サル・パラダイス
ニューズウィーク日本版 2015・3・3
マリファナ合法化に想定外の副作用
ドラッグ 高品質のアメリカ産が出回りメキシコの麻薬カルテルは荒稼ぎできない?
まずは、アメリカの景気回復の中でも、成長率で言えば、大麻産業が群を抜いているという指摘。14年に大麻の売り上げは74%増、27億ドル。 さらには、嗜好用大麻解禁の動きは全米に拡がりつつあると断言し、今後数年はこの分野の急成長は続くとしている。
もう経済で言えば、まあ経済で言わなくてもだが、アメリカで大麻の解禁の流れは止まらない、止められない。おそらく、ここ数年でほぼ全州で大麻解禁となるのでしょう。もちろんかたくなに拒む人々もいてもよく、アメリカは人種のるつぼなので、例えば自動車や電気の使用さえいまだに否定するアーミッシュのような種族も存在するわけで、ただ、大麻全米解禁と言っても、勘違いしてはいけないのは、全員が大麻のある生活をしなさいと言ってるわけではなくて、単に全米が人々が大麻を持っていても逮捕されないような社会となるということなんですね。
考えてみたら、しごくあたりまえのことなんだけどね、オバマは言った、大麻はアルコールほどにも危険性はないと、だったら持ってても逮捕するなよってね。
で、経済の話。風が吹けば桶屋が儲かるって感じで、アメリカで大麻が合法になれば、メキシコが儲からんってね。どういうことかというと、メキシコはアメリカへの違法大麻の最大の供給国だったんだけど、アメリカの大麻生産者が作るものがどんどん質が上がっていくので、メキシコから買う意味がなくなってるということ。アメリカ国境での押収量が激減し、メキシコ国内での押収量も減少したそうな。ついでにメキシコ国内での殺人事件の発生件数も減ったそう。 合法化により、大麻の価格も下がり、違法大麻の取引が減り、麻薬カルテルの資金が減り、犯罪が減り、ねえ、いいんじゃないですか。
こういうのがひろまってくると、大麻解禁に反対する奴は、逆に裏組織と取引があるんじゃないかと勘繰られるようになるよ。なんか、善悪大逆転だね。
ただ、そのため窮地に立たされているのがメキシコの栽培業者だってこと。彼らはただ栽培してる農家でして、買い上げるのが、たまたまといいますか、現世界では悪の組織だったわけでして、その親玉が売上落としたことにより、栽培した大麻を買ってくれるところが無くなったって話。
で、どうなるかっていうと、メキシコでも大麻を合法化してしまおうって。メキシコは今のところ、大麻を持ってる分には処分されることは無いけど、栽培と輸出に関しては非合法だからねえ、それを合法化して、堂々と農家を救い、輸出による利益をちゃんと得られるようにする。おそらく、メキシコ産は労働賃金低いので、格安大麻(そんな言葉できそうだね)として需要がまた伸びるのでは。そうなるのでしょう。
そうやって、大麻解禁は世界中に拡がっていくのではないか。ちょっと前のベストセラーに「フラット化する世界」という本があったけど、世界のどこかで起こったことは、世界の細部にまで浸透するんだねえ、それが今僕らがいるグローバル社会ってわけ。
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