現在のところ、大麻には使用罪はない。
これまで何度も同じことを書いているので、今さら、と思う人のほうが多いだろうが、談話室で、また質問があったので。
大麻取締法には、吸引とか喫煙とか飲食などの意味での使用罪はないので、尿検査で陽性反応が出ただけでは逮捕されない。大麻取締法にはこう書いてある。
第三条 大麻取扱者でなければ大麻を所持し、栽培し、譲り受け、譲り渡し、又は研究のため使用してはならない。
2 この法律の規定により大麻を所持することができる者は、大麻をその所持する目的以外の目的に使用してはならない。
つまり、免許を持っていないのに研究に使っちゃダメよ、ということと、免許持ってる人は目的以外に使っちゃダメよ、ということだ。
大麻には覚せい剤のような意味での「使用罪」はないので、マスコミ報道に「使用容疑でも調べる」といった誤った記述があった場合、訂正を申し入れると修正してくれる。大麻には使用罪があると思い込んでいる記者やデスクが多いから、「使用容疑でも調べる」という記述が掲載されてしまうのだろう。修正を求めることは、記者たちの認識を改めて頂くことでもある。1年前は大麻には使用罪があると言い張っていた産経ですら、最近は訂正に応じている。
露鵬と白露山の騒動では、相撲協会が行った尿検査で、二人から大麻の陽性反応が出たとして解雇された。その際、マスコミに飛び交ったのは「大麻には使用罪がない」「なんで?」「使用罪がないのはおかしい」という論調だった。
例えばここでも取り上げた毎日の提灯記事は、権力の言い分をそのまま垂れ流し、次のように締め括っていた。
捜査幹部は「大麻をきっかけに作用の強い覚せい剤などを始める人も多い。使用にも早急に罰則を設けるべきだ」と話した。【武内亮】
●大相撲大麻疑惑:再聴取、見通し厳しく…警視庁
昨年の関東学院大学ラグビー部の大麻事件では、種の取り締まりを強化したい当局の筋書き通りに、マスコミによって世論が誘導され、発芽する大麻種子の輸入を禁じた関税法も持ち出して、輸入モノの種を売っていた者たちが次々と検挙された。もともと発芽する大麻の種は輸入禁制品だったので、それを「観賞用」として売るにしても発芽するなら違法であり、法の範囲内で種の取り締まりが強化されるのは時間の問題だったろう。関東学院ラグビー部の大麻事件以降、ネットでも実店舗でも、大麻の種を扱うショップは激減したようだ。
一見、種の取り締まりを強化することに成功したようでもあるが、大麻の種は海外サイトでも買える時代だ。もう、どうにも止まらない。
大麻の種の取り締まりが強化され、あわよくば使用でも逮捕できるようにしたいというのが、世界の動向を見ず、権力の強化と予算の獲得にしか考えが及ばない、捜査当局の意向のようだ。そのような当局の意向に沿った提灯記事が今後もマスコミによって大量に流され、世論を誘導しようとするに違いない。大麻を使用罪でも逮捕できるように法改正するのは簡単だ。第三条の条文から「研究のため」という5文字を削ればいいのだ。
第三条 大麻取扱者でなければ大麻を所持し、栽培し、譲り受け、譲り渡し、又は研究のため使用してはならない。
これを、こう変える。
第三条 大麻取扱者でなければ大麻を所持し、栽培し、譲り受け、譲り渡し、又は使用してはならない。
ね?簡単でしょ?あとは関連箇所を直せばいいだけ。
厚労省が監督した公的大麻情報の説明サイト「ダメ。ゼッタイ。」には、大麻は「クサイと感じる人もいます」という、わけの分からない説明があるが、これは、原本では訳者の感想でしかなかった部分だ。
(訳注:「甘い香り」とありますが、訳者の経験では、むしろ蓬を燃やした時のような一種刺激的な強い臭いで、「クサイ」と感じました)。
参照:「ダメ。ゼッタイ。」ホームページのインチキ
大麻取締法を所管する厚労省の監視指導・麻薬対策課の情報係長は、原本を勝手に書き換えて掲載するのは改竄ではないかと批判した私に、「出典を示していないから、書き換えても改竄ではない」という、歴史に残る名台詞を返した。
参照:麻薬対策課情報係長藤原氏との対話
マスコミを使って世論を誘導し、政治家を抱き込んで、「研究のため」という5文字を消す。霞ヶ関の妖怪たちならやりかねない。
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