小説:医療大麻物語(11) 逮捕

投稿日時 2008-07-29 | カテゴリ: 小説:医療大麻物語

シーン11 逮捕

 手持ちの大麻がなくなってしまい、良介はソーマに電話をした。
「もしもし、ソーマさん?」
「おー、クボタさん。奥さんどうだった?」
「ええ、それが良く効いて。」
「ああ、それは良かった。俺も気になってたんだよ。」
「ところでもう無くなりそうなんですが、お会いできませんか?」
「いいよ。今日は家にいて暇だから、何ならうちに来るといい。」

 良介は、ソーマの家を訪ねた。ソーマはワンルームマンションで一人暮らしをしている。
「クボタさん。どうぞ。入ってよ。」
「お邪魔します。」
 男の一人暮らしにしては綺麗にしてある。インテリアは凝っていて、民族調の置物などが置いてある。
「奥さん、ガンジャが効いたんだって?俺も自分が譲ったものが病気の人に役立つことなんて初めてだから、なんだか嬉しくてね。」
「本当にありがとうございます。痛みが取れて、食欲も出てきて、退院の話まで出たところです。」
「マジで?よかったよ。じゃあ、忘れちゃうと困るから、まず渡しとくよ。奥さんの特効薬。」
 ソーマは、透明な袋に入った乾燥した大麻を良介に渡した。
「ありがとうございます。助かります。」
 そういって、良介は大麻を自分のカバンに入れた。
「クボタさんだから教えるけど、実はあれ、俺が栽培したものなんだよ。」
 そう言って、ソーマは良介を部屋の押入れの前に案内した。
「ジャーン。この中でかわいいやつが育ってるのよ。」
 ソーマは嬉しそうに良介に説明した。

 と、その時、ドアのチャイムがなった。
「誰だ?こんな時間に。」
 ソーマがドアを開けると、男達が7、8人立っていた。スーツの者が数人いて、残りは動きやすそうな服装をしている。殺気立った雰囲気だ。
「どちらさんでしょうか?」
「相馬 正か。我々は麻薬取締部だ。大麻取締法違反容疑で家宅捜索する。」
 その中の一人が、ドアの隙間に足を入れて、閉められないようにし、言った。そして、捜査令状を相馬に見せ、男達は部屋に押し寄せるように入ってきた。部屋中を調べ始め、あらゆる引き出しを空け、その様子をカメラで撮影している。
「おい、お前ら、勝手に何してんだよ!ふざけんな!」
 ソーマは青ざめて叫ぶ。良介は何が起こったのか分からず呆然と立ち尽くす。麻薬取締官の一人が部屋の押し入れを開けた。
「ありました。」
 何人かが押し入れに集まる。
「押し入れを改造し栽培していたようです。本数は、えっと、いち、にい、さん・・・。18本です。」
「なるほど。写真を撮っといて。その後、抜いて調べる。」
 男達は話し合っている。

 家宅捜索の間、良介は取調べを受けた。
「あんた、名前は?」
「久保田良介です。」
「久保田さんね。相馬とはどういう関係?」
「知人です。今日はたまたま遊びに来ていました。」
「そうか。あんたも一応調べさせてもらう。いいね。」
 そういって、麻薬取締官は良介を調べ始めた。良助は突然のことで、驚きと恐怖の為に麻薬取締官に素直に従う。麻薬取締官は良介のカバンを開けて、大麻の入った袋を発見した。
「これは何だ?」
 良介は黙っている。
「まあいい。後でまとめて調べるからな。」

 ソーマと良介と麻薬取締官は、リビングの机の前に集まった。体格のいい男が、ソーマと良助のそばに立つ。逃げたり抵抗したりした場合の為だろう。机の上には、刈り取られたばかりの大麻と、乾燥した大麻が並べられている。中には、間違えたのだろう、緑茶まで並べられている。
「これは大麻だね?」
 麻薬取締官が、集められた大麻を二人に見せて尋ねる。
「何すかね?俺は見覚えがないけど。あ、これは緑茶っすかね?」
 ソーマはしらばっくれる。
「そうか。これから検査試薬で調べるからな。調べるところを確認しとけよ。後から不正をしたと言われない為の確認だから。」
 麻薬取締官は頑丈そうなアタッシュケースから検査試薬を取り出し、大麻を試薬に入れた。検査試薬は赤い色に変わった。
「どうだ?確認してくれ。赤い色になると陽性、これが色見本だ。どうだ?同じ色だろう?」
「そうっすか?微妙に違う色に見えるけど。」
 ソーマは何とか言い逃れようとする。
「おいおい、ふざけたこというなよ。これはあくまで見本。まったく同じにはならんよ。とにかくこれは陽性だ。」
 麻薬取締官は時計を確認し、言った。
「20時18分、現行犯逮捕。」
 彼らの儀式らしい。
 そして、
「ふたりにはこれからうちの事務所に来ていただく。そこでいろいろとお話を伺いましょう。」
 と言い、麻薬取締官は二人を拘束した。そして、一団は車に乗り込んだ。

(つづく)






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