小説:医療大麻物語(8) 大麻入手

投稿日時 2008-07-22 | カテゴリ: 小説:医療大麻物語

!注意!
これはあくまでフィクションです。大麻の入手について書いてありますが、これは作者の創作で、実際にこのようなことはありません。さらに、大麻の所持・入手を勧めるものではありません。


シーン8 大麻入手

 良助は自宅でコンピュータの前にいる。インターネットの検索エンジンに「医療大麻」と打ち込み、検索をクリックした。「医療大麻を推進する会」というサイトが出てきた。そこにアクセスする。
 そこには、医療大麻に関する事がいろいろと書いてあった。どのような病気に効くのか、医療大麻の裁判など。日本でも医療大麻を使えるようにするべきだ、ということを主張している。
 ページを見ると、早苗の痛みには確かに大麻が効きそうである。副作用は重いものはないようだし、早苗の病状を考えれば副作用よりもまず症状を取ってあげることが重要に思える。しかし、大麻取締法では大麻の医薬利用を禁止していることが書いてある。大麻取締法。この法律を良介は今まで気にしたこともなかった。

 ページの最後に、メールアドレスが書いてある。良介は、メールを送った。
「突然のメールをすみません。相談にのっていただけませんでしょうか。妻が癌で、背骨に転移しています。そのために激しい痛みがあり、モルヒネなどの痛み止めが効きません。抗がん剤の副作用もあって、日に日に衰弱していっているようです。何とか痛みだけでも取ってあげたいと思っています。お返事ください。」
 翌日、返事が来た。
「メール拝見しました。一度お会いしてお話ししたほうがよさそうですね。都合のよい日を教えてください。」
 良介はすぐに返事を書き、医療大麻運動家と会うことになった。

 レストランで待ち合わせをした。ゆったりとした自然食レストランだ。良介が席で待っていると、50代位の男性がやってきた。良介はもっと怖い感じの人を想像していたが、気さくで温厚な感じだ。
「はじめまして。上田と言います。」
 上田は良介に名刺を渡した。「医療大麻を推進する会 上田 創一」と書いてある。
「久保田です。突然すみません。相談に乗っていただけて、感謝しています。」
「いいよ、いいよ。ああいうホームページを公表している以上、相談には乗らなきゃいけないと思ってるから。結構大変だけどね。」
 上田は明るく笑った。言葉に関西のイントネーションがある。
「それで、奥さんの病気はどうなの?」
「メールにも書いたのですが、癌が背骨の神経を傷つけて、ひどい痛みがあるようなんです。モルヒネや通常の痛み止めはあまり効かなくて、医者もお手上げのようです。」
「それで大麻はどうか、というわけね。」
「そうです。医者が日本では使えないけど、海外では使われていると言っていました。」
「アメリカのカリフォルニアなんかは使えるよね。医療大麻のクラブハウスがあって、そこで吸ったりしていたよ。痛みにはいいみたいだね。エイズの患者とか、神経の難病の患者が吸ってたよ。」
「日本では難しいですか?」
「大麻取締法、第4条ってのがあって、医薬利用が禁止されてるんだよ。困ったもんだね。研究まで禁止していて。医者も言わないんだよね。弱腰なのか知らないのか。」
「何とかなりませんか?」
「僕は売人じゃないからね。はいどうぞ、ってわけにはいかない。吸う機械なら売ってあげるよ。これはベポライザーっていう新商品だけど、煙が出ないから病人でも大丈夫だろう。」
 その後、上田は良介に電話番号を渡した。
「ここに連絡してみなよ。」

 上田と別れたあと、良介はもらった番号に電話をかけた。
「もしもし。誰?」
 後ろで大きな音楽が鳴っている。
「上田さんから聞いたんですけど。久保田と言います。」
「上田さんから?ああ、さっき連絡があったよ。クボタさんでしょ。俺、ソーマっていうんだ。」
「今から会えますか?」
「いいけど。じゃあ、渋谷のアナンダマイドっていうクラブに来てよ。そこでぶりってるから。」
「ぶりってるってなんですか?」
「野暮なこと聞くなよ。じゃあ、きるよ。」

 渋谷の奥にそのクラブはあった。地下に続く薄暗い階段から、単調な重低音が響いている。階段を下りて扉を開けると、大音響でレゲエが流れてきた。良介はいかにも場違いな客だ。良介は店員に聞く。
「ソーマさんっています?」
「ソーマなら奥のカウンターにいるよ。」
 奥に進むと、ドレッドヘアーの若い男性がグラスを傾けている。
「ソーマさんですか?」
「そうだけど。クボタさん?へー、この店にスーツ着てる人が来るのって珍しいよ。クールだね。」
 ソーマはいぶかしげな眼で良介を見た。
「確かにあまりこういうところには来ないですね。上田さんにソーマさんと連絡するように言われたんですが。」
「ガンジャが欲しいんだって?上田さんの紹介だから大丈夫だと思うけど、クボタさん、そういうのやりそうにないね。」
「私がやりたいんじゃないですよ。」
 良介は妻のことを話した。
 ソーマは突然涙ぐみ、良介の手を取った。
「俺のばーちゃんも癌だったんだ。最後は痛みが強くてね。吸わせてやりたかった。後悔してるんだ。あんたには愛がある。信用した。売るよ。」

(つづく)






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