「日経ビジネス オンライン」に、「同僚は大麻吸引者、の日が来る」という希望的観測記事が掲載された。
サブタイトルは「若者に蔓延する大麻汚染の深刻」となっており、記事ではフリーターのAさん(男性)、有名私立大出身のBさん(26歳、女性)、旅行会社に就職が決まっている大学4年のCさん(23歳、男性)が登場する。
本文の締め括りは次のような記述だ。
「社内に大麻使用者がいると、周りの社員に広がる可能性が高まるうえに、逮捕されれば、企業の社会的な信用が大きく傷つく。企業は、若者の大麻汚染が自社にとってのリスク要因の1つになっている、と認識すべきかもしれない。
この記事は、もっともらしい結論で、社会に広がる「大麻汚染」に警鐘を鳴らすような体裁を取ってはいるが、実は「大麻汚染」報道への抵抗ではないのかと私は思った。
記事中、以下のような表現が織り込まれている。
「仕事終わりに自宅でビールを飲むのと同じ感覚」だとAさんは語る。
「大麻はヘロインやコカインとは違う。節度をもって楽しんでいるし、誰に迷惑をかけているわけでもない」。こう語るAさんにとって、大麻をやめるという選択肢はない。
これ、フリーターAさんの言葉で語っているが、記者もホントは大麻を強く否定するつもりがないのではないか。
Bさんは就職活動を機に大麻の使用をやめた。ただ、学生時代の仲間は今でも使用を続けているという。コンサルティング会社やアパレルメーカーの社員など、その業種は幅広い。
これ、大麻にはやめられなくなるような中毒性はないということと、大麻愛好者は何の問題もなく普通に仕事をしている人たちであることを、Bさんの言葉で記者が語っているのではないか。
Cさんは高校を卒業後、すぐにカナダの語学学校に留学する。そこにいた日本人留学生の手引きで大麻を手に入れた。
帰国後に都内の大学に進学したCさんは、友人を介して大麻を使用し続けた。だが日本はカナダよりも大麻の価格が高く、法的リスクも高いことから、時折に使用する程度だったという。「気が向いた時に友人から譲り受けていた。どうしても欲しいとは思わなかった」とCさんは語る。
これ、カナダでは大麻は日本より安いこと、日本では法的リスクの高さが問題なのであること、大麻には禁断症状はないから、なければないで平気なことなどを、記者は表現したかったのではないか。
この記者、「大麻汚染」という表現を使いながらも、魔女狩りのような大麻バッシングに疑問を呈しているように読める。現在のメディアの状況では、社内的にもこの程度の表現が精一杯の抵抗なのかもしれない。
マスコミ全体としては、警察情報の垂れ流しプロパガンダが圧倒的だが、個々の記者には大麻経験者は少なくないだろうし、現在の大本営発表状況を苦々しく思っている記者もいるだろう。
「大麻汚染」に限らないが、報道の最前線で現在のメディア状況に危機感を覚えている記者たちには、ぜひ頑張ってほしい。
この記事、フリーターのAさんも、26歳女性のBさんも、旅行会社に就職の決まった23歳のCさんも、実は架空の人物で、記者は現在の「大麻汚染」報道に一矢報いる意図でコラムとしての物語を書いたのではないか、とまで言っては深読みしすぎだろうか。
記者は、Cさんに、次のように語らせている。
検挙者数の増加を受けてメディアが盛んに大麻の有害性や依存性を取り上げることに対して、Cさんは違和感を覚えるという。「メディアは騒ぎすぎている。大きな問題だとは思えない」。
Cさんは、記者自身なのかもしれない。
同僚は大麻吸引者、の日が来る
若者に蔓延する大麻汚染の深刻
2008年12月1日 月曜日/日経ビジネス オンライン
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