大麻を禁じる理由、答えられますか?

投稿日時 2007-12-17 | カテゴリ: 産経新聞の大麻報道との対話

産経新聞が大麻への偏見に満ちた提灯記事を書くことには驚かないが、もう少し考えてから書いてくれないだろうか。これがホントに新聞記者の書く文章なのか。

【法廷から】大麻を禁じる理由、答えられますか
12/16 11:04


なぜ大麻は、厳しく禁じられているのか-。そうした問いにハッキリと答えられる人は、どれだけいるのだろう。

14日、東京地裁で大麻取締法違反の罪に問われた男性被告(37)の初公判を傍聴した。

起訴状によると、被告は今年10月、都内で自家用車内に乾燥大麻と大麻樹脂計2・011グラムを所持していた。

検察官は冒頭陳述で、被告が、勤務先の社長と台湾旅行へ行く途中に大麻を売人から購入したことや、それを空港近くのホテルの駐車場でパイプを使って吸引していたことを明らかにした。

また、被告人質問で被告は、旅行先の台湾でも同行した社長と大麻だけでなく覚醒(かくせい)剤も使用していたとも供述。さらに、3~4年前から同じ売人を通じて大麻を1グラム4000円ほどで4回ほど買っていたとし、海外旅行へ行くたびに薬物に手を出していたと供述した。

検察官「なぜ大麻が禁じられているか分かりますか?」

被告「なんで…。使用した状態で車を運転したら危険だし、冷静ではいられなくなる部分があると思うので」

被告は、答えるまでに時間を要したが、妥当な答えをしたかのように思えた。が、検察官にとってその答えでは、不十分のようだった。

検察官「それだけ?」

被告「思いつくのは、それだけ」

検察官「『思いついた』って…。なぜ禁じられているのかという理由は、他には分からないということ?」

被告「はい」

検察官は、あきれた表情を浮かべていた。

被告は、大麻に手を出した動機について、「独立して経営した会社がうまくいかなくて、恥ずかしい話だが、借金もでき、そうこうするうちに離婚して精神的に病んでいた。それで薬に逃げてしまった。甘いといわれればそれまでだが…」と赤裸々に供述した。

この日、証言台に立った父親は、「もう絶対にこういうことはいけない。そして、私と交わした約束は守ろう」と息子に語りかけた。

最後に裁判官から発言の機会を与えらた被告は、「おやじが言ったように、とにかく約束を守るということを頭に置いてまじめにやっていきたい」と裁判官に誓った。

「大麻は生活意欲を減退させ、精神状態を錯乱させるだけでなく、犯罪組織の活動資金源となる。被告は末端使用者であっても、結果的に犯罪組織に加担していることになる」

検察官は論告で、日本で大麻が禁じられている理由をこう述べた。こうした答えを、被告に求めていたのだろう。

だが、意外にも、大麻で罪に問われる被告の多くは、こうした模範解答通りの答えをする者が多い。被告のように禁止理由が答えられない者は少ないのだ。

裁判官は被告に懲役8月、執行猶予3年(求刑8月)を言い渡した。初犯だという被告には、大麻が禁じられている理由を理解した上で、父との約束を果たす心意気が必要だろう。
(西尾美穂子)


西尾美穂子記者自身は「大麻が禁じられている理由」を理解しているのだろうか。
書き出しに「なぜ大麻は、厳しく禁じられているのか-。そうした問いにハッキリと答えられる人は、どれだけいるのだろう。」とあるが、あなた自身はどうなの?と問い返したい。本当にぜひ聞いてみたい。西尾記者自身が、私にもよく分からないんですけどー、と心情を吐露した作文なのだろうか。いったい何を考えているのだろう。何も考えていないのだろうか。「今日は遠足に行きました。4年3組のみんと一緒に行きました。バスに乗って行きました。太郎君が水筒のなかにジュースを入れてきたので先生に叱られました。先生は、なんで水筒にジュースを入れてきてはいけないか分かるかと、太郎君に聞きました。太郎君は、ジュースを飲むと太るからと言いました。先生は、それだけ?と聞きました。太郎君は、思いつくのはそれだけと言いました。楽しかったです。」みたいな記事だ。
西尾記者は「大麻所持-身近に迫る恐怖」という記事では、「悪いことをしたら罰が当たる」と締めくくっている。読んでるほうが赤面して下を向きたくなる。

産経は、関東学院大学ラグビー部の事件に関して、「簡単に買える大麻の種 野放し状態に批判」という記事を出しているが、大麻の種が野放しだと誰が批判しているのか読んでみると、何のことはない、捜査関係者が嘆いているという話でしかない。

大麻の種を規制することで、これまで自分で栽培していた者が、犯罪組織から買うようになり、西尾記者が傍聴した裁判の被告のように覚せい剤との接点を持つことになる。大麻取締法は所持より栽培のほうが罪が重い。自分で栽培するよりもどこかで買ったほうが罪が軽いのだ。仲間内での栽培や譲渡は芋づる逮捕になることも多いが、繁華街で外国人から買ったような場合、起訴は「所持」だけで、「譲り受け」は付かないことが多い。そのことを西尾記者はどう考えているのだろう。そんな矛盾には気付いてすらいないのだろうか。
西尾記者は、検察官が説明した、日本で大麻が禁止されている理由について、自ら確認することもせず、「こうした答えを、被告に求めていたのだろう」と、社会見学で傍聴に来たおばさんの感想文レベルで記事を書いている。

「大麻を禁じる理由、答えられますか」というタイトルの記事で、検察の説明を答えとして見せただけ。「父との約束を果たす心意気が必要だろう」という結びには、権力を監視するジャーナリズムの心意気を微塵も感じない。
相変わらず、産経である。






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