第2 意見の理由(1)

投稿日時 2008-08-07 | カテゴリ: 大麻取締法の改正を求める意見書案

第2 意見の理由

1.はじめに

 人類と大麻の共生の歴史は古く、大麻は中央アジアにおいて1万年以上も前から栽培されていたといわれている。中国では紀元前4000年、トリキスタンでも紀元前3000年ころには栽培が始まったと考えられている。医薬品としての利用も古く、インド、中国、中東、南東アジア、南アフリカ、南アメリカでは長い歴史を持っている。

 大麻が医薬品として使われたことを示す最初の記録は、5000年前の中国を統治していた神農帝が出版したとされる草本録(神農本草経)にみられ、マラリア、便秘、リウマチ痛、放心、婦人病の薬としてあげている。その他にも、中国の薬草医は、手術の際の沈痛薬として、カナビスと松ヤニと酒を調合した薬について触れている。〔1〕

 わが国においても、大麻は古来より穢れを祓う神聖な植物であると考えられており、様々な宗教的な儀式や神事、生活用品などに用いられてきた。戦前は、国家によってその生産が奨励されていたこともあり、繊維や種子を採取する目的で全国各地で広く栽培されていた。また、医薬品としても使用されており、日本薬局方には、1886年に公布されて以来、1951年の第五改正薬局方まで大麻が「印度大麻草」、「印度大麻草エキス」、「印度大麻チンキ」という製品名で収載され、鎮痛剤、鎮静剤、催眠剤などとして用いられてきた〔2〕。

 このように、大麻は戦前の日本人にとって身近な植物であったが、戦後、連合国軍の占領下において、昭和20年9月にポツダム宣言ノ受諾二伴ヒ発スル命令二関スル件(昭和20年勅令第542号)が公布・施行され、これに基づき、大麻の規制についてはいわゆるポツダム省令、すなわち、麻薬原料植物ノ栽培、麻薬ノ製造、輸入及輸出等禁止ニ関スル件(昭和20年厚生省令第46号)が制定され、これにより、大麻についても麻薬としての規制が行われ、大麻草の栽培等が全面的に禁止された。その後、大麻取締規則の制定によって、麻薬から独立して大麻の規制が行われるようになり、用途を限定して許可制の下に大麻草の栽培が認められるようになった。

 昭和23年、大麻取締規則が廃止され、大麻取締法(昭和23年法律第124号)が制定(同年7月施行)された。同法は、大麻の用途を学術研究及び繊維・種子の採取だけに限定し、大麻の取扱いを免許制とし、免許を有しない者による大麻の取扱いを禁止するとともに、違反行為を規定して罰則を設けた〔3〕。

 大麻取締法制定の経緯については、同法案を審議する国会会議録において、「大麻草に含まれている樹脂等は麻藥と同樣な害毒をもつているので、…(以下略)」〔昭和23年06月12 日 衆議院厚生委員会 8号 厚生大臣 竹田儀一氏による発言〕、「大麻草に含まれている樹脂等は、麻藥と同様な害毒をもつているので、…(以下略)」〔昭和23年06月19日衆議院本会議 67号 厚生委員長山崎岩男氏による発言、昭和23年06月24日 参議院厚生委員会 厚生大臣 竹田儀一氏による発言〕、「麻藥と同様な害毒を持つておるのでありますから、…(以下略)」〔昭和23年06月28日 参議院本会議 54号 厚生委員長塚本重藏氏による発言〕などの発言が度重なってみられるが、このような事実を示す証拠は明らかにされておらず、また、現在の大麻の健康への影響に関する科学的知見とも大きくかけ離れていることから、同法制定の過程において重大な事実誤認があったことが窺われる。

 その後、大麻は、1961年の麻薬に関する単一条約(麻薬単一条約)によって、特に危険な特性を有するものとして、附表I及び附表Ⅳに分類され、ヘロインやモルヒネと同等に最も厳しい規制を受けている。大麻がこのように分類されているのは、1957年のWHOによる大麻の「身体的中毒性」を持つという定義に依るものであるが、当時、大麻の依存性についてどこまで科学的に把握できていたかは疑問が残る。事実、1965年のWHOによる大麻の依存性に関する定義では、大麻の身体的依存性はほとんどないと述べられており、また、1997年のWHOによる大麻に関する報告書では、「これまでのところ、退薬症候群の生成について一般的な合意がない。」と述べられている[4]。また、近年の大麻に関する研究には著しい進歩があり、信頼性の高い研究によって、大麻の有害性は、アルコールやたばこより低いことが報告されている[5]。また、大麻の適切な使用が様々な疾病や不快な症状に対して治癒的な効果を示すことが明らかにされている。このような科学的事実に基づいて、先進諸国では、大麻に関する規制を改める動きが盛んである。一方わが国においては、もはや根拠の無い60年前の法律に基づいて、大麻使用者を逮捕・拘禁する厳罰政策が続けられているが、このような措置は重篤な人権侵害であり、早急にこれを改める必要がある。






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