DAREプログラムに代表される一次、二次予防は、一般に麻薬の使用開始のメカニズムとして次の二つの要因を前提としている。それは、友人からの圧力(peer pressure)と使用者の性格的欠陥(personal deficit)である。
友達にすすめられた時にノーと言えない自己決定や自立心の欠如、また感情のコントロールができない若者が、アルコールや薬物に手を出すという使用者像である。このモデルにしたがって、予防プログラムではアルコール、タバコを含めた麻薬の使用を促すとされる身近な社会的圧力に抵抗する能力、意思決定、怒りと不安のコントロール、自尊心などを養うための生活技能訓練LST(Life Skills Training)が採用されている。
問題はLSTが前提としている、問題のある生徒が麻薬を使用するというモデルが現実の麻薬使用者のプロファイルとは大きな開きがあることである。
およそ30年に渡って全米の学生の行動調査を行っているモニタリング・ザ・フューチャー(MTF)によって2002年に行われた8年生、10年生、12年生を対象にした調査によれば、53%の生徒が何らかの非合法麻薬を経験しており、マリファナ以外の非合法麻薬も30%(1997年の数値)の生徒が経験していた[5]。
またカリフォルニアでの調査では、9年生の自己申告による数字によれば、24%の生徒がマリファナを使用したことがあると解答しているが、同じ解答者の53%が同年の生徒の半分かそれ以上がマリファナを使用していると推測している。
同様に11年生では、自己申告では45%が使用したことがあるのに対し、72%の生徒が半分かそれ以上の同年の生徒がマリファナを使用したことがあると推定している[6]。
このように非合法麻薬の使用は既にアメリカ社会では特に家庭問題や経済問題を抱えた生徒に限らず広く一般的に行われており、これを特に問題行動として認識することに予防プログラムのそもそもの問題点があると思われる。
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[5] National Institute on Drug Abuse (NIDA) & U.S. Department of Health and Human Services, Johnson, Lloyd D., O'Malley, Patrick M., Bachman, Jerald G. (2003) Monitoring the Future: National Results on Adolescent Drug Use, Overview of Key Findings, 2002, [http://www.nida.nih.gov/DrugPages/MTF.html], p.28.
[6]Austin,G., Shager, R. (1999) Eighth Biennial Statewide Survey of Drug and Alcohol Use Among California Students in Grades 7,9, and11, Sacramento,CA; Office of the Attorney General, Crime Prevention Center, p.85.
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