「大麻吸引、12部員を不起訴」に思うこと

投稿日時 2008-01-07 | カテゴリ: 白坂の雑記帳

大麻吸引、12部員を不起訴…従属的な立場考慮か
関東学院大ラグビー部員の大麻事件で、横浜地検は28日、大麻取締法違反(共同所持)の疑いで書類送検された2~4年生の部員12人(19~22歳)全員を不起訴にしたと発表した。処分は20日付。

いずれも、元部員の梅埜桂嗣(21)、中村大樹(21)両被告(大麻取締法違反の罪で起訴、退学処分)に誘われて大麻を吸ったと認めており、従属的な立場だったことなどが考慮されたとみられる。

神奈川県警の調べによると、12人は7~8月、ラグビー部の寮として使っていた横浜市内のマンションや合宿先のホテルで、乾燥大麻を共同で所持した疑いが持たれていた。
(2007年12月28日19時36分 読売新聞)

読売新聞

この事件は、輸入モノの大麻の種が国内に出回り、大麻を栽培する者が増加していることに対する、取締当局の格好の弾圧材料として使われた。関東学院大学ラグビー部という広く知られた名前は、取締当局にとって格好の餌食だった。

私たちTHCには数多くの相談が寄せられるが、その多くが親しい人が逮捕されたというものだ。逮捕された夫や彼氏が大麻愛好者であること知らなかったという女性からの、いたたまれないような話も多い。大麻がどうのこうのよりも、人間関係が壊れてしまうことも多い。大麻取締法違憲論裁判どころではない。
関東学院大学の事件でも、きっと多くの人たちが、途方もなく、今もとても辛い思いをしているに違いない。気の毒なことだ。好奇心旺盛な若者たちが、ちょっと調子に乗って部活仲間と大麻を育てて吸っただけだ。
大麻には覚せい剤のように意識を錯乱させる心配などない。アルコールの酔いよりよほど穏やかだ。だから、彼らは現にどこにも被害や危害どころか迷惑すらかけていない。全ての災難やダメージは逮捕によって引き起こされたのだ。彼らのチームや大学だけでなく、大学ラグビー自体も大きな痛手を蒙った。ラグビーに打ち込むような、血気盛んな若造たちに負わせる罪として、あまりにも過剰でやり過ぎではないか。かわいそうに。まるで大犯罪だ。たかが大麻で目くじら立てて。

私たちに寄せられた相談の中に、関東学院大の事件と同じような例があった。その学生は、友人に誘われて一緒に何度か吸ったことがあるだけで、所持も栽培もしていなかった。友人が逮捕され、学生の自宅にも家宅捜索が入ったが、大麻もパイプも出なかった。学生は任意で警察に同行し、調書を取られて帰宅した。後日、改めて呼び出され、再び調書を取られたが、送検はされず、学生に対する調べは終わった。大麻には吸引や使用に関する罰則はないのだから、送検したところで起訴できる内容ではないからだ。同じような事例は他にも何度かあった。
今回の関東学院大学の件は、そもそも「共同所持」などとして送検したこと自体がみせしめであり、起訴できないであろうことは神奈川県警も最初から分かっていたのだろう。
今回の一連の出来事は、「種」や「使用」を抑え込みたい当局の大プロパガンダであり、印象操作だった。その効果はさっそく出ているようだ。聞くところによると、これまで種を売っていた店に、取り扱い中止が広がっているそうだ。当局の狙った成果だろう。

しかし、何か解決するだろうか。同じ者たちや別の者たちが、別の店や別の方法で販売を続けるだろう。しかも、きっともっと巧妙に。ネットで海外からも買える時代だ。何も解決しないのである。残ったのは、大麻は厳しく罰せられるという印象だけだ。種の販売も取り締まるという当局の姿勢を見せつけ、一緒に吸っただけでも「共同所持」とかでヤバイことになるという強い印象を国民に植え付けた。
大麻に手を出すととんでもないことになるぞ、という印象操作。今回の事件はただそれだけが残った。それが当局の目的でもあっただろう。

昨年、トンボ鉛筆の元会長が覚せい剤や大麻で逮捕された事件の初公判、検察は冒頭陳述で、「大麻について、被告人は、以前覚醒剤を購入した際におまけでもらったと供述している。」と述べたそうだ。
参照:産経新聞「留学中からマリファナ、コカイン…トンボ鉛筆元会長初公判」

大麻は覚せい剤のおまけだそうだ。ハームリダクション用かな?
種の販売を弾圧し、自分で育てることができなくなったユーザーたちが、大麻を入手する目的で、このようなブラックマーケットに接触し、おまけの大麻だけでなく、結果的に覚せい剤に手を出す危険性が増した。
ブラックマーケットの住人たちは喜ぶことだろう。神奈川県警さまさまである。まさか裏で神奈川県警とブラックマーケットがつながっているのではあるまいな。ありそうで怖い。
大麻取締法には栽培について免許制がある。厚労省は非科学的な戯言を言って、陶酔成分のほとんどない、誰も吸わねーよみたいな産業用の大麻栽培すら抑圧している。ばかばかしく、情けない話だ。こんな官僚たちに、大麻の可能性を活かせる日本など実現できるわけがない。
麻薬単一条約は、大麻産業はもとより、個人的な栽培を刑罰を以って禁じることなど要請していない。カナダ大使館のサイトでは同国での大麻産業について誇らしげに書かれている。
参照:カナダ大使館「カナダの麻(ヘンプ)栽培」

個人使用目的の大麻について、少量の栽培を認めている国や、事実上容認している国もある。

日本でも栽培免許制を活用し、二十歳以上とか、本数の制限など、一定の条件を決め、要件を満たしていれば個人にも栽培免許を交付すればいい。税収にもなるし、種の流通も管理できる。他の薬物との接点も切れる。
現状は、仕事もしており、家庭もあり、何の問題もなく暮らしている者を、ただ大麻を所持していたというだけで逮捕し、勾留し、仕事を失わせ、家庭を崩壊させている。そのようなことが莫大な税金を使って行われているのだ。なんと馬鹿げたことだろう。

大麻のリスクについても、嘘を並べて「ダメ!ゼッタイ!」と脅かすだけでは逆効果でしかない。大麻にはアルコールやタバコほど害はなく、それほどキケンなものではないし、むしろ薬にもなるし、予防医学的な意味からもいいものである可能性を、既に多くの者が知っている。

レスター・グリンスプーン博士は、「大麻はやがて21世紀のペニシリンと言われるようになるだろう」と言っている。

無意味で非生産的な大麻弾圧は、不幸な悪循環と、税金の無駄使いしか生まない。






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