3-2.中毒者への治療プログラム(17)

投稿日時 2007-10-29 | カテゴリ: ハームリダクション政策

非合法麻薬の使用に際して想定される害は多岐に渡る。使用者の短期的、長期的な健康上のリスクの他、経済問題、麻薬の入手、逮捕、留置を含む法的問題、薬物の効果による労働や家庭生活の遂行能力の衰退、また社会的スティグマ化やレイベリングなどである。

また麻薬の密売行為や麻薬を入手するための盗みなどの犯罪行為は、コミュニティの安全を脅かし地域に暴力をもたらす。ハームリダクションプログラムは、これら多様な悪影響を削減させる包括的な視点から中毒者へのケアを行う。

ハームリダクションの具体的なプログラムの中心となるのは、メタドンに代表される代替物質の使用である。代替物質を使用することの最大の利点は、それらがヘロインと異なり合法的に入手が可能という点である。
ヘロインから代替物質への転換によって中毒者は非合法麻薬のマーケットに依存する必要性が基本的になくなるため、非合法麻薬を購入、使用するという違法行為、ヘロインの代金を得るための盗みなどの犯罪行為や売春から手を引くことができ、結果として取締り、裁判、留置措置への不安からの解消と、これにかかる社会的コストも同時に削減することができる。

また中毒者の健康という点では、服用式のメタドンを使用することで注射針の使用を中止させHIVやその他の感染症を防げるだけでなく、質の一定しないブラックマーケットのヘロインがしばしば引き起こすオーバードーズやカッティングによって混入された不純物による健康被害を防ぐ。

その他、完全にメタドンに移行していないヘロイン中毒者もヘロインを購入できない時に禁断症状を抑えるためこれを利用することができる。

こうしたプログラムの敷居の低さと具体的にプログラムが中毒者に対して持つインセンティブは、サービスの提供者と中毒者との間での定期的な接触と交流を持つことを可能とする。

メタドンや注射針の配付を通じて、中毒者に健康相談や他のサービスを提供でき、恒久的な離脱プログラムへの勧誘とカウンセリングへの入り口を持つことが可能となる[25]。
------
[25] Tapert, S.F., Kilmer, J.R., Quigley, L.A., Larimer, M.E., Roberts, L.J., Miller, E.T. "Harm Reduction Strategies for Illicit Substance Use and Abuse"in Marlatt, G.Alan (ed.) (1998) op.cit., pp.162-163.






大麻報道センターにて更に多くのニュース記事をよむことができます
http://asayake.jp

このニュース記事が掲載されているURL:
http://asayake.jp/modules/report/index.php?page=article&storyid=515