被告人による控訴趣意書

投稿日時 2016-06-14 | カテゴリ: 白坂裁判

被告人本人の控訴趣意書を書きました。明日送付します。控訴審期日の日程はまだ決まっていません。



平成28年6月14日

東京高等裁判所第11刑事部 御中
平成28年(う)第723号 大麻取締法違反被告事件

被告人 白坂 和彦

控訴趣意書

長野地方裁判所松本支部で一審判決が言い渡されたとき、私は、キツネにつままれたような、タヌキに化かされたような、異界の森に迷い込んで言葉の通じない動物から意味不明の糾弾を受けているような、見当識を失うような、そんな気分になりました。ここはどこ? 何言ってるの?

私は、証言台の前に立ち、静かに判決を聴いていました。言い渡しを終え、判事席の後ろの大きな扉の向こうに消える黒い法服の裁判官が、何か慌てて逃げる魔界からの使者のように私には感じられました。

私は、学術論文を含む数々の書証によって、大麻には懲役刑を科して規制するほどの有害性・危険性はないこと、敗戦後、日本に大麻規制を強要した米国や、その他の国々における大麻に関する現在の社会的現実なども示しました。

弁護側が提起した論点は、大麻の有害性の程度であり、その有害性の程度が懲役刑に値するかどうか、医療使用を一切禁止すべきほどに有害なのかどうかです。

ところが、判決は、「しかしながら,程度の高低はともかくとして,大麻が一定の精神薬理的作用を有しそれが人体に有害なものであることは公知の事実」であると、卓袱台をひっくり返すような、いったい今までの審理は何だったのかと、腰が抜けるような、吉本新喜劇のギャグとしか思えないようなことを言うのです。

いくらなんでも「程度の高低はともかくとして」はないでしょう。それこそを延々と問うてきたのです。私は証言台の前でコケようかと思いました。

そもそも、薬物の規制は、個人や社会に与える悪影響、有害性や危険性の「程度の高低」こそが問題の核心であり、その有害性や危険性の「程度の高低」によってこそ、規制内容が定められるべきでしょう。一審判決は本末転倒です。

こうして本件裁判を続けているあいだにも、米国ではすでに26州が医療大麻を合法化しています。ついに過半数の州を超えました。

ところが、日本では大麻取締法第4条の規定によって、大麻の臨床研究すらできないのです。海外では大麻の科学的な研究が進み、大麻規制がもともと緩い欧州諸国はもとより、北米でも中南米でも医療と嗜好の大麻合法化の動きが加速しています。

大麻取締法を合憲とした昭和60年の最高裁決定が認めた大麻の有害性は、現在では科学的に否定されていること、むしろ海外では臨床を含む数々の研究によって大麻の治療効果が明らかになっており、癌の疼痛緩和などを目的として病院で入院患者が大麻喫煙するイスラエルの様子など、CNNのサンジェイ・グプタ博士による医療大麻ドキュメンタリーを法廷で再生した通りです。

昭和60年の最高裁決定から31年。世紀も更新した現在では、当時の認識とは全く異なる大麻の科学的事実を示す多数の学術文献が存在し、大麻容認どころか既に一大産業と化している国際社会の現実があるなか、いつまで日本はこんな馬鹿げた大麻弾圧を続けるのでしょうか。

この裁判で問われているのは、もはや大麻の科学的事実などではありません。問われているのは、科学的事実を前提としないカビの生えた判例を裁判所はいつまで踏襲し続けるのか、という日本の司法の健全性です。それはつまり、日本の三権分立が改めて問われているのであり、個々の裁判官の良心が問われているのです。本間さんは残念でした。

大麻の科学的事実をまったく検証せず、大麻の有害性の程度について判断を回避した一審判決にはまったく納得できません。

控訴審において、大麻の科学的事実を検証し、現行の罰則規定が妥当であると言えるのか、第4条で医療的な使用すら例外なく禁じているのは憲法違反ではないか、という点について審理するよう求めます。

証拠として提出し、法廷で再生されたVICEのビデオに登場した末期癌のPOPさんが2月に亡くなりました。彼女は、良質の生大麻ジュースを摂取することで、昨秋には腫瘍マーカーが7000代から3000代にまで下がりましたが、副作用もないその良薬を入手し続けることができなかったようです。

POPさんを殺したのは大麻取締法であり、このようなデタラメな裁判を続ける三権の一翼、司法の責任でもあります。

大切なことなのでもう一度言います。
大麻に問題があるのではありません。大麻取締法に問題があるのです。
問われているのは日本の司法であり、三権分立であり、民主主義であり、裁判官の良心です。

以上、控訴します。
尚、追って補充書を提出します。





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