テレビでNHKのニュースを見ていたら、「容疑者の調書 全ページ署名へ」という項目が流れた。ネットでも見ることができる。
NHKニュース 容疑者の調書 全ページ署名へ 7月23日 5時59分
再来年の平成21年に導入される裁判員制度では、一般の市民が裁判員として刑事裁判に参加し、裁判官とともに判決を出すため、事件をわかりやすく立証することが求められます。このため、全国の警察では、容疑者の供述調書の取り方を変えることになりました。裁判員に対し、容疑者が自分の意志で任意に供述したことをわかりやすく示すため、これまでは調書の最後のページにだけ求めていた容疑者の署名か押印を、調書のすべてのページに求めることになりました。また、調書の内容についても、理解しやすいよう表現をくふうするほか、事件現場の状況を調べる書類には説明書きを付けた写真を添えることなどを徹底するということです。この制度は来月1日から全国の警察で実施されます。
まるで4コマまんがのオチである。
THCに寄せられる相談やメールのうち、昨年の夏から4件の冤罪事件があった。1件は「大麻密輸の冤罪」としてレポートしている裕美さんの例。1件は裕美さんのレポートを読んでのメールで、判決には執行猶予が付いたが自分も同じような冤罪で有罪になったというもの。あとの二人は同じ事件の共犯関係として、やはり騙されて大麻を国内に持ち込もうとして税関で捕まったもので、1人は最高裁まで争ったものの、過日、懲役3年6ヶ月の実刑が確定し、本人は8月初めの収監を待つ身となっている。同じ事件のもう1人である高藤政博さん(33歳)は現在上告中だ。
どのケースにも共通しているのは、取り調べのデタラメである。
実刑が確定して収監を待っているKさん(23才)は、取り調べの当初、持ち込んだ荷物に大麻が隠されていることなど知らなかったと供述したが、取り調べの刑事に怒鳴られ、泣き出してしまっている。言われるがままに調書が作られ、気の弱いKさんは、署名してしまった。
同じ事件で逮捕された高藤政博さん(33才)も、騙されて運び屋をやらされてしまったが、何も知らなかったのだと供述したにも係わらず、刑事はそれを調書にしなかったという。 裁判で事実を証言すれば、裁判官はちゃんと判断してくれるだろうと思い、不本意な内容の調書についても高藤さんは著名してしまったそうだ。高藤さんの裁判は、1審は6回の公判が開かれ、判決は無罪だった。しかし検察が控訴し、新しい事実や証拠があるわけでもないのに、たった一度の審理だけで判決は逆転有罪。懲役3年6ヶ月、罰金70万円。この控訴審判決は極めて杜撰で、事実認定に明白な誤りが2箇所もある。
冤罪は取調室で作られる。裁判所がその冤罪に太鼓判を押す。
供述調書が被疑者の任意で作られたか、取り調べ担当者の作為で作られたか、ビデオで撮っておけば一目瞭然だろう。やってもいないことを、刑事に怒鳴り散らされて、泣く泣く認めてしまったのか。やっていないと供述しているのに調書が作られなかったのか。「容疑者が自分の意志で任意に供述したことをわかりやすく示すため」には、取り調べの全てをビデオに撮り、弁護士や裁判員がそれを見ることができるようにするしかないだろう。
調書の全ページに署名させるなど、全く何の解決にもならない。こんなことをヘーキでやる警察には呆れるばかりである。警察の知能がここまで落ちていては、数々の重大な凶悪犯罪が解決しないのも道理である。刑事に脅されて、泣く泣く全ページに署名させられる冤罪が後を絶つことはないだろう。
*高藤さんの冤罪事件についてはレポートします。
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