麻薬単一条約と大麻

投稿日時 2008-01-31 | カテゴリ: Taku博士の薬物政策論稿

麻薬単一条約について

1960年までに、国際連盟時代を含めて麻薬の国際統制に関する6つの異なる条約と3つの改正議定書が施行されていました。念のため列挙しますと、ハーグアヘン条約(1912)、ジュネーブ国際アヘン条約(1925)、1925年協定(1925)、麻薬生産の制限および流通規制のための条約(1931)、1931年協定、(1931)、危険薬物の非合法通商の抑制のための条約(1936)、またこれらの条約および協定の改正のための1946年・1948年・1953年の議定書となります。

1961年の麻薬単一条約(1961 Single Convention on Narcotic Drugs)の制定の主たる目的は、これらばらばらに制定されていた条約と議定書をひとつにまとめ、国連の麻薬統制の基準を簡潔かつ強化することにありました。

この単一条約の主眼は以下のようになります。本条約の第4項には「医療と科学目的に麻薬の生産、製造、輸出、輸入、流通、取引、使用、所持を排他的に限定する」と書かれています。つまり、麻薬物質の供給量を科学や医療目的に必要な分にだけ制限させ、逆にえば、この目的での麻薬物質の流通を効果的に継続かつ統制することが主眼であったといえます。

この条約では麻薬性物質を大きく4つのカテゴリーに分けています。
スケジュール1は、コデインより強いか、あるいはモルヒネと同等程度の中毒誘発性あるいは中毒継続性を持つ物質、あるいは大麻・大麻樹脂・コカインと同等の中毒性を持つ物質が含まれています。スケジュール2には、コデインより弱い中毒性、あるいはDextropoxyphene(アヘン系の鎮痛剤)と同程度の中毒性を持つ物質が含まれています。またスケジュール3は、中毒性がなくかつ中毒性のある物質に容易には転換できない合法的に医療目的で使用される物質が、スケジュール4は逆に強い中毒性があり他の薬物による治療による相殺ができず、かつ健康上の理由から医療目的での使用から消去されることが望ましいと考えられる物質が含まれます。

したがってスケジュール1にカテゴリー化されている物質は、大麻も含め必然的にこのスケジュール4にもカテゴリー化されています。
大麻がこのスケジュール4にカテゴリー化されているのは、1957年のWHOによる大麻の「身体的中毒性」を持つという定義に依っています。
しかしながら、この当時大麻の依存性についてどこまで科学的に把握できていたかは疑問が残ります。事実、1965年のWHOによる大麻の依存性に関する定義では、大麻の身体的依存性はほとんどないと述べられています。大麻がなぜスケジュール4に分類されているのかについては、その中毒性云々というよりも、むしろ当時大麻が主に娯楽用として使用されており、医療目的での用途がはっきりとしていなかったため、単一条約の主旨である麻薬性物質の用途を医療目的にのみ限るという基準から外れていたためと研究者の間では考えられているようです。

参考文献:Bentham, M. (1998) The Politics of Drug Control, Macmillan Press LTD.






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