3.対面
8月19日 仕事を早退して面会に行った。感激の対面。夫は泣きながら謝っていた。
私は努めて明るく振舞った。日本語しか使えず、もどかしかった。私の次には、誰もいなかったが、15分間の面会時間だった。
これからは、手紙のやり取りや本の差し入れが出来る。本の差し入れに関しては、厄介な事に、日本語以外の本の場合、日本語訳も同時に提示しなければいけない規則で、面倒くさかった。夫が特に気に入った本は、スティーヴン・キャラハン著「大西洋漂流76日間」という本だった。ヨットで遭難し、76日間漂流した人の話で、この本の最初のページには、「絶望と孤独に苦しんでいる人々、それを経験した人々、またこれからそれを味わうかもしれないあらゆる人々に、国境を越えて、この本を捧げる。」と書かれていた。
今の自分の状況と重ね合わせる事が出来、励まされたようだ。
毎週1回面会に行った。職場から警察署までは車で25分の距離。毎日でも会いに行きたかったが、そういう訳にもいかなかった。
何かの拍子で、手紙の他に電報を送ろうと思い立った。夫はかなり喜んでいた。留置場で電報をもらうのは自分しかいなく、特別に思えたらしい。
夫からも手紙が来た。殆どひらがなで、文法もおかしいが、とても嬉しかった。
8月18日に起訴されて以来、警察の取り調べも無く、何の進展もない事にかなりストレスを感じているようだ。弁護士に保釈申請をお願いしても、密輸の件が起訴されてないので、無理でしょうという事だった。
9月14日 関税法違反で再逮捕となった。これでまた接見禁止になるが、夫も私も終わりに1歩近づいたという事で、ある意味嬉しかった。
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