小説:医療大麻物語(4) 放射線治療

投稿日時 2008-07-20 | カテゴリ: 小説:医療大麻物語

シーン4 放射線治療

 面談室で、良介と長島医師が話をしている。
「奥様のことで整形外科医とも話し合ったのですが、手術は難しいようです。」
「そうですか。どうすればよいのでしょうか。」
「まずは安静ですね。腰はコルセットで固定します。そして、腫瘍が原因ですから、その治療が必要です。放射線治療をすぐに行った方がいいでしょう。」
「妻にはどういえば。」
「そうですね。癌と聞くとショックを受けるでしょうね。でも、放射線治療をやるからには、告知したほうがいいですよ。少しずつ話していきますがいいですか?」
「分かりました。お任せします。」

 早苗の病室に良介と長島医師が戻ってきた。
「久保田さん、ちょっとお話があるのですが。」
「何か悪い話ですか?」
 この人は、勘のいい人のようだ。と長島医師は思った。
「病気と治療の話です。久保田さん、背骨が潰れてしまっていて、それが痛みや麻痺の原因みたいです。どうして、骨が折れてしまったのか、これが大事なことなのですが・・・。MRIをみるとどうも背骨の中に何か出来ているようです。」
「何か?悪いものですか?」
「うーん。でき物というか腫瘍というか、悪性かどうかはこれから調べていきますが、悪いものかもしれません。とにかく、早く治療した方が良いのは確かです。骨の腫瘍に放射線治療をやろうと思います。」
「私、死んでしまうんですか?」
「いえいえ、久保田さん、今は急なことだし、痛みも強いから、弱気になっているんですよ。とにかく治療しましょう。」
「分かりました。とにかく、痛みだけは取ってください。」
「痛み止めの治療も同時に行いますよ。モルヒネなども必要があれば使いますね。」

 放射線治療が開始になった。治療は驚くほどあっけない。放射線を当てる位置を決めたら、機械の下に横になり、5分程したら終わってしまう。放射線は早苗の体を通り抜けていったのだろうが、熱さも痛みも無い。これを毎日、数週間続けることになる。
 痛み止めの治療も始まった。消炎鎮痛剤とモルヒネの錠剤である。モルヒネを飲んだ後、早苗は眠気と軽い吐き気を感じた。しかし、陶酔してしまうようなことは無い。早苗は麻薬と聞いていたので、恐ろしいものを想像していたが、痛み止めで使う量ではそういう作用は無いようだった。

 数日後、背中の痛みが軽くなってきた。痛み止めと放射線が効いてきたのだろう。しかし、両足のしびれるような痛みには効果がないようだった。相変わらず両足には感覚が無く、動かすことも出来ない。そして、長い時間正座をした後のようなジンジンと痺れるような痛みが常にある。
 夕方に早苗の部屋に良介が来た。
「どうだい?落ち着いてきたかい?」
「うん。何とか。でも、まだ足が自分のものじゃないみたい。」 「きっと時間がかかるんだろう。あせらずやっていこう。」
「ごめんね、心配かけちゃって。仕事も早く切り上げたんでしょ?」
「・・・いいんだよ。それより、今は何とか病気をよくする事を考えようよ。」

 その後、2人は他愛も無い話しをした。早苗は明るく普段どおりに振舞った。良介に心配をかけたくない、頑張って病気に勝たなくてはならない、と自分に言い聞かせていた。良介も笑顔で話しをした。良介は自分で早苗の病気の事を調べて、早苗の状態があまり良くないことを理解していた。しかし、早苗に暗い顔を見せると心配させてしまうかもしれないと考えていた。2人は、不安の中、お互いに明るく話をした。そして、お互いが無理に明るく話していることに気付いていた。2人は暗い話をかき消すように、面会時間が終わるまで話をした。

(つづく)






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