「プロバイダ等の自主的対応を支援する取組」について

投稿日時 2006-10-29 | カテゴリ: 白坂の雑記帳

談話室にinfinityさんが書き込んでくれた件、とても大切な問題だと思います。
当方の意見を書き留めておきます。

インターネットがきっかけとなって起きる事件や犯罪が後を絶たず、社会問題となっている現在、業界団体が統一的な基準を作り、インターネットから犯罪や事件の温床を取り除こうとする取り組み自体は必要だろうと思います。
民間だけでなく、行政の立場から、法的見解を明確に示す支援も必要だろうと思います。

問題は、それが「言論の自由」や「表現の自由」「思想の自由」といった、憲法で保障されている国民の権利を損ねたり、侵害したり、萎縮させたりすることになってはならない、ということではないでしょうか。

総務省の資料を見ると、その点、「報告書案における違法な情報とは、情報の流通自体が違法なものを意味しており、現在も既に個別の法律により規定されているもので、広汎、恣意的なものであるとは考えておりません」とか「報告書案は、現行の法令においてその流通が違法とされていない情報を新たに規制することを提言したものではありません」などと書かれていて、あくまでも現行法に照らしての基準を示すものだとされています。

資料にざっと目を通して一瞬ギョツとしたのは次の箇所でした。


次のすべてを満たす場合には、規制薬物の濫用の公然、あおり、又は唆し等の構成要件に該当する情報と判断することができる。

・ 「覚せい剤、大麻、MDMA」等の表現が記載されている場合
・ 「白い粉、S、エクスタシー」等一般的に規制薬物名として用いられている表現が記載されており、かつ、対象情報が掲載されている電子掲示板、ウェブサイト等に掲載されている他の情報(画像等による対象物の形状、使用方法、効用、品質、値段等対象物に関する説明等)から規制薬物であることが明らかである判断できる場合

「「覚せい剤、大麻、MDMA」等の表現が記載されている場合」とあるので、ここだけを読むとあたかも「覚せい剤、大麻、MDMA」といった単語の記述自体が規制対象になるかのようですが、よく読むと「次のすべてを満たす場合」ということで、「覚せい剤、大麻、MDMA」といった直接的な表現だけでなく、「白い粉、S、エクスタシー」といった隠語による表現であっても、現行法に照らして違法な内容を含むのであれば規制対象とする、という意味です。
これは総務省の担当者に確認しました。規制薬物の名称そのものを規制するなら、薬物乱用防止のサイトもいけないことになる、と、その担当は言っていました。

ただ、業界団体が統一的な基準を作るといっても、総務省が参画しているのだから、もちろんそのガイドラインの内容については総務省に責任があるでしょう。総務省ガイドラインです。

繰り返しになりますが、大切なのは、このガイドラインが「言論の自由」や「表現の自由」「思想の自由」といった、憲法で保障されている国民の権利を損ねたり、侵害したり、萎縮させたりすることになってはならない、ということではないでしょうか。

言論機関は特にその点を監視する必要があるでしょう。
それなのに、産経は、あたかも総務省が規制薬物の個別名それ自体を規制しにかかったかのように「大麻は消して! 総務省」と事実ではないことを居丈高な見出しにしている。
記事の内容も総務省の担当者が「どうしてこういう記事になってしまったのか分りません」と言う通り「不正確」。
【「大麻」は消して!ネット有害情報削除に指針 総務省】などという事実とは異なる不正確な報道によって、ネット通販を手がける企業が、自主規制的に過剰反応する危険性はとても高いと思います。
麻枝さんのブログでも、産経の報道の翌日、ネット通販のビッダーズから大麻栽培のDVD販売を止めるよう連絡あったとのことで、麻枝さんはその根拠を明確にしろとビッダーズに求めるようですが、これなども企業側の過剰反応の可能性もあるのではないでしょうか。

今後、このようなケースが出てくることが予想されますが、単に「金返せ」で済まさずに、麻枝さんのように、不当な対応を跳ね返す力量が、こちら側にも求められているのだと思います。
ビッダーズの件に関して言えば、回答が納得できないものであれば、それこそ不買を呼びかけるのも対抗手段だろうと思います。
産経のネット報道に関して言えば、「大麻は消しては消して! THC」です。


今回のガイドラインが採用されると、プロバイダーなどの業界企業は、自社が管理するサイトに、ガイドラインに抵触していると思われる内容があれば削除するでしょう。
言論や表現や思想の自由を守る立場からすると、それが本当に現行法に抵触する内容であったのかどうか、そして、その法自体が正当なのかどうか、個別のケースについて検証できるような仕組みが必要ではないでしょうか。

このガイドラインに関する意見の募集が行われていますが、大麻問題に取り組むTHCとしては、プロバイダなどのサイト管理会社が職権で掲載内容を削除する場合、その報告もしくは公表を義務付け、内容を一般に公開し、適切な削除であったかどうかを誰でもが検証できるようにして頂きたい。それが要望です。

乗りかかった船なので、THCとしても意見を出しておこうと思います。
締め切りまでまだ少し時間があるので、引き続き談話室でも議論を深め、他にも意見があれば検討し、集約して出したいと思います。

あなたの意見をお聞かせ下さい。






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