小説:医療大麻物語(10) ひと時の幸せ

投稿日時 2008-07-22 | カテゴリ: 小説:医療大麻物語

シーン10 ひと時の幸せ

 その後、良介は毎晩例の薬を持ってきた。それを眠る前に使い、痛みから解放され、ゆっくり眠ることができた。抗がん剤の吐き気にも効果があるようで、食事もとれるようになった。早苗は、食事が自分の生活にとってとても大事だったことを実感する。最初の頃は頭がふらふらすることもあったが、だんだん量を覚えてきて、気にならなくなった。
 長島医師は良助が病室に大麻を持ち込んで早苗に使っていることを知っていた。そして、大麻の効果をこっそり観察していた。早苗には大麻がとても合っているようだ。副作用は目立ったものがない。「本当は自分で大麻を患者に処方したい。大麻の効果をもっと間近で見たい。しかし、これは日本では使用できない大麻なのだ。積極的に関わると、病院の職はおろか医師免許すら危うい。一人の患者の幸せと、自分の医者人生と、どちらが大切なのだ。」長島医師は結局黙って見ていることを選んだ。

 早苗の治療は順調に進んだ。ある日二人は長島医師に呼ばれた。
「久保田さん、抗がん剤が効いて癌は小さくなっています。」
「そうですか。何だか先生から初めていい話を聞いた気がするな。良かったな、早苗。」
「痛みもいいみたいだし、そろそろ外泊でもしてみますか?」
「本当?うれしい。もう家に帰れないんじゃないかと思ってた。」
 早苗は素直に喜んでいる。
「いやいや。久保田さん。外泊で問題がなければ、退院して外来で治療もできますよ。」

 さっそく早苗は外泊をした。痛みが和らぎ、車いすに移るのもスムーズだ。やはり自分の家は病院とは違い、気持ちが落ち着く。良介はひとりでも掃除をしていてくれたようだ。
「天気もいいし、ちょっと外に出ようか?」
 二人で近くを散歩する。よく晴れた日で、風が心地よい。
「何だか、恥ずかしいわ。」
「そんなことないだろ?」
「良介、本当にありがとう。」
「早苗こそ、治療を頑張ってくれてありがとう。家に帰ってきてくれてありがとう。」
 夜は久しぶりに二人で食事をする。早苗は本当は自分でキッチンに立ちたかったけれど、さすがに疲れてしまって、出前を取った。でも、病院の単調な食事に比べれば、とても美味しい。辛い闘病生活の中、二人は生きていることの幸せを感じる。
「何だか幸せだと怖いのよね。あとから悪いことが起こりそうで。」
「何言ってるんだよ。」

(つづく)






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