男に騙されて、大麻6キロを、それと知らずに日本に持ち込んでしまった妹の初公判。
姉のさゆりさんによる報告です。
信じ難いことですが、妹が実際に無実だとしても、状況があまりに不利なので、有罪になってしまう可能性がとても高いと、複数の弁護士が言っているそうです。
* * *
妹の初公判が10月初旬にありました。
私たち家族にとって、忘れられない日がまた増えました。
法廷に入ると、妹は両わきに刑吏に挟まれて座っていました。
傍聴席には私たち家族3人を含めて5人いました。
私たちは彼女の後ろ姿しか見えません。
始まる前に彼女が私たちの方を一瞬振り返って、私たち家族の姿を見ると、彼女も今まで我慢していたものがこみ上げてしまったのでしょう。泣いてしまったので、弁護士が「大丈夫?」と声をかけていました。
彼女の涙を見たのは、初めて接見して以来でした。
公判は人定質問から始まり、氏名、本籍、職業等が尋ねられました。
検察官が起訴状を朗読した後、被告人に、黙秘権の告知がされました。
罪状認否、次回の裁判について、弁護士が検察官に「携帯電話のメールのやりとり、彼氏の日本における書類、妹が持ってきてしまった缶の指紋」の提出を求めました。
次回の裁判は、検察官が証拠によってどんな事実を証明しようとしているのかが陳述されます。税関の職員2人が法廷に来ます。
妹が持ってきてしまった6キロもの大麻がダンボールに入れられ、法廷に出てきました。
裁判官が「これは、あなたのものですか」という質問に、「私のものではありません」と妹は答えました。
そのようなやりとりがあった後に、次回の裁判の日程や、弁護士が検察官に、携帯電話のメール等の証拠の提出を求め、初公判は30分程度で終わりました。
初公判の日程が決まった時、裁判所から弁護士に「2時間の時間を設けるから1回で終わらせてほしい」と言われたようなのですが、弁護士は激怒して、「こっちはいろんな証拠を出して、徹底的にやりますから」と言ってくれたのです。
法廷の部屋の前に貼ってある日程表を見ると、妹の予定は一番最後で、時間も2時間とってありました。
たった1回の裁判で終わらせようとするなんて、本当に怒りがこみあげてきます。
裁判所は毎日、多くの裁判が行なわれているわけですが、彼らにとっては、たくさんあるなかの一つにしか過ぎません。
しかし、私達にとっては、人生が決まってしまう、とても重要なことなのです。国選の弁護人を選任していたならば妹の裁判は2時間で終わってしまったでしょう。
妹が法廷を出るまで、私達は彼女を見守っていました。
退廷して行くときに刑吏につけられる手錠と腰縄は、とても痛々しく非情なものを感じました。妹のその姿は耐えがたく身の引き裂かれる思いでした。
裁判中は、感情的になることを避け、冷静にメモをとっていたのですが、妹のそのような姿を目の前にして、涙が止まりませんでした。もう一人の妹は開廷してからずっと泣いていました。
裁判は傍聴席にいる人間も、威厳に満ちた裁判官の前では、とても緊張しました。
面会した際、「上手く答えられていたかな?私の態度どうだった?」と話していたので、本人はそれ以上に緊張したようです。
しかし、法廷での彼女は、とても毅然とした態度で、しっかり受け答えをしていたので、安心しました。
閉廷して、弁護士とロビーで話しました。
妹の彼氏について衝撃的なことを聞かされました。
その事実を今回のことで妹は知ったようです。
彼女は毎日どんな思いで過ごしているのかと考えると、言葉では言い表せません。
彼女に落ち度があっても、騙されていたことは明白です。
検察側は、たくさんの事実、証拠を持っているにもかかわらず、妹が共謀者とされ、起訴されてしまうなんて・・・ 男に騙されて、缶の中身を知らずに日本に持ってきてしまったことは明らかです。
父も裁判所まで5時間かけて来てくれました。
別々の帰路につき、普段あまり長電話をすることのない父とその日はたくさん話しました。
前日はよく眠れなかったこと、裁判のことなど、本当にたくさん話しました。
妹を一刻も早く苦しみから解放してあげることが私達の願いです。
そのためには、裁判というものを通過しなければなりません。
まだ序章です。無実を勝ち取るまで、私たち家族は戦い続けます。
起訴されてから数ヶ月経過しました。
次の裁判は11月下旬になります。
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