第13回公判 判決

投稿日時 2016-03-17 | カテゴリ: 白坂裁判

平成28年3月17日宣告 裁判所書記官 高橋 剛弘
平成25年(わ)第149号 大麻取締法違反被告事件

判決

被告人
氏名 白坂 和彦
生年月日 昭和37年5月4日
本籍 埼玉県上尾市■■■■■
住居 本籍地に同じ
職業 会社代表者

検察官 高橋 朋
弁護人 細江 智洋(私選)

主文
被告人を懲役1年6月に処する。
この裁判確定の日から4年間その刑の執行を猶予する。
長野地方検察庁松本支部で保管中の各大麻(平成25年領第234号符号1の1(種子を除く。)
同年領第236号符号6を没収する。

理由

[犯罪事実]
被告人は,みだりに,平成25年9月29日,長野県安曇野市穂高有明2257番地36所在の当時の被告人方において,大麻である植物片約4.979g(平成25年領第234号符号1の1(種子を除く。)は鑑定後の残量)及び大麻草約13. 4g(茎の重量を含む。同年領第236号符号6は鑑定後の残量)を所持した。

[証拠]
以下,後記「争点の判断」を含め,括弧内の甲乙の数字は,証拠等関係カードの検察官請求番号を示す。
被告人の公判供述
証人太田昌範,同岩下竜也,同宮坂雄一郎,同関浩太郎,同矢島慶二,岡山田佳照,同高橋直樹,同湯本弥助,同新海宏樹の各公判供述
差押調書(甲3),各捜査報告書(甲4,21),捜索差押調書(甲8)
各鑑定嘱託書謄本(甲5,19),各鑑定書(甲6,20)
捜査関係事項照会回答(甲7)

[争点の判断]
以下において,当裁判所が争点ごとの事実の認定,証拠の評価ないし法的判断を示すに当たっては,個別に証拠(括弧内の弁の数字は証拠等関係カードの弁護人請求番号を示す。)を付記(ただし,関連する尋問及び供述等の証拠を全て網羅する趣旨ではない。)しない限り,本件の関係証拠に従っている。

第1 違法収集証拠について

1 前提事実
前掲各鑑定書の鑑定結果は,松本簡易裁判所から発付された捜索差押許可状に基づいて実施された被告人方の捜索差押手続によって押収されたポリバケツ入り大麻(平成25年領第236号符号6)と,同捜索差押えの際に箱入り大麻が発見され,その手続の途中に帰宅した被告人を同大麻所持の事実で現行犯逮捕し,その逮捕の現場での差押え(刑訴法220条1項2号)に係る同大麻(同年領第234号符号1の1)を鑑定資料とするものである(甲36,8,16,19,21,後記山田13,33,37頁,後記宮坂20頁)。

なお,犯罪事実中の「所持」については,検察官からの釈明(第13回公判期日調書)を踏まえるど,前記捜索差押えの実施前における被告人による前記各大麻に対する事実上の占有支配の状態を対象とするものである。

2 争点の構造
ところで,検察官は,ポリバケツ入り大麻については,被告人主催のイベントの参加者である野●●●の取調べによって得られた供述調書等を疎明資料として発付された前記捜索差押許可状の実施に基づき押収されたものであるところ,同疎明資料中には弁護人の後記主張に係る被告人の取調べ等その一連の過程で得られた被告人の供述調書等は一切含まれておらず,また,箱入り大麻についても,適法に実施された捜索差押えの手続中に発見され,その所持を理由に現行犯逮捕された現場で差し押さえられたものであって,いずれも,違法収集証拠として証拠能力を否定されるべき理由はない旨主張する。

これに対し,弁護人は,①職務質問の違法,②任意同行(取調べを含む。)の違法,③違法収集証拠の点を踏まえ,被告人方で行われた一連の押収手続には,違法な身体拘束を直接利用したものとして,令状主義の精神を没却するような重大な違法があり,違法捜査抑制の見地からも,これら一連の手続によって得られた証拠物及びそれと密接不可分の関係にある証拠はいずれも証拠能力を有せず,証拠から排除すべきである旨主張する。

そこで,以下,項目(前記①~③)ごと更に弁護人の主張を補足しつつ,当裁判所の認定及び判断を示すこととする。

3 前記①(職務質問)関係
(1)弁護人は,次のとおりその主張を展開する。すなわち,被告人は,平成25年9月29日(以下特記しない限り同日付を前提とする。)午前10時過ぎ頃から午後1時過ぎまでの3時間余り,路上で警察官に取り固まれ,明確に所持品検査や任意向行について拒絶の意思を示しているにもかかわらず,現場に留め置かれた。その後も数人の警察官が取り囲んだまま現場を移動するなどし,被告人が所持品検査に応じた後も任意同行を開始した午後3時頃まで,警察官らが被告人に対して任意同行の説得を続けた。その間,午後1時半頃からやむを得ず被告人が応じた所持品検査等までは大麻が発見されず,被告人に対する大麻所持の嫌疑はなくなっていた。このように,職務質問の開始から被告人の任意同行に至るまで,約5時間にわたり被告人を現場に留め置いた行為は,任意捜査として許容される範囲を逸脱しており,違法といえる。以上が弁護人の主張要旨である。

(2)ところで,警察官山田佳照(以下,同人又は同人尋問調書を単に「山田」という。),同太田昌範(以下前同様に「太田」という。),同岩下竜也,同宮坂雄一郎(以下前同様に「宮坂」という。),同矢島慶二(以下前同様に「矢島」 という。)及び同関浩太郎(以下前同様に「関」という。)の各公判供述(いずれも,尋問全体を通じてその供述内容に無理がなく,相互に補強し合っているなど,信用性に特に疑念は残らない。)

その他関係証拠によれば,次の主な事実関係が認定可能である。すなわち,警察官らが被告人に対して職務質問を開始する段階において,被告人が長野県安曇野市所在の天平の森で開催されたイベントの主催者であり(甲10),同イベント参加者から逮捕者が出ている(甲17)事実が判明していたこと(太田4,5頁,山田2,3,5頁),同職務質問の継続中に同イベントの開催地で大麻様の植物片が発見されたこと(甲18,矢島3頁,太田14,32頁,山田8頁),被告人が停車中の自己車両の窓を閉め警察官らに聞こえないような状態で弁護士に電話をかけるなどして外部との連絡を取っていたこと(太田10,31頁,宮坂8,9頁),警察官らが被告人の前記車両の前後に殊更立ち塞がり続けるような事実はなかったこと(太田13,40頁,宮坂34頁),警察官らが路上で被告人に声をかけるなどして職務質問を開始した午前10時29分頃(太田8頁)から安曇野警察署への任意同行を始めた午後3時前頃(宮坂14頁)までに約4時間半経過していたが,その間,被告人は,帰りたい旨の意思を示したことはあったものの(太田10頁),警察官らの質問等に対して任意に応答を続け(宮坂7,8,32頁,閏4頁),一旦戻った天平の森で、の所持品検査にも任意に応じていたこと(太田19頁,宮坂12,13頁,関5頁)などが認められ,前記証人らの各公判供述に明らかに反する被告人の公判供述部分は採用の限りでない。これらの事実に照らせば,職務質問の必要性,緊急性及び相当性を肯定するに十分といえ,違法の問題は生じない。

4 前記②(任意同行・取調べ)関係
(1)弁護人は,次のとおりその主張を展開する。すなわち,捜査機関は,午後3時頃から被告人に対する任意同行を開始したが,前記のとおり違法な職務質問に続いたものである上,被告人にとって出頭を拒否することは事実上不可能であった。

そして,被告人が警察署に到着すると直ちに取調べが開始され,被告人は朝から何も食べていなかったにもかかわらず,食事もなく,1回警察官の誘導により煙草休憩に行ったほかは,被告人が取調室を退出する午後8時過ぎまで断続的に取調べが続いた。その間,被告人が煙草休憩に行く際にも非喫煙者である警察官が同行し,被告人は常時監視されていた。被告人は,午後6時頃及び午後7時頃など,繰り返し帰りたい旨申し向けたが,警察官は警察署に残るよう執ように説得し,被告人は事実上取調べを拒否することができなかった。午後8時過ぎ被告人が取調室から出ようとした左きも,警察官が出入口に立ちはだかった上,他の警察官が被告人の近くに集まるなど,被告人の自由は奪われていた。被告人が警察署の駐車場に出ると,警察車両によって被告人の車両が発進できない状態になっており,被告人がその車両に乗車しても,警察官は警察車両を移動することなく,被告人に捜索差押えに同行するよう説得を続け,被告人車両の移動を許さなかった。他方,警察署では,●村●希の取調べもされており,同人が被告人の大麻所持に関する供述をしたことから,捜査機関は被告人方の捜索差押令状を請求することとして,午後8時過ぎには同令状が警察署に届いていた。このように,違法な職務質問に続いて行われた任意向行は,その後の取調べの経過に加え,被告人に対して大麻所持の疑いを有していた捜査機関が被告人方の捜索差押えの実効性を確保するため警察署に留め置いていたことも考慮すれば,実質的には逮捕に当たり,違法である。以上が弁護人の主張要旨である。

(2)ところで,関,宮坂,山田及び矢島の各公判供述その他関係証拠によれば,次の主な事実関係が認定可能である。すなわち,安曇野警察署の所在地を知らない被告人の依頼もあって,被告人が運転する車両の前後を警察車両が走行し,途中,被告人の要望で,知人男性を同乗させて明科駅まで送ったり,コンビニエンスストアに立ち寄るなどしていること(関9,10頁,宮坂14,15頁,矢島7頁),被告人及び警察官らが午後3時38分頃安曇野警察署に到着し(宮坂17頁),関が午後3時45分頃から被告人に対する任意の取調べを開始し(関14頁),それ以降被告人から帰りたい旨の意思が示されたことはあったものの(関16,20,22,23頁,山田10頁),関の説得に応じる形で,最終的な終了時刻が午後8時まで延長され(関17,21頁),午後8時12分頃に取調べが終了した(関24頁,山田9,10頁)こと,その取調べの開始から終了までの約4時間半の聞に被告人の供述調書が2通作成されている(山田I3頁)ところ,同調書には大麻報道センタや被告人主催の開催イベントの内容等の記載がある(乙2,3,関17~20頁)上,被告人はその内容を確認して同調書末尾に署名指印した(関22頁)こと,取調べ終了後,被告人が席を立って退室しようとした際,対面で着席していた関もその席を立って被告人に近づき,被告人の正面に立ってその退室を塞いだと指摘されても仕方のないような状況下で,「待って」などと説得したものの,被告人が退室したこと(関42,51,52, 54,58頁)などが認められる。

(3) この点,被告人は,公判廷で,「2通目の調書の署名指印後,警察官が,この調書をもう一度読むようなことを言い始め,明らかに時間を延ばそうというのが見え見えだったので,席を立った。すると,警察官が前に立ちはだかり,机と壁の幅は40cmくらいなので,完全に進路を塞ぐ状況となった。警察官が立ち上がって立ちはだかった時間は2分くらい。退室の直前に,ガサ状が出ているので立ち会えという話になったため,本当に頭にきて,ふざけやがって,はめやがってというふうに罵倒しながら,どけっと言って,出た。」旨供述する(被告人供述調書(第9回)19,21,42,45頁)。しかし,その公判供述のうち,関の公判供述に明白に反する部分については採用の限りでない。もっとも,取調室全体における被告人退室直前の二人の占有状況などについての関及び被告人の各公判供述(関53頁,被告人前記調書16,17,20,21頁)を対比して鑑みるに,被告人の同供述部分を排斥するのは無理といえる。

(4)以上の諸点に加え,既に示した認定及び判断をも考慮に入れると,警察署への任意同行やそれに引き続いて行われた取調べに関して違法の問題は生じないというべきである。取調べ終了後,被告人がその退室前に聞と前記状況下にあったとしても,被告人の行動に対する制限の程度は違法というほどのものではなく,この点は前記結論を左右しない。

5 前記③(違法収集証拠)関係
(1)弁護人は,次のとおりその主張を展開する。すなわち,捜査機関が午前10時過ぎから被告人方の捜索を開始する午後9時近くまでの約10時間以上にわたって違法に被告人の身体を拘束したのは,逮捕要件を満たさない被告人を逮捕するために,被告人方より大麻を発見するまで被告人を警察官の監視下に置き,被告人方の捜索差押えの実効性を確保することが目的であったといえる。以上が弁護人の主張要旨である。

(2)ところで,関,山田及び宮坂の各公判供述その他関係証拠によれば,次の主な事実関係が認定可能である。すなわち,警察官らが何度も被告人に対して被告人方の捜索差押えに立ち会うよう説得する中,被告人が捜索差押許可状があるならば本物を見たい旨告げたため,当時既に同許可状を持って被告人方に向かっていた警察官らの警察車両を安曇野警察署に引き返させて被告人に同許可状を見せるなどしたものの,結局被告人はその説得に応ずることなく午後8時55分頃同警察署を退去したこと(関24,25,28頁,山田35頁),警察官らは消防署職員立会の下で午後9時17分頃被告人方の捜索差押えを開始し,午後9時28分頃箱入り大麻を発見した上,その頃ポリバケツ入り大麻を差し押さえるなどしたこと(甲3,4,8,山田37頁),警察官らが同捜索差押えの実施中の午後11時45分頃帰宅した被告人に対して前記許可状を示し,被告人はその後の執行に立ち会った上,箱入り大麻の所持事実で翌30日午前1時19分頃現行犯逮捕され,同大麻がその逮捕の現場で差し押さえられたこと(甲3,4,8,関29頁,宮坂20頁)などが認められる。

以上の事実に加え,前示の認定及び判断をも併せ考慮すれば,例えば,捜査機関において被告人方での捜索差押えの実効性を確保するため被告人の取調べを継続し殊更被告人を排除してその捜索差押えを実施しようとする意図ないし事情があったとの疑いは特に残らないなど,被告人の取調べ後の被告人方への捜索差押えという一連の過程において弁護人が指摘するような違法の問題は生じないというべきである。

6 帰結

以上によれば,弁護人の前記主張はいずれも理由がないことに帰する。

第2 大麻取締法の違憲性について

弁護人は,大麻の医療利用(医療大麻)を一切禁止し,その所持等を制限する大麻取締法(以下「本法」という。)24条の2第1項(以下「本件罰条」という。)は憲法規定(13条,14条1項,25条,31条及び36条)に違反し無効であるなどと主張する。すなわち,その主張は,①大麻を所持等することは愚者の権利ないしライフスタイルに関わる個人の自己決定権の行使であり,幸福追求権(憲法13条後段),生存権(同法25条)として保障されるところ,大麻使用による有害作用は他の医薬品に許容される範囲内におさまる程度であり,多くの難病に有用なことが明らかである上,向精神薬や麻薬に指定されている薬物は医師の処方が認められ,所持が許されているのに対し,医療大麻の所持等を一切禁止する本件罰条は,他の医薬品に対する規制と比較して過度な規制であること,また,大麻使用による有害作用は他のし好品であるニコチン,アルコールと比較して特段高いものではなく,日常生活において有害とは認められない以上,国民の保健衛生の向上と社会の安全保持という規制目的と懲役刑をもって規制する本件罰条との聞には実質的な関連性がなく,憲法13条,25条に反する,②向精神薬,麻薬等は指定を受ければ施用のための所持等が認められているのに,医療利用目的で大麻を所持等した者に懲役刑を科すことは差別的取扱いである上,アルコール,煙草はいずれも人体に影響を及ぼす物質であるのに,大麻の場合のみ合理的根拠なくその所持等を規制するのは,憲法14条1項に反する,③大麻の有害性は他の医薬品に許容される範囲内におさまる程度であって,その有害性(弁31・DVD一R参照)が公知の事実であったとしても,薬理作用そのものないし使用者本人への有害作用(自傷行為)にとどまるから,大麻の自己使用目的,医療利用目的での所持等に懲役刑を科す本件罰条は,罪刑の均衡を失するもので著しく不合理であり,憲法31条,36条に反する,というものである。

2 しかしながら,程度の高低はともかくとして,大麻が一定の精神薬理的作用を有しそれが人体に有害なものであることは公知の事実といえ,弁護人もその有害性が低いとの限度でこれを認めている。そして,大麻の有害性を前提に,それが個人のみならず社会全体の保健衛生に影響する危険性を否定することができない以上,これを公共の利益の見地から規制することは十分に合理的であり,どの範囲で法的規制を加え,どのような刑罰をもって臨むかは立法政策の問題といえる。本件罰条についてみると,その法定刑は1月以上5年以下の懲役であり,選択刑として罰金刑が規定されていないものの,懲役刑の下限は1月で,その刑期の幅が広く,理論上は酌量減軽も可能な上,執行猶予制度も存在することからすれば,罰金刑を選択できないからといって立法における裁量の限界を逸脱しているということはできず,憲法13条,25条,31条及び36条に違反するものではない。さらに,アルコール飲料や煙草と大麻とでは,それらの心身に及ぼす影響が異なるため,有害性の程度を単純に比較するのは困難である上,アルコール飲料や煙草は,古くからその社会的効用が認められ,広く国民一般に受け入れられてきたものであり,その摂取の心身に及ぼす影響についても周知され,大麻の場合とは事情を異にすることに照らせば,各規制の内容が異なる点を捉えて不合理な差別であるとはいえず,また,向精神薬や麻薬等と比べてその規制内容が異なる点についても立法裁量の範囲内というべきであるから,憲法14条に違反しない。

3 以上に対し,弁護人は,大麻の有害性や有用性の研究が進み,諸外国も次第に規制を廃止又は緩和し,大麻の医療利用を認めているなどと種々指摘するけれども,本法制定に係る立法事実が海外における科学的研究の進展や社会的現実の変化によって本件罰条の違憲性を疑うべきほどに変容しているともいえないなど,いずれも,当裁判所の前記合憲性判断を妨げるものではない。

なお,弁護人は,大麻の栽培等を制限する本法24条1項,大麻から製造された医薬品の施用等の禁止を定めた本法4条1項2号及び3号並びに大麻取扱者以外の者の所持等を禁止する本法3条1項(各禁止行為の罰則規定は本法24条の3第1項1号及び2号)の違憲性にも触れるが,その違憲主張の適格性や,その条項各号と本件罰条との関係性(密接不可分か否かなど)といった諸点を度外視しでも,前同様に,国民の保健衛生の向上と社会の安全保持の見地からみて,当該規制が立法裁量の限界を逸脱しているとはいえない。

4 結局,弁護人の前記違憲主張は当裁判所と見解を異にしており,是認することができない。

[法令の適用]
罰条 包括して本法24条の2第1項
刑の執行 刑法25条1項
没収 本法24条の5第1項本文

[量刑の理由]
犯行態様は判示(犯罪事実)のとおりであるほか,被告人は,平成16年7月確定に係る同種事犯の執行猶予判決(懲役3年,5年間執行猶予)を受けているのに,格別酌むべき事情もなく,判示犯行に及んでおり,その刑事責任を軽視することは到底できない。
もっとも,被告人の行為の客観的な重さや意思決定への刑罰的非難の程度,更には被告人のように比較的古い前科しかない点も踏まえた同種事犯の量刑傾向を考慮に入れると,直ちに被告人に施設内処遇を受けさせる必要があるとはいえない。

そこで,以上に加え,被告人が,捜査及び公判を通じて心情の変化は特にみられないものの,保釈許可によって釈放されるまで身柄を拘束されたこと,捜査当初の職務質問,所持品検査,警察署への同行及び取調べという長時間にわたる一連の手続に任意に協力したことなども勘案の上,主文の刑期及び猶予期聞が相当であるとの結論に至った。
(検察側求刑:懲役1年6月,主文同旨の没収,弁護側科刑意見.予備的に付執行猶予)

平成28年3月17日
長野地方裁判所松本支部

裁判官 本間 敏広






大麻報道センターにて更に多くのニュース記事をよむことができます
http://asayake.jp

このニュース記事が掲載されているURL:
http://asayake.jp/modules/report/index.php?page=article&storyid=3571