大麻規制「厳し過ぎる」裁判官異例の見解

投稿日時 2004-05-31 | カテゴリ: ニュース速報

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※書き起こし文中の「**」は伏せ字にした箇所です。

大麻規制「厳し過ぎる」 裁判官 異例の見解
地裁伊那支部―「立法論 再検討の余地」

長野毎日新聞 1987年(昭和62年)5月31日


 大麻を知人に譲り渡した被告が「大麻取締法は憲法に違反して無効」などと主張して争っていた裁判の判決公判が31日、長野地裁伊那支部で開かれ、平湯真人裁判官は懲役十月の求刑に対し、懲役三月執行猶予二年の判決を言い渡した。判決の中で、平湯裁判官は大麻取締法は合憲としながらも「アルコールやタバコに比べ大麻の規制は著しく厳しい」とし、また、少量、私的使用の場合の懲役刑についても「立法論としては再検討の余地がある」と異例の見解を示した。大麻の害の程度については一部で議論があるが、検察側は「立法にまで踏み込んだ判決は厳しい」と受け止めるなど、反響を呼びそうだ。

知人に譲り渡した被告 執行猶予の判決

 裁判は、**が、昭和56年11月初旬ころ、伊那市内の知人に大麻草 約20グラムを郵送し無償で譲り渡したとして、麻薬取締法違反に問われた事件。60年3月から地裁、伊那支部で公判を続けていた。

 被告弁護側は―大麻の吸引は生理的にも社会的にも無害、個人の自由を制限し刑罰を科すには具体的社会被害が明確でなければならない、タバコ・酒に比べ害が小さいのに重い刑罰は不合理―などとし、憲法13条(個人の尊重と公共の福祉)、14条(法の下の平等)、18条(奴隷的拘束、苦役からの自由)、19条(思想、良心の自由)、20条(信教の自由)、21条(表現の自由)、31条(法廷手続きの保障)、36条(残虐な刑罰の禁止)に違反し、無効であると主張していた。

 判決で平湯裁判官は「大麻が社会生活の場で使用されると社会生活上一定の障害が生じたり、多量、長期的に使用された場合は、種々の障害を生じ、あるいは生ずる恐れがある」として有害を認めた。

 その上で、同法の違憲問題について、私的使用の場合でも、プライバシーと公共の福祉の両面から検討して、公共の福祉が優先、刑事罰はやむを得ない選択として合憲の判決を示した。

 しかし、一方で「少量の大麻を私的な休息の場で使用し、その影響が社会生活上支障を生じなかったような場合にまで、懲役刑をもって臨むことはどれほどの合理性があるかは疑問なしとせず、立法論としては再検討の余地」があり、「アルコールやニコチンタバコに比べて、大麻の規制は著しく厳しい」などの考え方も示した。

 これらの判断や違法性の認識が弱かったこと、前科がない―などから懲役三月、執行猶予二年とした。

 判決について被告や被告側弁護士は「かなり踏み込んだ判決。こうした判決を機に、大麻の有害性について厚生省などがもっと調べて欲しい」などと話している。

 この判決に対し、担当の藤井俊雄検事は「立法論にも触れた厳しい判決。量刑はかなり軽いと感じているが、対応は本庁とも検討して考えたい」と話している。

【補足】
伊那支部裁判について:

 この裁判は、大麻問題の専門家である丸井 英弘弁護士が受任されたものです。昭和61年9月10日に開かれた第10回公判では、大麻取締法の立法目的・理由について、当時の厚生省麻薬課長への証人尋問が行われました。戦後の大麻取締法の制定当時の経緯から、国民の保健衛生上の間題やそれを調査した事実もなかったことなど、詳細な証言がなされたことは画期的でした。

 公判速記録は丸井氏と中山 康直氏の共著「地球維新2」に全文が収録されています。この問題に関心のある方には必読の書です。

丸井弁護士を中心とした麻の研究グループのサイト
「麻と人類文化」 http://www.asahi-net.or.jp/~IS2H-MRI/






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