控訴趣意書1 「総論」 弁護人 細江 智洋

投稿日時 2016-06-18 | カテゴリ: 白坂裁判

以下、弁護人提出の控訴趣意書「第1 総論」です。



平成28年(う)第723号 大麻取締法違反被告事件

控訴趣意書

平成28年6月17日

東京高等裁判所第11刑事部 御中

被告人 白坂 和彦
弁護人 細江 智洋

上記被告人に対する大麻取締法違反被告事件について,控訴の趣意は以下の通りである。

第1 総論
 原判決には,公知の事実であるという大麻が有する「一定の精神薬理的作用」がどのようなものであるかを説明していない点,大麻の有害性が公知の事実であるとしている点,大麻の具体的な有害性を説明せずに,大麻に少しでも有害性があれば大麻が社会全体の保健衛生に影響する危険性を有すると判断している点,原判決が大麻の一定の精神薬理的作用を公知の事実としており,これを前提とすると大麻の具体的な有害性が不明であって,アルコール飲料やタバコと比較して心身に及ぼす影響が異なることが認定できない点,及び仮に大麻の有害性が公知の事実であるならば,それとアルコールや煙草の有害性の比較が困難であるとしている点において理由不備がある(刑事訴訟法378条4号)。

 また,原判決が,大麻の有害性を公知の事実とした点,大麻の有害性を前提に,個人のみならず社会全体の保健衛生に影響する危険性を否定できないとした点,アルコール飲料や煙草と大麻では有害性の程度を単純に比較するのは困難であるとした点,アルコール飲料や煙草は,古くからその社会的効用が認められ,広く国民一般に受け入れられてきたものであり,その摂取の心身に及ぼす影響についても周知され,大麻の場合とは事情を異にするとした点,本法制定に係る立法事実が海外における科学的研究の進展や社会的現実の変化によって本件罰条の違憲性を疑うべきほどに変容しているともいえないとした点,医療目的の大麻について国民の保健衛生の向上と社会の安全保持の見地からみて,当該規制が立法裁量の限界を逸脱しているとはいえないとした点について,事実の誤認があってその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかである(刑事訴訟法382条)。

 さらに,仮に原判決に理由不備,事実誤認が存在しないとしても,原判決が大麻の有害性の程度を問題としていない点,大麻取締法24条の2第1項に罰金刑がないからといって立法における裁量の限界は逸脱していないとした点において法令の適用を誤っており,判決に影響を及ぼすことが明らかである(刑事訴訟法380条)。

 これらの理由により,原判決は破棄を免れないものであり,大麻の有害性の程度及び医療大麻の有用性からすれば,医療大麻を一切禁止し,その栽培,所持を制限する大麻取締法4条1項2号3号,24条1項,24条の2第1項は,憲法13条,14条1項,25条,31条,36条に反し無効である。

 また,大麻の有害性の程度からすれば,大麻喫煙を目的とする大麻の所持,栽培を制限する大麻取締法3条1項,24条1項,24条の2第1項は,憲法13条,14条1項,25条,31条,36条に反し無効である。
 したがって,無罪判決を自判されるべきである。





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