アメリカ民主党の大統領候補オバマ氏は、大麻の非犯罪化を支持しているそうだ。カナビス・スタディハウスに掲載されたNORMLの記事で知った。オバマ氏自身が2004年にノースウエスタン大学で語っている様子がワシントン・タイムズでビデオ公開されている。
オバマ氏は大麻の非犯罪化を支持する一方、全面的な合法化については否定的だそうだ。
大麻の社会的な扱いを論じるとき、「非犯罪化」とか「合法化」などの言葉が用いられる。大麻を肯定する立場の人からも「オランダは大麻が合法化されている」といった言い方を聞くことがあるが、オランダでも大麻は規制薬物であり、一定の条件下で個人使用目的の所持や販売が犯罪とされずに認められているといった状況のようだ。「合法化」ではなく「非犯罪化」だ。
「非犯罪化」と「合法化」。なかなか分かりにくい話だと思う。オランダではコーヒーショップで一回5グラムまでの大麻売買が容認されているが、売るための栽培は禁止されているというからますます分かりにくい。
このような状況は、現在の国際条約の規制から生じている問題ではないだろうか。薬物政策研究者のTakuさんの論稿では次のように触れられている。
1961年の単一条約については逐条コメンタリー(Commentary on the Single Convention on Narcotic Drugs 1961)が出されている。4条「一般的責務」(General Obligations)に対するコメンタリー23では、
「政府は、法的権限なしに個人使用のため薬物を所持した場合、禁固刑を科することを控える(refrain)ことがありうることを疑う余地はない。それに対し、そのような権限なしに配布を目的とする所持に対しては、禁固刑や他の自由の剥奪(deprivation of liberty)を伴う罰により処罰されなければならない」
United Nations(1973), Commentary on the Single Convention on Narcotic Drugs 1961 .
と述べている。つまり単一条約の趣旨として、個人使用目的での所持と配布目的での所持を区別すると同時に、前者に対しては禁固刑を控える権限を各国政府が持っていることがコメンタリーとして付されているのである。
非犯罪化とは、規制対象とされた薬物であっても、個人使用目的の所持の場合は刑罰の対象としないということのようだ。しかし、個人使用目的の所持を非犯罪化しても、その個人に配布する行為は犯罪のままだ。需要を認めながら供給を認めないような話だ。オランダのコーヒーショップは、非犯罪化された需要に対応する、非犯罪化された供給のシステムと言えるのではないだろうか。もちろんその前提には、大麻がソフトドラッグであり、危険度の高い薬物ではないという認識があってのことだ。オランダ政府も自国内にアヘン窟を作るつもりはないだろう。中国にアヘン窟を作ったイギリスの場合、個人使用目的の大麻を非犯罪化しながら、供給の非犯罪化がなされていないので、却って問題が複雑になってしまった側面があるようだ。
2004年1月のダウングレードに伴う非犯罪化によって、リクレーショナル用途にカナビスを使う人たちはそれなりの恩恵を受けたが、そのかわり栽培や供給の罰則が強化され、医療カナビスを栽培したり供給したりしていた人に対する刑罰は逆に重くなってしまった。また、それまでは医療カナビス患者に同情的だった一般ユーザーたちは自分が逮捕されなくなったことで医療カナビスに興味を示さなくなった。
一方、供給源を確保しない中途半端な非犯罪化は、カナビスをますます犯罪組織に頼らざるをえない状況を生んだ。それに伴い供給源が大型化し、警察の集中取締りも頻繁に行われるようになった。しかし、そのことが原因になってカナビスが品薄になり、残った犯罪組織は一獲千金のチャンスとばかり、危険な混入物を混ぜて重量を増やして利益獲得に走った。
異物混入バッズは、一般の人たちの健康を脅かすばかりではなく、THC4MSの逮捕で医療カナビス供給源を断たれた医療カナビス患者たちもそうした危険なカナビスに頼らざるをえなくなり、健康への懸念をさらに倍加する結果となってしまった。このように、中途半端な非犯罪化のしわ寄せは、最も弱い医療カナビス患者に集中して重くのしかかることになった。
オランダの場合も、完全な合法化ではなく非犯罪化ではあるが、ユーザーの供給源としてコーヒーショップが認められ、さらに国による医療カナビスの供給も行われており、イギリスのような醜い混乱状態は起こっていない。オランダの非犯罪化政策もいろいろな問題を抱えているとは言え、イギリスとの違いは非常に大きい。最も弱い者を置き去りするどころか、さらに深刻な状況に追い込んでしまったイギリスの非犯罪化政策は、それ自体がひとつの不正義と言える。
引用元:もう失うものは何もない 逮捕など恐れない カナビスで痛みに耐えるミュージシャン/カナビス・スタディハウス
大麻がさまざまな疾病に治療効果があることは、数多くの研究からも明らかになっており、嗜好目的で使用してもアルコールやタバコほどの害はないことも明らかだ。この問題の根本的な解決は、国際条約での大麻規制のあり方を見直すことから始まるのではないだろうか。個人的な大麻使用の容認は、そのための供給までを視野に入れて考える必要がある。生産・流通・供給までを制度的に管理し、その過程から犯罪組織を排除すれば国際条約の目的は果たせるだろう。制度的な管理とは、合法化に他ならない。
オバマ氏は大麻の「全面的な合法化」は支持しないと語ったそうだ。なぜ「全面的な合法化」を支持しないのか、オバマ氏の言う「全面的な合法化」とはどのような意味を指しているのかよく分からないが、少なくとも我が国の宗主国であるアメリカ様の大統領候補が、個人使用目的の大麻所持を犯罪とはしないと表明していることは、とても意味のあることだと思う。
選挙権はないので一票を投じることはできないが、ぜひバラク・オバマ氏に大統領に当選してほしい。そして、日本の厚生労働省に大麻を見直すよう命令してほしい。
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