【書評】「大麻草と文明」(1)もし大麻が合法であったなら、この世の中はもっとハッピーだっただろう

投稿日時 2014-11-22 | カテゴリ: サルパラダイスの読み

サル・パラダイス

大麻草と文明
ジャック ヘラー (著), J.エリック イングリング (翻訳)
築地書館


ジャック・ヘラー著のこの御本、初版は1985年、大麻について多くの方が正確な判断を得、自身の体験と比較した大麻についての世間の言説の疑問を解き、大麻についての解放へのムーブメントへの力となったであろう名著がついに、J・エリック・イングリングより邦訳されました。「大麻草と文明」とタイトル的にはちょっと地味だけどね。イングリングさん、ほんとうにありがとうございました。おつかれさまでした。

以下、この本を読んでということで


過去70年にわたって、アメリカ政府は大麻という植物種の撲滅に精力的に取り組んだ。植物種を故意に、もしくは偶然に絶滅させる行為は、これまで人類歴史上なかった。

1937年、アメリカ政府においてマリファナ課税法案が可決され、12月より施行された。
この少し前からも州単位で大麻禁止は一部スタートしてたようだ。
そして、この政策はアメリカが経済、軍事といった協力と引き換えに世界中に広める。共産圏においても、アメリカの大麻についての偽情報(狂暴化するであるとか、無気力で反戦主義になるとかいったもの)を真に受けた形で禁止されていく。
なぜアメリカで禁止されたかということは後に取り上げるとして、もし禁止されていなかったらどういう世の中だったかをこの本から考えてみる。

あながち、全くの夢物語ではない。その分岐点はかなり微妙な中で起こったとこの本により理解しました。
マリファナ課税法案が通されようと画策されてた頃、大麻草の長い繊維を屑から分離する重機械が登場しており、それにより大麻からの製紙業が大規模にできるめどがたちつつあった。

一方で、同時期デュポン社がナイロン繊維を開発し、他にも硫化物で処理された樹木パルプ由来の製紙技術などの特許を取得している。
さらには、その少し前より、初期の石油王であったスタンフォード・オイル社のロックフェラー家やシェル社のロスチャイルド家その他は、ヘンリー・フォードの大麻より生産される安価なメタノール燃料にパラノイア的危機感を覚えていた。
大麻草自体は、アメリカでは100種類以上もの疾患に効くとされた主要な医薬品であったし、嗜好用としても、1920年代でもニューヨークにはハシシパーラーが500軒もあったくらい馴染んではいた。

さて、70年~80年前に戻って、大麻が禁止を免れて進んでいた世界。

全米、あるいは日本、中国、その他世界中の広大な土地を大麻草が覆っている。
大麻草は1年草であり、土壌を破壊せず、荒地で育てばそこをかえって肥沃にし、害虫を寄せ付けないため殺虫剤等の使用を必要としない。現在、毎年のように洪水で苦しめられているバングラデッシュ(本来はバング(大麻)の土地の人々という意味らしい)は、その土地を覆う大麻により、洪水や土壌崩壊をまぬがれている。

収穫した大麻からは、綿や化学繊維より長持ちするすぐれた衣類が安価に作られる。縄や船の帆も作られる。あるいは絵具、キャンバス。
収穫された大麻は1916年にシュリヒテンが発明した剥皮機(あらゆる植物から繊維を分離し、パルプを残す)により、大量の紙が作られる。

また、建築資材の多くも大麻より作られる。
現在の我々の世界と比べ、圧倒的に緑に覆われてると感じるのは、大麻草以外にも、紙や建築資材用に木材が伐採されることがほぼなく、1937年より半減された世界の森林がほとんどそのまま残っているからだ。

空気はきれいで、酸素が多く、街中でさえ現代と比べると森林浴をしているかと思うほどであろう。

社会を動かすエネルギーの中心は、大麻草のバイオマスである。どこでも栽培可能な大麻によりエネルギー問題は解決し、世界の紛争のほとんどがその根底にエネルギー争奪があったことを考えると、戦争といったものはほとんど存在していないであろう。ということは、軍事費は限りなく少なく、その費用は福祉に回っていると考えられる。

化学繊維、木材からの製紙、化石燃料によるプラスチック製造や発電等がないため公害が問題になることもほぼ無い。自動車もヘンリー・フォードが追求していたバイオメタノールで動いている。
もちろん、原子力発電は存在しない。

又そこは、鳥たちにとっても現在より楽園に近い世界と言える。彼らの大好物の大麻の種がふんだんに得られる世界。より繁栄し、美しい歌声で溢れているであろう。

大麻の種を好むのは、鳥だけでない、ジャック・ヘラーの観察では魚もそうだというし、家畜にあげれば、成長促進剤などといった化学物を与えることなく、充分体重を増やせる。人間にとってもそれは、麻の実を圧搾し抽出したもので、鶏肉やステーキや豚肉のように味付けすることができる。

大麻の種は、大豆以上の栄養源であり、大麻があふれることにより、それがアフリカ、第3世界等の飢饉を現在より軽くしているのは間違いあるまい。

医療では、大麻を使用した治療の研究がかなり進んでいると思われる。それは、癌やエイズといった難病だけでなく、風邪や腰痛、生理痛といったもの、ADHD、PTSDといった精神的なものまで幅広く使われているだろう。大麻を使った医療は、医薬品の開発と違って、それをどのように使用すると効果的かといった研究に主眼が置かれるであろう。

また、大麻は自分で栽培可能なため、医療使用においてはガイドやアドバイザーといった資格者が各家庭をまわっていたり、あるいは、大麻を育てつつ使用する共同施設のようなものができている気がします。

嗜好用大麻が実現していることで、アルコールやたばこの使用は格段に減っており、飲酒運転、酒酔いの暴力、破壊、健康被害も現社会より大幅に少ない。

さて、社会構造もかなり違っていることでしょう。大麻の栽培者は基本的には農家であり、それは、あらゆる産業の基になっていることから考えると、そこからかなりの収入が得られると思われます。

あらゆる土地で収穫できるし、肥料、農薬等の使用もなく、連作可能で、毎年収穫でき、多くの家族農業が充分裕福に生計を立てている。そのため、都会だけでなく、地方も豊かで元気なのだ。あるいは、大都市に一極集中するような経済ではなくなるので、街や田舎の様子もずいぶん違うかもしれない。

又、大麻栽培はエネルギーをはじめとした多くの産業の根幹なので、人間の多くがこの自然循環型の作業にかかわっているはずで、だれでも育てられる植物であることから独占も起こりがたく、現在よりもっと協力的な社会であろうと思われる。

有限の資源の奪い合いでなく、0からの無限の資源のめぐみに生きる社会であり、現社会とは価値観が大きく違うと思われる。
大地に種を蒔けば、自然に生まれ、それをあらゆる資源として生活ができ、吸えば愛に満ち溢れるわけなので、そこからは人より豊かにの発想は生まれがたい。

独占、競争、拡大、富の集中といった欲望を追及していく流れと違い、自然循環の中での毎年の収穫を皆で分かち合い、あるものの中で協力していき、毎年繰り返される自然の中での豊かな生活を素直に感謝しつつ、富の拡大の意識はほぼなく、そのためにがんばらないことにより増えた余暇時間には個々人がもっと創造的なことに励んでいる

そして、競争が少ないことからストレスも現社会より圧倒的に少なく、夕方には緑あふれる自然の中で、仲間と最高の一服を決めて笑いあっていることであろう。

(2に続く)





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