サル・パラダイス
【今週のマスコミよかった大賞】
週刊プレイボーイ No.46 カオスを飲み干せ
モーリー・ロバートソンの挑発的ニッポン革命計画 “世界一貧乏な大統領”は、なぜ大麻を合法化したのか?
2012年、ブラジルのリオデジャネイロでの「国連持続可能開発会議(リオ+20)」でのこと。当初、世界の代表は、この人工300万にも満たない小国ウルグアイの大統領のスピーチを大して期待もせず待っていたのです。 ところが、彼のスピーチが始まると、聴衆は完全に惹きつけられました。 彼のスピーチは、大国をはじめとする世界の代表のそれとは全く違ったアプローチでした。
インドの民衆がドイツの一世代が持つのと同じように車の所有をしたらどうなりますか、世界の民すべてが現在の先進国の贅沢をはじめたらどうなりますか。地球は壊滅しますよ。 豊かさとは、物質的にどんどん求めていくことではない。今あるもので充分満足することを知って、その中で幸せに暮らすことです。
ムヒカ大統領は現在の資本主義経済の限界を指摘しつつ、世界人類が進化していくというなら、本当に目指すべき幸せは違う方向ではないですかと提唱したのです。 物質的な繁栄、富をいかに多く集めるかを目的として、肉体的に、精神的に酷使して働いて得るところに、本当の幸福はあるのでしょうか。
ウルグアイでは、人間的生活をとりもどすため、1日8時間労働に挑戦し、さらには6時間労働へと進みました。しかし、ローンを払うためにと、本業のあとさらに6時間労働する人も多くいます。そうして得ていく富に本当の幸せはありますか。 富を求め続けることを止めて、今ある状態に満足し、家族やコミュニティとのつながりを大事にし、自分の生き方を充実させること。 ムヒカ大統領は、世界が、地球が幸福であるために、人類に向かって、これから進むべき方向性を示したのだと思います。スピーチが終わったあと、会場は満場の拍手に包まれました。
ムヒカ大統領は、実際、彼の言葉を実践していました。大統領公邸に住まず、給料の大半を寄付して、自分の古い車で大統領の仕事へ向かいました。そんな、彼を国民は親しみを込めて「ペペ」と呼んでいました。そんなムヒカ大統領は、国としてははじめて、大麻の栽培、販売、使用を合法化しました。
今、大麻合法化を考える時、国や地方の税収を得られるとか、犯罪の資金源を絶てるとか、医療費の節約につながるとか、そういった議論が盛んにされると思います。 もちろん、それはそれで大事なことではありますが、ムヒカ大統領その人を思うと、彼は、「果たして、このように大麻を禁じていることは国民にとって幸せにつながっているのだろうか」と必ず考えたと想像できるのです。
「この自然に生えてくる大麻という植物のために多くの国民が投獄されている、あるいは悪の資金源となり時に抗争が起きて多くの国民が犠牲になる。しかし、この植物、最近の研究では酒やタバコほどにも人体に影響がないばかりか、ガンなどの難病の治療に大きな効果があると示されている。これはすぐにも国民へ解放するべきではないか」
貧しい人へ給料の大半を寄付していたペペだからこそ、何の利害関係にもとらわれず、国民にとっての本当の幸せのために決断できたと思うのです。
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