小説:医療大麻物語(12) 取り調べ

投稿日時 2008-08-17 | カテゴリ: 小説:医療大麻物語

 良介とソーマは麻薬取締官事務所に連れて行かれた。その後、2人は別の部屋に連れて行かれ、それぞれ取り調べを受けることとなった。

 取調室は狭く、机といすがあるだけの殺風景な部屋だった。机の上には、ノート型コンピューターとプリンターが置いてある。取り調べを行うのは2人の麻薬取締官で、1人はベテランで40代後半位の男、もう1人は若い20代後半位の男だ。2人とも逮捕の時のような緊張感は漂わせてはおらず、どちらかといえば紳士的な感じである。

「どうも。私は岡村と言います。彼は部下の鈴木です。これからあなたのことをいろいろと聞かせてもらうよ。あなたは初犯だし、少量の所持だけだから、正直に答えてもらえば、罪はそれほど重くはならないよ。だから正直に話してくれよ。」
 ベテランが自己紹介し、取り調べが始まった。岡村が主に取り調べを行い、鈴木がコンピューターで供述書を作成する係のようだった。
「あなた、名前は?」
「久保田良介です。」
「相馬とはどのような関係?」
「どういう関係といわれても、あまりよく知らないのですが。」
「知らないと言われてもね。家に一緒にいたでしょう?彼から大麻を買ったんだね?」
良介はしばらく黙っている。しかし、現物を調べられている以上言い逃れはできない。
「はい。彼から大麻を買いました。」
「で、久保田さん、買ったのは今回が初めてかな?」
「いえ、今回で2回目です。」
「大麻は自分で使ったんだね?使い方は、喫煙かい?」
「そうです。タバコに混ぜて喫煙しました。」
 部下がコンピューターで供述書を作り、その場で印刷する。
「私、久保田良介、は○月×日、東京都渋谷区○○相馬正のアパートで大麻草2gを所持した。大麻草は乾燥させ、透明なビニール袋に入れていた。大麻草は、自分で使用する目的で相馬正から金5000円で購入した。相馬正から初めて大麻を購入したのは×月△日であり、今回は2回目の購入で、大麻を購入する目的で相馬の自宅を訪れた。・・・」
 良介はその紙に署名と人差指で捺印させられる。その供述書を見ていると、自分が法律を犯した犯罪者なのだということを実感させられて、良介はひどく気分が落ち込んでしまった。

 話がひと段落したところで、岡村が世間話でもするように話しかける。
「あなた、すごく真面目そうだし、大麻に縁がなさそうにみえるけどな。どうして大麻をやろうと思ったんだい?」
「いや、それは・・・。」
 良介は言葉に詰まる。
「ところで、久保田さん、家族はいるの?連絡しようか?」
 岡村が尋ねる。
「はい。妻がいます。でも病気で入院中です。心配させたくないので連絡はしないでください。」
「久保田さん。奥さんが具合悪いのに何やってるの?」
 岡村が若干あきれた様子で言う。
「・・・はい。妻が入院してさみしさでつい手を出してしまいました。」
 良介は動揺した様子で答えた。良介は妻に罪が及ぶのを恐れ、とっさに嘘をついた。
「いろいろと大変なんだろうけどねえ。こんなものに手を出しちゃダメだよ。まあ、奥さんには連絡しないでおくよ。でも、いずれ伝えてあげた方かいいよ。」
「お願いします。」
「じゃあ今日はこれで終わりだ。久保田さん、しばらく留置所にいてもらうよ。」
 取り調べの最後に良介は尿検査をされた。尿検査の結果は当然陰性である。ようやく取り調べが終わり、良介は身も心も疲れ果ててしまった。何も考えることが出来ない。

 取り調べの後、麻薬取締官二人が喫煙所で話している。
「岡さん、あいつ尿検査陰性でしたね。陽性だと思ったのに。」
「そうだな、なんか、引っかかるな。あいつ何か隠してないか?とりあえず送検になるな。」
 岡村は良介の送検を決めた。






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