北見に「大麻特区」 産業用、道が認定(08/07 00:20)
道は六日、国の構造改革特区の北海道版「北海道チャレンジパートナー特区」に、北見市の「産業用大麻栽培特区」を認定した。麻薬成分が低い大麻の建築用資材などへの活用に向け、道が支援する。
同特区は二〇〇四年度に始まり、これまで四地域が選ばれている。北見市の特区は、遊休農地を利用した大麻栽培体制の確立が目的。輸入や国内流通が厳しく規制される大麻種子を確保するため道が検査態勢の整備など支援する。道は八日、市に認定書を交付する。
北海道新聞
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/politics/109668.html
厚生労働省は、精神作用のない産業用大麻の栽培についての特区申請もこれまで認めてこなかった。この記事によると、北見の「大麻特区」は「国の構造改革特区の北海道版」とのことだが、厚労省も認めたのだろうか。
政府の構造改革特区に関する対応は、首相官邸のウェブサイトに「構造改革特区(第4次提案募集)に関する当室と各府省庁のやりとり」のPDFが公開されていて、例えば長野県美麻村(当時)が申請した「産業用大麻の免許要件の緩和」について厚生労働省管轄分に次のような記述がある。(PDFの24ページ)
管理コード:090830
規制の特例事項名:産業用大麻の栽培に係る免許要件の緩和
該当法令等:大麻栽培者免許に係る疑義について(平成13年3月13日付け医薬監麻発第293号)
制度の現状:大麻取扱者の免許交付審査においては、その栽培目的が伝統文化の継承や一般に使用されている生活必需品として生活に密着した必要不可欠な場合に限り免許すべきと解している
措置の分類:C(特区として対応不可)
措置の内容:Ⅳ(訓令又は通達の手当てを必要とするもの)
措置の概要(対応策):
大麻の幻覚成分は微量の摂取で精神作用が発現することから、たとえ低濃度であっても、乱用のおそれがある。また、幻覚成分含有量の少ない大麻から含有量の多い大麻への転換も容易にできる。そのため、大麻乱用による保健衛生上の危害を防止するため、幻覚成分の多寡にかかわらずすべての大麻を大麻取締法で規制する必要がある。
大麻に関しては、その有害作用から栽培等の行為は厳重に規制し最小限なものとする必要がある。大麻の栽培を安易に認めると、不適正な栽培、盗難、乱用の助長の問題等が起こりうることから、保健衛生上の危害を防止するためにも、必要不可欠な場合に限定して栽培免許を付与することは必要である。
いわゆる産業用大麻といわれるものもその実態は大麻そのものであり、乱用のおそれがあることには変わりないことからも、いわゆる産業用大麻の栽培をその他の大麻栽培と区別することは適切でない。
各府省庁からの回答に対する構造改革特区推進室からの再検討要請:
幻覚成分の多寡にかかわらずすべての大麻を大麻取締法で規制した上で、幻覚成分が微量の産業用大麻をその他の大麻と区別して、保健衛生上の危害を防止するための適切な代替措置を講じる場合においては、現在全ての大麻について栽培を認めている「必要不可欠な場合」よりも広く、産業用大麻の栽培を認められないか、検討し回答されたい。併せて、右の提案主体からの意見も踏まえ、再度検討し回答されたい。
提案主体からの意見:
「大麻の幻覚成分は微量の採取で精神作用が発現する」との指摘について、どのような研究結果に基づくものか開示願いたい。その開示されたデーターに基き、本件品種が具体的に精神作用を及ぼす科学的事実を判明させていただきたい。
1998年6月のフランス国立保健医療研究所による「麻薬の危険度調査」において、大麻がヘロインやコカインといった他の薬物は勿論のことながら、アルコールやたばこよりも危険度が低いとされた(1998/6/17共同通信ニュースより)ことや、世界的に著名な医学書である「メルクマニュアル」において「(大麻が)重篤な生物学的影響があるとする主張の大部分は、比較的大量の使用者、免疫学的、生殖機能についての積極的な研究においても、ほとんど立証されていない(万有製薬㈱提供 メルクマニュアル第17版日本語版より引用)。」と指摘している点について、貴省の見解を伺いたい。
「幻覚成分含有量の少ない大麻から含有量の多い大麻への転換も容易にできる」との指摘があるが、欧州やカナダ等でも同様の状況にある中で、政府による一定の規制のもとで、広く産業用の大麻栽培が行われており、我が国においても保健衛生上の危害を防止しつつ、健全な大麻産業を興すことは可能であると思われる。貴省の回答を見るに、それが不可能であるほど我が国の行政・治安が欧州各国やカナダなどに比べて劣っているとの指摘とも受け取れるが、そのような解釈でよろしいか。
そもそも、構造改革特区制度は、様々な規制を地域を限って緩和することにより、当該地域の事業者の創意工夫による新たな産業の創出を主な目的として実施されているものと認識しており、現在の規制状況をそのまま回答している姿勢は、ほかに産業の創出の難しい山間地の現状を全く省みない姿勢であると認識せざるを得ず、納得しかねる。
「大麻の栽培を安易に認める」との指摘であるが、本提案は、あくまでもカナダ政府の事例を参考としており、中央または地方政府の統制下における規制緩和といった意味からして「安易な栽培容認」とは言い難く、逆に栽培用途は限定されているものの、その品種については幻覚成分の多寡に関わらず許可されている我が国の大麻栽培の現状を改め、栽培用途の限定を緩和する代替措置として、幻覚成分の極めて少ない品種に限定することを求めていることからして、保健衛生上の危害を防止するための安全策を十分に講じた上での提案であると考える。欧州や、カナダに於ける産業資材としての大麻の活躍はめざましいものがあり、石油に頼らないバイオマス資源の開発は、広範な業種に新しい道を拓くものであり、安易に規制を考える姿勢は、石油輸入国である我が国の国益を阻害していると言わざるを得ない。もとより「幻覚成分の多寡にかかわらずすべての大麻を大麻取締法で規制する」ことに異論はないが、その規制のもとで、地域の事業者の創意工夫による健全な大麻産業を創出するためにも、法によらない本提案については、上記の措置を講じた上で緩和していただくことを希望する。
「措置の分類」の見直し:C(特区として対応不可)
「措置の内容」の見直し:Ⅳ(訓令又は通達の手当てを必要とするもの)
各府省庁からの再検討要請に対する回答:
大麻の幻覚成分であるTHCについては、「体重60Kgの人間が3ミリグラム相当を吸煙摂取しただけで作用がある」との報告(依存性薬物情報研究班編「依存性薬物情報シリーズ 大麻」)があり、THC含有量が0.3%以下のいわゆる産業用大麻であっても1グラム摂取すれば大麻の作用が現れる。また、THC含有率を高める大麻の栽培方法やTHCを大麻草から抽出・濃縮する方法が一般書籍にも掲載されている。さらに、THC含有量が低い大麻といわれるCBDA種は劣性遺伝であり、在来種との交配により幻覚成分含有量が通常の大麻と同様になり、恒常的にTHC含有量が低く保たれるものではない。したがって、THC含有量が多い大麻と少ない大麻を区別して規制することはできない。「メルクマニュアル」の「大麻が重篤な生物学的影響があるとの主張はほとんど立証されていない」との記述の「重篤な生物学的影響」が何を指すのかは明らかでないが、他方、同書では「大麻の慢性ないし定期的使用は精神依存を引き起こす」、「吸われた大麻は夢幻様状態をうむが、その状態では観念がばらばらになり、不安定となり、自由に流動するようである」、「精神分裂病様症状が、抗精神薬(例、クロルプロマジン)で治療を受けている患者においてさえ、マリファナによって悪化する場合がある」、「多量使用者は肺の症状(急性気管支炎、喘鳴、咳、粘液分泌過多のエピソード)を発生し、さらに肺機能が障害されることがある」、「長期多量使用者の少数サンプルにおいて認知機能低下が一部の検査で同定された」といった記述があり、大麻の人体への有害な影響を示唆している。また、フランス国立保健医療研究所の「麻薬の危険度調査」で大麻が、アルコールやたばこよりも危険度が低いとされたとあるが、マリファナの吸引によって幻覚等の作用が生じうるのに対して、たばこやアルコールでは通常の喫煙、飲酒で幻覚を生じることはない。WHOの1997年報告では大麻乱用の急性効果として知覚発達と精神運動作業の悪化等、慢性的効果として知覚機能の選択的低下や大麻依存症候群等の健康被害が指摘されている。「1961年の麻薬に関する単一条約」でも大麻はヘロイン等と同様に最も厳重に規制すべき附表Ⅳの薬物に分類されている。
「措置の内容」の項目にある通り、これは「訓令又は通達の手当てを必要とするもの」であり、法改正を必要としない、厚生労働省という役所による施策に過ぎない。
やりとりで出てくるカナダでの産業大麻については、カナダ大使館のウェブで紹介されている。
■カナダの麻(ヘンプ)栽培
麻栽培には長い歴史があります。世界でも最も古くから使われている資源の1つである麻は1万年以上の昔から食品、繊維、燃料として使用されてきました。18世紀や19世紀にはカナダでも広く栽培されていましたが1938年に栽培が非合法化されました。しかし麻が再び見直されるようになって10年、今では、世界的に麻市場は商業的な成功を収めています。
1998年にはカナダでも研究および商業目的での麻栽培が合法化され、農家の関心を集めました。カナダ政府も法令の改正や数百万ドルの研究開発補助金を投入して、カナダの麻栽培を積極的に支援しています。
(以下略)
カナダ大使館 - 経済/ビジネス - 農業・食品・水産品 - カナダの麻(ヘンプ)栽培
長くなったので、厚生労働省の言い分がいかに非科学的で馬鹿げているかは改めて指摘する。
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