研究報告:血中 THC 濃度が高くても交通死亡事故リスクは上昇しない

投稿日時 2014-10-14 | カテゴリ: NORML News

2014年4月3日(木)

ニュージーランド ポリルア:『交通事故の分析と予防』(Accident Analysis and Prevention)ジャーナル オンライン版で公表された交通事故過失分析の結果によると、大麻に陽性の運転手は、薬物やアルコールを摂取していない運転手と比べて、交通事故のリスクがわずかに高くなるものの、血中 THC 濃度とリスクには正の相関性はなかった、という。


ニュージーランドの研究者らは、1,046 件の交通死亡事故のコホートにおいて、血中に薬物またはアルコールの反応がなかった運転手と比較し、陽性の反応が出た運転手に関連する交通事故のリスクを評価した。

アルコールに陽性の運転手は、死亡事故で責めを負うべき可能性が最も高く(オッズ比= 13.7)、アルコール以外の薬物(アヘン剤、鎮痛剤、大麻、覚醒剤など)に陽性の運転手は、全体のオッズ比が 3.5 だった。

血中のアルコールと大麻両方に陽性反応が出た運転手は、事故の過失に強く関連していた(オッズ比 = 6.9 )。それに反して、(血中 THC 濃度を指標として)大麻のみに陽性の運転手の過失との関連性は、弱いものだった(オッズ比 = 1.3 )。注目すべきは、血中のTHC 5 ng 以上に陽性の運転手の過失比は全く高くならず(同= 1 )、残留レベル程度のTHC( 2 ng/ml 以下)に陽性の運転手の方が高い比率(同= 3.1 )を示したことだ。

米幹線道路交通安全局が公表している概況報告書によると、「 THC の血中・血漿中濃度と行動障害作用の間に関連性を立証するのは困難。血中 THC 濃度のみを基に効果を予知しようとするのは得策ではなく、今のところ、 THC-COOH(代謝物)濃度を基に特定の作用を予知するのは不可能だ」という。

米運輸省による、交通行動に関するある研究でも同様に、以下のように述べられている。「このプログラムの目的の一つは、単一試料で・・・ THC の血漿濃度による運転障害の予知が可能かどうかを決定することだった。答えは明白。不可能だ。この研究で実質的障害を示した運転手には、血漿中 THC が高濃度と低濃度の両者が含まれていたが、高濃度 THC の運転手には、実質的障害が現れる人はいたものの、全く障害が無いかむしろ上達さえした人もあった」。

ワシントンとモンタナの 2 州では、血中 THC 濃度 5 ng/ml 以上での乗用車の運転は、“障害行動” として定義されている。コロラド州法では、血中 THC 濃度 5 ng/ml 以上で運転障害があると見なされる。ネバダ、オハイオ、ペンシルベニアの 3 州が設定している血中 THC 濃度の限度は低い(それぞれ 2 ng/ml、2 ng/ml、1 ng/ml)。11 の州では、血中の大麻成分に関して、ゼロ容認の法律を課している。その他の州では、検察が薬物影響下の運転(DUI: Driving under influence)で起訴するには、運転手の最近の薬物服用歴と、薬物服用後その影響下で運転していたことを証明する必要がある。

NORML 副事務局長ポール・アルメンターノはフンボルト財団『社会関係ジャーナル』(Humboldt Journal of Social Relations)で公表された 2013 年のレビューの中で、カンナビノイドに、“制限” を課すことに反対する考えを述べ、次のように主張した。「大麻を使用している被験者の血中に THC および・またはその代謝物のみが(とりわけ低い水準で)存在するとしても、精神運動面の障害になっているとは限らないし、たいていの場合運転障害は起こらない。(中略)大麻の使用に関する法律の修正を勘案する州が増える中、議員諸氏には、事実、裁判での有罪判決の決定要因になっている血中または尿中の THC(またはその代謝物)濃度とは全く関連性がない、大麻での運転行動についての懸案事項に対処する法的な代替策を検討していただきたい。さもなければ、交通安全法規の発動により、検察・警察などが、法的に保護された行動をしている人や、交通安全面に何も脅威を与えていない人を懲罰するというような犯罪メカニズムに繋がりかねない」。

Accident Analysis and Prevention ジャーナルで 2013 年に公表された、66 の研究についてのメタ分析によると、アンフェタミン、アヘン剤、ベンゾジアゼピンに陽性の運転手は、交通事故負傷の調整オッズ比で上位を占めた(オッズ比= 各 6.19 、1.91 、1.17 順不同)一方、ペニシリン、抗ヒスタミン剤、大麻、鎮痛剤に陽性の運転手のオッズ比は最下の 3 位となった(同 1.12 、1.12 、1.10 、1.02 )

詳しい情報は、NORML副事務局長ポール・アルメンターノ(paul@norml.org)にお問い合わせください。この研究の全文 "The culpability of drivers killed in New Zealand road crashes and their use of alcohol and other drugs" は、Accident Analysis and Prevention に掲載されています。

Source: NORML NEWS
Study: Higher THC/Blood Levels Not Positively Associated With Greater Fatal Accident Risk
Thursday, 03 April 2014

翻訳:bongyo

コメント
アルコールのオッズ比ずば抜けてます。つくづく、これでお酒が合法なんですもんね。





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