前科は一生? ~不当判決を受けても立ち直れる~
2004/10/18
by CyberPunk (cyberpunk@taima-news.org)
先日とある国家試験の受験に際して知人から相談を受けていた時に、受験資格の消極的条件(これがある人はダメよ!というもの)の一つに「禁固刑以上を受けた者」というような一文がありました。
私の過去の有罪判決(懲役1年6月、執行猶予3年)は大麻の非犯罪化活動の糧にしてはいるものの、あまり前向きな話しではないので比較的「過去の話し」と思うようにしています。しかし、今後の生活においても一定の縛りを受ける可能性もあるのかと思ったので、これを期に勉強をしてみたところ、当事者でありながら知らなかった事が実に多かったです。
そもそも前科とは何か?執行猶予とは?禁固刑以上の刑を一度でも受けたら一生特定の社会的拘束を受けるのか?禁固刑以上になったが執行猶予になった場合も禁固刑以上の者になるのか?といった事を調べてみました。
まず、前科という言葉自体は様々な意味合いがあるようで、それぞれかなりニュアンスが違うようです。一般的に前科というと、一度でも有罪判決を受けていれば執行猶予の有無に関わらず、永遠に「前科」となるように思われているようで、かつ社会的に見た場合にはその通りなのかも知れません。
しかし、もう少し法律寄りの解釈をすれば、前科というのは例えば犯罪者名簿に記されている人、という事になるようです。ここからは少し細かい話しになるようです。
例えば執行猶予付きの懲役刑を受けた時、犯罪者名簿に名前が載ります。不幸にして泣く子も黙る前科者となってしまいます。しかし、例えば3年間の執行猶予が終わったらどうなるのか?実は、執行猶予中に何かの罪で再度有罪判決を受けて罰金刑でも受ければ前科者のままですが、無事トラブルも起こさずに過ごせればその時点で前科者ではなくなります。
刑法で見ると、どうやら執行猶予が終わった時点で、先に下された有罪判決そのものが「なかったことに」なるそうです。そう、まったく裁かれなかった、罪を犯さなかったのと同じ状況になるという事です。犯罪者名簿からも名前はなくなるわけです。
名前がなくなると何が嬉しいのか。すぐに思いつくあたりでは上記資格取得のための受験資格にあった「禁固刑以上の~」という部分を気にする必要がなくなる事。刑の言い渡しそのものが「なかった事」となる以上は、法的にはキレイな身になったという事です。また、履歴書の「賞罰」について「なし」と応えてもウソにはならないのです。堂々と、何も臆することなく「賞罰なし」と書けます。
ちょっと気になるのは、懲役刑よりも低いレベルとされる罰金刑ですが、こちらは執行猶予はないかと思います。罰金刑を下された場合、身柄を拘束される事はありませんが、罰金を支払う必要性は出てきます。そしてこの「罰金」は立派な「罰」ですし執行猶予がないためにすぐには「なかった事」にはならない事です。資格取得等では「禁固刑以上~」という規定が大半であるためこちらはそもそも問題はなさそうですが、厳密に言った場合、履歴書の「賞罰」に「なし」と書いた場合は問題があります。
では、執行猶予の付かなかった禁固刑/懲役刑と罰金刑の場合は一生前科者になるのかというと、これも少し違うようです。刑期満了の日から禁固刑以上で10年、罰金刑が5年で消滅するそうです。この期間中に再度何かの罪で有罪判決を受けない限りは、法的にはクリーンになれます。
色々な噂もあり、検察や警察で犯歴を永久にもっているため、結局のところ「迫害」は生きてる間ずっと続く、と。しかし、こちらも調べてみたところ、文書管理規定で上記と同じく禁固刑以上で10年、罰金刑で5年を過ぎたらその文書の保管をしてはならないそうです。※注
そうは言っても悪い噂というのは中々消えないので世間的な「前科」は残念ながら残るかもしれませんが、少なくとも法的に見て前科というものは、永遠の傷ではない。自分の将来をやり直せる部分も存在する事が救いにはなる人もいるかと思いますのでご参考にしていただければと思います。
※注:免許証の照会で出てくるのもこの情報と思われますが、運転免許証の情報管理規定がどうなっているかまでは調べ切れませんでした。
http://www.TAIMA-NEWS.org/
-------------------------------------------
以上、CyberPunkさんのレポートでした。
「禁固刑」と言えば、大麻取締法にも次のような規定がありますね。
大麻取締法第5条(免許)
2 左の各号の一に該当する者には、大麻取扱者免許を与えない。
一 麻薬、大麻又はあへんの中毒者
二 禁錮以上の刑に処せられた者
三 禁治産者、準禁治産者又は未成年者
禁固以上の刑に処せられた者は大麻免許を取ることができません。でも、刑期満了から10年経てば、それもOKになるのでしょうかね?
弁当持ち(執行猶予中)のご同輩、何にせよ、禁固刑にならないように気をつけましょう。
|