共産党の機関紙「しんぶん赤旗」に『大麻と若者 立ち向かう人たち』と題する連載記事が11月26・27・28日の3回に亘って掲載された。
だが、その内容は、大麻とは何の関係もない。看板に偽りありだ。記事に出てくる事例は、30を過ぎて覚せい剤で逮捕された小学校の女性教師、中3の時にシンナーを吸ってその後に覚せい剤に手を出した女性の2例だけ。だが、使われている写真は、学生の逮捕を受けた謝罪会見で頭を下げている早稲田大学の理事たちと、その学生が栽培していたという、ロックウールにひょろりと生えた、20センチ程度の貧弱に徒長した大麻2株。
記事には薬物乱用対策としての政策を検証する内容が全くない。これは赤旗だけでなく、全ての「大麻汚染」報道に共通している。この赤旗の記事に書かれているのは、上記のシンナーや覚せい剤で破滅的な境遇に陥った2例と、ダルクの取り組みだけである。
ああそれなのに。全国薬物依存症者家族連合理事で共産党茨城県つくばみらい市議だという川上文子氏は、いったい何を根拠にか、『覚せい剤やコカイン、ヘロインなどいわゆる「ハードドラッグ」と比べると「ソフトドラッグ」といわれる大麻は、危険性が低いと見られがちです。それは大きな誤解です。急性中毒での死亡例は少なくとも、脳障害、意識障害、幻覚妄想などを引き起こします』と、にっこり顔写真入りで語っている。科学的社会主義どころではない。それこそ「幻覚妄想」ではないか。アメリカでも、イギリスでも、その他の国の大麻に関する研究報告でも、大麻の急性中毒で死亡するなどという話は全くない。
中3の時にシンナーに手を出し、その後、出産してからも覚せい剤を使っていたという女性の言葉が記事で紹介されている。
『「助けてほしい」と言うことができればやめられたのでしょうが、「子どもがいるの。逮捕されたらどうしよう」と、こわくって言えませんでした。』
この女性の言葉にこそ、政策としての薬物乱用対策が全く国民の役に立っていない現実が象徴されている。覚せい剤などの薬物依存に陥った者に必要なのは、逮捕ではなく、治療なのだ。だが、この女性のように、逮捕を恐れて医療機関に相談することができず、事態は悪化する。覚せい剤中毒で意識の錯乱した者が、凶悪な犯罪を引き起こしてしまう事件がこれまで何度も報道されている。これは、営利目的で薬物を売る者への取り締まりと、薬物中毒に陥った個人への対策を区別せず、医学的事実に基づかない薬物情報で恐怖を煽り、ひたすら取り締まりの強化を押し通す、警察権力が主導する薬物乱用防止政策が招いている政治的悲劇なのである。
日本では、薬物中毒に陥った者に対する医療的ケアは、情けないほど貧弱であり、ダルクのような民間の施設に大きく依存しているのが現実だ。これは紛れもなく薬物乱用対策という政策の欠陥なのである。何度でも言うが、薬物中毒者に必要なのは、逮捕ではなく、治療である。組織的な薬物密売への取り締まりとは別に、薬物中毒に陥った者が、「逮捕されたらどうしよう」などという心配をせず、医療的なケアを受けられる施策こそが必要なのである。
共産党は当方の政策アンケートに回答を拒否した。なるほど、ハームリダクション政策など、考えたことがないのだろう。大麻の急性中毒で脳障害を起こして死亡?科学的社会主義が聞いて呆れる。
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