大麻取締法は憲法違反

投稿日時 2007-12-24 | カテゴリ: 野中の大麻取締法改正論

近年の信頼性のある研究によって、大麻の慢性ないし定期的使用は精神依存を引き起こすが、身体依存は引き起こさず大麻をやめても離脱症候群はまったく発生しないこと、精神依存、身体依存を引き起こすアルコールと比較した場合、有害性が高いとは言えないこと、大麻を批判する人々は有害作用に関する数多くの科学的データを引き合いに出すが、重篤な生物学的影響があるとする主張の大部分は、比較的大量の使用者、免疫学的、生殖機能についての積極的な研究においても、ほとんど立証されていないことなどが明らかになっている。
<参考資料 メルクマニュアル 第17版 日本語版 1999年米国メルク社発行>

また、英国下院科学技術特別委員会の報告書においても、大麻の有害性はアルコールやタバコよりも低いことが報告されている。
<参考資料 House of Commons Science and Technology Committee;Fifth Report of Session 2005.06

大麻の作用の多くは△9.テトラヒドロカンナビノール(△9-THC)を初めとするカンナビノイドと総称される化合物(カンナビノイドは、大麻に含まれる生理活性物質の総称で、テトラハイドロカンナビノールやカンナビダイオールなどが含まれる。これらの生理活性物質が、CB1やCB2といったカンナビノイド受容体に結合することによりさまざまな生理作用を引き起こす。その働きは近年徐々に明らかになってきており、今後、疼痛治療の分野だけではなく、精神疾患治療などへの応用が期待されている。)によるものであるが、脳や人体のほかの部分に、カンナビノイド受容体が幅広く存在していることから、医療用として幅広い可能性があり、喘息、緑内障、向鬱、食欲刺激、鎮痙などを含め、管理された研究により治癒的効果が実証されつつあり、この分野における調査は継続されるべきであること、より良い医薬品が発見されるため、THCとその他のカンナビノイドに関するより多くの基礎的神経薬理学的研究が必要とされていることなどがWHOの1997年のレポートによって報告されている。

実際に、2007年2月14日、大塚製薬株式会社とGWファーマシューティカルズplc.は、米国において開発中のカンナビノイド系がん疼痛治療剤「サティベックス(英語表記:Sativex®)」の米国における開発・販売に関するライセンス契約を締結した。
「サティベックス」は大麻からの抽出物であるテトラハイドロカンナビノールとカンナビダイオールを主成分とする溶液で、口腔内スプレーで薬剤を投与する。カンナビノイド受容体に作用する事により、モルヒネとは異なる作用機序を介して鎮痛効果を発揮する。
<参考資料 WHO 1997年 薬物乱用プログラム・レポート大塚製薬News Release2007年2月14日

これらの近年の信頼性のある研究に基づく医学的知見や社会背景と、平成15年(わ)第4650号、第6421号、第7567号大麻取締法違反(変更後の訴因大麻取締法違反、覚せい剤取締法違反、麻薬及び向精神薬取締法違反)被告事件における、弁護人の「大麻の使用の有害性は証明されておらず、あるとしてもタバコやアルコール以下であり、鎮痛作用等に着目した医療用の有用性があることも認められるから、大麻を罰則をもって禁止している大麻取締法は憲法13条で保障する幸福追求権を侵害しており、少なくとも自己使用目的ないし医療利用目的の栽培や所持を懲役刑をもって禁止する限りで、憲法13条、25条及び31条に違反して無効である」という主張を、「大麻取締法の立法事実である大麻の有害性ないしその使用による影響については、大麻には幻視・幻覚・幻聴・錯乱等の急性中毒症状や判断力・認識能力の低下等をもたらす精神薬理作用があり、個人差が大きいとしても、長期常用の場合だけでなく、比較的少量の使用でもそのような症状の発現があることが報告されており、有害性が否定できないことは公知の事実といえる。また、大麻を用いた治療が国際的な医学界で標準的な治療方法として承認されているとも認められない。」「上記のような大麻の有害性に鑑みると、大麻の所持等を禁止している大麻取締法は憲法13条、25条に違反するとはいえず、また、その処罰規定は、懲役刑の下限の低さ等に照らし、過度に重い刑罰を定め罪刑の均衡を失するものとはいえないから、憲法31条に違反するものではない。」として退けた判決は相容れないものである。

近時の医学的知見や社会背景に鑑みれば、大麻取締法は少なくとも自己使用目的ないし医療利用目的の栽培や所持を懲役刑をもって禁止する限りで、憲法13条、25条及び31条に違反して無効であり、そのような事例に対し、同法を適用することは、極めて重篤な人権侵害行為である。

司法は、「どのような罰則を定めるかは、原則として国民の代表者によって構成される国会の立法裁量にゆだねられていると解される」などとして判断を避けているが、違憲立法審査権を行使することは、三権分立制の下での立法権、行政権と司法権の対等性の保持と、裁判を通じて、国民の権利と自由(基本的人権)を保障し、社会の法秩序を維持することによって社会の平和を保全していく役割とを果たす重要なものであることから、裁判官の自己保身の為のこのような態度は司法の怠慢であるという批判を免れないばかりか、法治国家に対する国民の信頼性そのものを低下させる原因となるものである。
<参考資料 平成15年(わ)第4650号、第6421号、第7567号 大麻取締法違反(変更後の訴因大麻取締法違反、覚せい剤取締法違反、麻薬及び向精神薬取締法違反)被告事件 控訴審判決文平成16年(う)第835号






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