週刊文春 12月8日号 米国人講師、林業経営者 大麻集落22人のプロフィール

投稿日時 2016-12-12 | カテゴリ: 今週のマスコミよかった大賞

サル・パラダイス

週刊文春【今週のマスコミよかった大賞】
週刊文春 12月8日号
米国人講師、林業経営者・・・
大麻集落22人のプロフィール

髙樹沙耶さんの逮捕によって、マスコミの久々の大麻報道ラッシュで、11月からずっといろんな雑誌のいろんな人の記事をみて、考えて、こういろいろ書いてきました。 そんななかで、こういった大麻による逮捕劇がおこると、この事件はもはや誰が加害者で、だれが被害者の事件なのかわからなくなりました。

この記事、僕なりの解釈で、ただなるべく客観的に書きますので、皆さん、誰が真の被害者なのか感じでください。


長野県池田町は、北アルプスを望む自然に囲まれた美しい土地でした。しかし、ここでも日本の田舎がかかえる人口減少、限界集落といった問題が起こっておりました。

ひふみ林業の社長、村松一彦(56)は、この地を愛し、仕事がないばかりにここから若者が皆去っていくことに心痛めていました。彼もかつてこの地への移住者でしたが、地区の信頼厚く、防犯長としてこの地に欠かせない存在となっておりました。 彼はいつも思っていました。このような美しい場所で、日々の生活を一生懸命やって普通に過ごしていくことがなぜかなわないのか。そう生きることが、人間の本当の幸せなのではないか。 妻や5人の子供も、おそらく同じ思いを抱いてくれている。

最近、そんな村松と意志を同じくする人々がこの地に集まってきていました。彼らには、なんとか最低暮らしていける林業の仕事をまわしたりして、助け合っていこうと思っていました。 仕事が終わると、彼らは北アルプスの神々しい姿が見える庭に集まって、この地で取れた大麻を吸って、ハイになり、自然の美しさ、めぐみ、仲間との友情、愛を感じて、楽しく語り合い、歌い、笑い合って過ごしていました。

荒田裕(48)、衣笠秀喜(48)、ジャクソン・マイケル・ディビッド(47)、西河博文(48)夫妻、後藤聡(46)夫妻、今塚裕明(64)らはそうして、生きる喜びに満たされて暮らしていました。

ジャクソンはこの池田町の限界集落に移住し、数年前まで英語教師をしていました。 西河夫妻は、オーガニックコットンの衣料品を扱う会社を経営していました。 今塚氏は、この地区の移住者の先駆けで、この地で大麻を含めた自然に根差したヒッピー生活を夢見ていました。そんな村をよくするためにと村長に立候補したこともありました。

彼らはこのすばらしい生活を守るため、村でトラブルを起こしたり、村人に迷惑をかけるようなことは絶対しないとしていたし、なるべく地元に溶け込むよう努力し、村のためになる仕事に積極的に参加することを心がけていました。 事実、村人たちの彼らに対する評判はよく、彼らのことは班の草取りやドブ掃除にも積極的に参加していた穏やかな人々という感じでみていました。後藤聡は、大町市の市営住宅の副地区長を務めていました。

彼らの関心は、企画している山の中での音楽イベントのこと、ネイティブアメリカンを招いて、たき火を囲み歌や踊りを夜通し繰り広げるものでした。 この世の土地や自然を所有物としない、自分の肉体をも天からの借りものとして、この世の喜びにつながって感謝するその姿勢は、大麻を吸った時に感じるラブ&ピースそのものに感じました。

そんな時、あの事件が起こったのです。静かな村は麻薬取締部の何人もの捜査官がきて、彼らは次々に逮捕されていきました。 かわいそうだったのは、村松夫婦と西河夫妻、後藤夫妻らの10人以上の子供達です。彼らは児童相談所に送られることになるのですが、逮捕されていくのを見守っていた子供の一人が、村のおじいさんに聞きました。

「お父さんやお母さんやおじさんたちはどうして逮捕されたの?誰かを殺したり、何かを盗んでいたの?」 「いや、そうじゃない、お父さんらは山で大麻を育て、それを皆で時々吸っていたんだ。」 「それがどうしていけないことなの?おじいさん、この村では昔はたくさんの大麻を育てていたって言ってたよ。」

そのおじいさんAは、5歳くらいのこんな小さな子が残されて、どこかの施設に送られていくことが不憫でたまりませんでした。はじめは、大麻を育て吸っていたということで裏切られたと思い、そこに怒りをぶつけていたのですが、施設に送られていく幼い子供らを見て、本当に怒るべき先は違うのではないかと思い始めたのです。

村長であるBも同じ思いでした。村松ら若い衆は、村のためにとそれはいやな仕事も一生懸命やってくれていたのを誰よりも知っていたからです。 なかでも苦々しく思っていたのは、麻取のリーダーらしき捜査官が先ほど言った一言でした。「何か月も前から内偵などの大変な努力を続けてきた甲斐あって、村に秩序と安心を取り戻せました。ご協力ありがとうございます。」この言葉に、Bは呆然としながらもとっさに「ごくろうさまでした。」と答えてしまった自分を悔やむような気持ちでした。

「秩序と安心を取り戻しただと、おまえらのやったことは村の破壊だ。あいつら連れてって村どうなるだ、じじいとばばあだけになってよ、せっかくあんなわけえ働き手がきてくれるようになったってのに。 マトリだかなんだかわかんねえけど、お上の都合で、昔は村の大麻産業をぶっ壊し、今度は働き手までもっていきおって、おらたちを殺す気か。」

「いやじゃー、この悪代官、おらたちの子供らを連れてくでねえだ。」 突然一人の老婆が前に飛び出してきた。村では高齢で、かなりのぼけがまわったと言われているばあさんCだ。ただ、この時は、村人みな、ばあさんがぼけているとは思わなかった。 言ってることがまともに思えた。

いったい誰が悪いんだ。 こんな光景、過去にも見たことあるぞ。 じいさんDは思っていた。べっぴんだったが、貧乏だった村の娘っこが人買いに買われて出ていく時と、戦争中に学校を出たばかりの若者3人が出兵していく時のことだ。 あの時は、お国のためだと思ってみな誇らしい気持ちでいた。だが、彼らは生きて帰ってくることはなかった。その時、はじめて国にだまされたとわかった。 悪い奴は、正義の仮面をかぶってやってくる。Dがその時学んだことだ。

じいさんAはその子に言った。

「ぼうや、おまえのお父さん、お母さん、おじさんらは悪くない。絶対悪くない。 自然で平和に暮らしている人々を逮捕して連れて行く権利なんて誰にもねえ。 そんなことを許す法律があるなら、それが間違っているに決まっている。お父さんはそれに気づいていたんだ。今や、アメリカでも大麻をもってるだけで逮捕したりはしないって聞いた。ヨーロッパでも、南米でも、オーストラリアでも。 そんなひどいことをいつまでも許していてはなんねえ。 ぼうや、かしこく強くなって、いつかこの村に戻っておいで。その時、まだ大麻で逮捕するようなやつらがやってきたら、堂々と戦って負かしてやるんだ。おまえならできる。」

じいさんAはぼうやをぎゅっと抱きしめた。その時になると、村人みなが子供らのまわりに集まって、ひとりひとりを抱きしめて、連れて行かれる子供らとの別れを涙を流しながら惜しんでいた。





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