高CBD大麻 対 単分子CBD

投稿日時 2015-04-04 | カテゴリ: プロジェクトCBD

Whole plant cannabis therapeutics2015年 2月22日

記事:マーチン・リー(Martin A. Lee) 2015年 2 月22日

あるイスラエルでの革新的な研究において、高CBD大麻草全体のエキスには、合成の単分子カンナビジオール(CBD)に比べて、より優れた治療特性があることが証明されている。

その記事は、『薬理学と薬学』(Pharmacology & Pharmacy)誌(2015.2月号)で公表され、大手製薬会社や医療産業界全体の聖域(「無加工の」植物性製剤は、純正の単分子成分に比べると、本質的にグレードが低く、効果も少ないという考え方)に直接踏み込んだ内容だ。


タイトルは、「カンナビジオールが豊富な大麻エキスの使用によりカンナビジオールの釣鐘状の用量反応を克服する」というもの。それは、アナンダミド(1992 年にほ乳類の脳内において初めて確認された内因性のカンナビノイド成分)の発見において大きな役割を果たした、共著者のルミール・ハヌス博士の貢献を考えると、なおさら注目に値する記事だ。

ハヌス氏と、ヘブライ大学の 2 人の研究者らは、関連する科学文献を調査。過去 15 年間の間、多くの前臨床研究において、リウマチ性関節炎や炎症性腸疾患、多発性硬化症、糖尿病など、様々な病理の動物モデルにおける、純正の単分子CBDの抗炎症作用が注目されてきたことを指摘した。

これらの研究により、純正の単分子CBDを投与すると、用量反応曲線が釣鐘状になる、つまり、CBD がある量を越えると治療効果が劇的に減少することがわかった。「治癒効果が見られたのは、非常に限定された用量の範囲内でCBDが与えられた時のみで、それよりも少量もしくは多量であれば、効果がなくなる」という。このような(用量反応が釣鐘状になる)特徴により、単分子CBDには、臨床における有用性を制限する重大な障壁が生まれる。

イスラエルの研究チームは、高 CBDの大麻草全体のエキスをラットに投与し、用量反応曲線が釣鐘状になるかどうか判定を試みた。つまり、高CBDの大麻草から抽出したCBDでは、そのような曲線にならないかどうかだ。研究チームは、「今回の研究の目的は、純正CBDの釣鐘状の用量反応曲線を無くすCBDの原料を探し出すことだった」と説明した。

彼らは、イスラエルの医療用大麻製造会社ティックン・オラム製の高 CBD 大麻品種「アヴィデケル」("Avidekel")を使用。Avidekel は、研究の中で「クローン 202」として言及されており、THC をほとんど含まないため、酩酊感を引き起こさない。Avidekel の原産国と考えられるスペインでは、ブリーダーにより、乾燥状態で 20 %のCBDを含有し精神作用成分をほとんど含まない「カナトニック」(「カナビス・トニック」)の表現型が数種開発されている。(カリフォルニア州では、同じ高CBDの品種は「ACDC」と呼ばれている。)

研究チームは、クローン 202 から高 CBD オイルを抽出。オイルエキスは、CBD 17.9 %、THC 1.1 %、CBC(カンナビクロメン)1.1 %、CBG(カンナビゲロール)0.2 %、そして微量の CBN(カンナビノール)と CBDV(カンナビヴァロール)などで構成され、その抗炎症作用と鎮痛作用を評価するため、ラットに投与された。

研究チームは、比較のため、他のグループのラットにも純正の合成CBDを投与し、その抗炎症特性および鎮痛特性について評価。また、単分子CBDと大麻草全体のCBDが、腫瘍壊死因子アルファ(TNFa)(全身性抗炎症シグナル伝達分子)の生産をどの程度抑制するか評価した。TNFa の生産の調節異常は、がん、アルツハイマー、臨床的鬱病、過敏性腸症候群など、いくつかの疾患に関係があるとされている。

今回の純正CBDテストにより、過去の前臨床研究結果が裏付けられた。単分子CBDを投与すると、前と同じように、治療域の狭い、釣鐘状の用量反応曲線が生成された。

しかし、クローン 202 エキスをラットに投与すると、異なる用量反応パターンが確認された。高CBDの大麻草のエキスは、純正CBDの場合のように限られた濃度でしか効果がない釣鐘状の曲線を示さず、疼痛や炎症、TNFa の生産に対して、用量次第で変わる直接的な抑制効果をもたらした。研究チームは次のように報告した。「純正CBDとは全く対照的に、クローン 202 のエキスでは、抗炎症性および抗侵害性の反応と用量の間に、用量が増えれば反応が増えるといった明確な相関関係があった。このことから、高 CBD の大麻は、臨床の使用に理想的な医薬となる」。

さらに、この研究により、クローンエキスに含まれる少量の CBD で著しい鎮痛作用が得られるのに較べ、純正 CBD で同じ作用を得るには、はるかに多くの量が必要なことが分かった。また、純正の単分子 CBD は、決まった用量以上が投与されると効能が急激に低下する一方、高 CBD の大麻草エキスは、「過剰摂取」してもその治療効果が低下することはなかった。クローン 202 が最適な用量以上投与されると、その効果は横這い状態になり、薬効面の停滞状態に達したことが分かった。

イスラエルの研究では、クローン 202 のエキスが、「炎症の治療において、CBDより優れていること」が分かった。大麻草エキスの優れた効能は、CBD と、数十の少数カンナビノイドおよび数百の、カンナビノイドではない大麻化合物の相乗的な相互作用によるものではないかと考えられる。研究チームは、「エキスに含まれる他の化学成分がCBDと相乗的に働き、純正CBDで見られる釣鐘状の用量反応を打開する一因となりうる抗炎症作用を発揮していると考えられる」と推測した。

また、研究者らは、高 CBD の大麻エキスと、市販の鎮痛剤や抗炎症剤との比較を検証することも重要ではないかと推測。純正 CBD とクローン 202 エキスが共に、アスピリンよりも高い抗炎症作用を示すことを突き止めた。アスピリンには、トラマドール(オピオイド鎮痛剤の1つ)とは異なり、TNFaの生産にわずかな抑制効果があったが、その効果は、純正CBDやクローン 202 の強力な抑制効果と較べると取るに足らないほど弱いものだった。

CBDが他の大麻成分と共存すると、CBDの用量反応が向上するという重要な発見は、腫瘍細胞に対する CBDの抗増殖効果や、膀胱収縮に対する抑制効果を立証した最近の報告に裏付けられている。

イスラエルの研究チームは、次のように結論した。「これまで多くの研究において、単体化された、伝統的に使われている薬草の成分の特性が明らかにされ、その成分治療に使用する論理的根拠が判明している。… しかし、その過去のデータと、今回のわれわれの研究データから、これまで医薬品で対処してきた疾病を治療するのに新世代の植物性薬剤を導入するのが正当なことがわかる。植物エキスの使用で見られた治療的相乗作用により、結果的に、比較的少量の活性成分で十分に賄え、副作用も減少した」。

この記事の著者 Martin A. Lee は、Project CBD の理事長で、"Smoke Signals: A Social History of Marijuana ? Medical, Recreational, and Scientific"の著者。

Project CBD
CBD-Rich Cannabis Versus Single-Molecule CBD
February 22, 2015

翻訳:bongyo





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