第12回公判 被告人最終意見陳述(3)
5.CBDオイルの輸入販売から見える矛盾
公判でも述べたとおり、現在私はCBDオイルの輸入販売事業を営んでいます。アメリカではCBDオイルのメーカーが急増しており、アメリカよりはるかに大麻規制の緩いEU諸国では、アメリカでCBDオイルが注目を浴びる以前からその効果が知られ、商品化されていたそうです。
先日、チェコ共和国にあるCBDオイルのメーカーから、私が代表を務める会社にメールで取り引きの申し出がありました。先方からのメールによると、そのメーカーの商品は、日本の法律にも適合しているとのことでした。こちらからは繰り返し、日本の大麻取締法では大麻草の茎と種以外は違法で、花や葉を原料に含む商品は輸入できないことを伝えました。先方のメーカーは大丈夫だと請け合い、サンプルとしてCBD軟膏やCBDボディオイルなどを送ってくれました。が、その貨物は税関で止められました。そして薬事法に抵触しないか厚労省に確認するよう求められ、メーカーから成分の分析表と製造工程表を取り寄せて確認したところ、精神作用のあるTHCは入っていないものの、原料に大麻の葉が使われていることが分かり、大麻取締法に抵触するので輸入することができず、所有権放棄せざるを得ませんでした。
先方のメーカーは意味が分からないようでした。精神作用のある成分、THCはほとんどまったく入っていない軟膏やボディオイルなのです。何が問題なのか知らせてくれと、何度もそのメーカーからは問い合わせがありました。理解に苦しむ、といったところでしょう。
日本と取り引きしたいようでしたが、そのメーカーからは輸入できないことになりました。
この出来事も、大麻取締法によって日本が世界の現実から取り残され、経済活動の領域においても大きな損失を被っていることを端的に示しているでしょう。
日本は、大麻についての政策を科学的事実に立脚したものに見直すよう、経済的な側面からも求められているのです。
6.おわりに
もとを質せば、大麻取締法は先の戦争に負けたことに起因する法律です。大麻取締法に限らず、日本が抱える多くの問題は、未だにアメリカの強い影響下にあることに由来するようにも思えます。
そのアメリカでは、大麻についての政策が大きく流れを変えています。この件についても多くの書証を出しましたので多言しませんが、一言で言うなら、「大麻は弾圧から合法的換金作物へ」という流れです。
このようなアメリカの流れを見て、合法化運動なんかしなくても、放っておいてもそのうち日本も合法になるさ、といった楽観論を聞くことがあります。しかしそれはつまり、またしてもアメリカの言いなりになるということです。それは楽観論というより、奴隷根性と評したほうが正確かもしれません。
私は、日本のマーケットを狙う外国資本が、日本の大麻市場を席巻し、制度までも外国資本の都合のいいように設計されてしまう前に、日本自身としてこの問題を解決したいと考える者です。
大麻で捕まってこうして裁判にかけられている今も、愛する人の治療目的で大麻を使ってみたい、という相談のメールや電話が私に届きます。残念ながら、その希望に応えることが今はできませんが、実際に大麻で末期がんの疼痛を和らげたり、気持ちを上に向かせるために使っている人たちを知っています。法廷で再生されたVICE JAPANの動画に出演していたPOPさんもその1人です。
彼女は、末期の大腸癌と向き合い、病院で処方された麻薬のほか、大麻を使うことを選択しました。そして、日本社会に蔓延る大麻についての偏見と誤解を少しでも解消する役に立つならと、逮捕の可能性もあるのに、動画に出演し、愛用のボング(大麻用水パイプ)でボコボコと吸って見せたのです。おそらく、病人が日本国内でここまであからさまに大麻を吸って見せたのは初めてではないでしょうか。
医療大麻裁判の役に立つならと、私の裁判への寄付や、桂川さん裁判の着手金を提供してくれた、今は緩和ケア病棟で療養するPOPさんに、こころから、格別の感謝と敬意を表します。
2003年事件の桂川裁判で、弁護士は弁論で次のように述べました。
『市民的不服従の権利
抵抗権は、実力を伴う闘争であるが、市民的不服従は、法違反行為でありながら非実力的・非暴力的なところに特色があり、抵抗権より、より現実的で具体的な意義を持つと言われている。
すなわち、憲法12条の保障する市民的不服従ないし市民的不服従の権利は、立憲主義憲法秩序を一般的に受容した上で、異議申立の表現手段として法違反行為を伴うが、それは、「悪法」を是正しようとする良心的な非暴力的行為によるものであるところに特徴があり、そのような真摯な行為の結果、「悪法」が国会において廃止されたり、裁判所によって違憲とされて決着をみることがあり得、そのことを通じて、法違反行為を伴いながらかえって立憲主義憲法秩序を堅固なものとする役割を果たし得る。正常な憲法秩序下にあって個別的な違憲の国家行為を是正し、抵抗権を行使しなければならない究極の状況に立ち至ることを阻止するものとして注目されている。』
私は、今回の事件において、起訴事実は認めますが、大麻取締法がおかしいのだという考えに、何の変わりもありません。
大麻取締法は、憲法無視の事実上の弾道ミサイルのような総理大臣が仕切る放射能まみれの日本社会で、ほんのひととき寛ぐ自由を奪うものであり、病人から命をつなぐ薬を奪うものであり、極めて反国民的な悪法であると私は認識しています。
1日も早く、嗜好品として、薬草として、誰もが安心して大麻を選択できる日本社会になることを願い、裁判長には、ぜひ、大麻の科学的事実と世界の現実を直視した判決をお示し下さいますようお願い申し上げ、私の陳述を終わりにします。
ありがとうございました。
以上
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