような規定を入れた次第でございます。

○草葉隆圓君 そうしますと、その施設というものは、大体今の構想はどうなつておりますか。

○政府委員(久下勝次君) 大体私共といたしましては、國立の精神病院がまだ相当ベツトの空いておる所もありますし、更に又國立病院におきましても、かような患者者を收容するに適当な所もあるように思いますので、先ずさような施設を充当いたしますと共に、一般の精神病院等もこれに活用したいと思つております。

○委員長(塚本重藏君) 他に御質疑ありませんですか。

○三木治朗君 大麻が繊維にまでなつてしまへば、これはもう何も麻藥の方に関係がなくなるんじやないかと、こう考えるのですが、ところが繊維も、数量までも一々届出ろというようになつておるように思われるのですが、今麻が日本で大体生産が足りないので、沢山麻を要求しておるのですが、この法律のために、麻を作ることを何んだか非常に面倒なような感じを一般が受けるんじやないか、栽培者が受けるのではないか、それでなくても麻はなかなか肥料が沢山要つて、栽培技術が相当むずかしいものである、このように聽いておるのでありますが、こういう法律のために、栽培することを避けるような結果になりはしないかということを憂えるのですが、その点如何なものでしようか。

○政府委員(久下勝次君) 私共も御指摘の点は心配をしないでもないのでございます。実は從前は、我が國においても大麻は殆んど自由に栽培されておつたのでありますが、併しながら終戰後関係方面の意向もありまして、実は時大麻はその栽培を禁止すべきであるというところまで來たのでありますが、いろいろ事情をお話をいたしまして、大麻の栽培が漸く認められた。こういうようなことに相成つております。併しながらそのためには大麻から麻藥が取られ、そうして一般に使用されるというようなことを絶対に防ぐような措置を講ずべきであるというようなこともありますので、さような意味からこの法律案もできております。その意味におきましては絶対に不自由がないとは申せませんと思いますが、行政を運営する上におきましては、さような点をできるだけ排除して、できるだけ農民の生産意欲を向上するように努めております。

○草葉隆圓君 一應これで質疑を打切りの動議を提出いたします。
   〔「賛成」と呼ぶ者あり〕

○委員長(塚本重藏君) ちよつと速記を止めて……。
   〔速記中止〕

○委員長(塚本重藏君) 速記を始めて……。外に御質疑ありませんか。

○草葉隆圓君 質疑を打切つて、直ちに討論採決に入りたいという動議を掲出いたします。

○委員長(塚本重藏君) 草葉君の動議に賛成の方は……。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○委員長(塚本重藏君) それではさようにいたします。理容師法特例案、麻藥取締法案、大回取締法案、以上三案を一括いたしまして討論に移ります。どうぞ賛否を明かにして……。

○草葉隆圓君 討論を省略して、直ちに採決に入らたいという動議を掲出いたします。

○委員長(塚本重藏君) 草葉委員の動議に御異議ございませんか。
   〔「賛成」と呼ぶ者あり〕

○委員長(塚本重藏君) 御異議ないものと認めます。それではこれより三案を一括して採決に移ります。原案を可とせられます方の御起立をお願いいたします。
   〔総員起立〕
委員長(塚本重藏君) 全会一致を以て、原案を可決すべきものと決定いたしました。尚本会議における委員長の口頭報告の内容は、本院規則第百四條によつて、予め多数意見者の承諾を得なければならんことになつておりますが、これは委員長において本案の内容、本委員会における質疑應答の要旨、討論の要旨及び表決の結果を報告することとして、御承認を願うことに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○委員長(塚本重藏君) 御異議ないものと認めます。尚本院規則第七十二條によりまして、委員長が議院に掲出する報告書について、多数意見者の署名を附することになつておりまするから、本案を議決せられました方は順次御署名をお願いいたします。
   〔多数意見者署名〕

(後略)






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