以下の原稿は『市民の市民による市民のためのメディア 日本インターネット新聞JanJan』に、11月10日に投稿してボツになったものです。
ボツの理由は、引用が中心の記事だからとのこと。JnJanには、大麻取締法に使用罪がないのが混乱を招く原因だから、使用でも逮捕できるようにすればいいといった、大麻の事実を検証しようともしない、まるで論拠のない反大麻記事も採用されているが、事実を引用して示す原稿は採用しないらしい。
タイトル:冷静さを欠く大麻事件報道
ここのところ、日本では毎日のように大麻取締法違反の事件が報道され、逮捕された者は顔写真と共に実名が報じられ、退学や解雇によって人生の基盤を奪われている。
逮捕された者たちが、大麻で意識が錯乱して他人を傷つけたなどという例は一度もない。誰にも危害どころか迷惑すらかけていないことで逮捕され、人生を破壊されている。大麻の医学的・社会学的な事実が問われることもなく、新聞各社は「大麻=悪」を前提とした社説を掲げている。
●朝日(11/8):若者と大麻―興味本位の代償の大きさ(リンク切れ)
●毎日(11/1):大麻汚染 不正、腐敗の風潮が助長する(リンク切れ)
●読売(11/3):慶大生大麻事件 憂慮される汚染の広がり(リンク切れ)
●産経11/2:大学生大麻汚染 安易な姿勢厳しく戒めよ
毎日のように大麻絡みの事件がマスコミを騒がせる社会状況は、政府が薬物乱用対策に失敗している結果だが、各社の社説には薬物政策を検証するものがない。アメリカが推し進めてきた非寛容政策一辺倒で良いのか、欧州型のハームリダクションの成功から学ぶべきことはないのか、薬物政策のあり方を論じる社説は皆無だ。揃って「大麻=悪」を前提に、説教を垂れているだけだ。
次期アメリカ大統領のオバマ氏は、自身の大麻経験を認め、以前は大麻の非犯罪化を肯定していた。その主張を撤回した後も、医療大麻については容認の公約を明言している。
アメリカ大統領選挙と同時に行われた、カリフォルニア州の同性婚廃止法案の住民投票について触れたマスコミはあったが、多数の州での大麻関連法案の住民投票について報じたメディアはあったのだろうか。
カナビス・スタディハウスは次のように伝えている。
マサチューセツ州では、「クエスチョン2」が 65%の賛成を獲得して通過した。この発議は、現在最高6ヶ月の懲役と500ドルの罰金になっている1オンスまでのカナビス所持を100ドル以下の罰金刑に置き換えることを求めていた。賛成票を投じたのは190万人以上で、3市を除くすべての行政区で反対票を上回り、大統領選挙でオバマ候補が獲得した票よりも多かった。
クエスチョン2は、30日以内に法制化されることになっているが、それが済めば、マサチューセッツ州はカナビスの個人使用と所持を非犯罪化した 13番目の州になる。しかしながら、知事と12地区すべての法務局長を含む反対陣営は、議会によって新しい法律を 修正したり撤廃する法的オプションもあると指摘している。
ミシガン州では、投票者の63% が「プロポーザル1」に賛成した。この発議では、州が認定した患者が医師の監督下で合法的に医療カナビスの使用と栽培をできるようにするように求めていた。賛成票を投じた人は300万人以上で、オバマ候補の獲得した票よりも約15万票も多かった。
プロポーザル1が発効するのは12月4日からで、それによって、アメリカではおよそ4人に一人が医療カナビスの使用を合法化した州に暮らすことになる。
また、自治体レベルでカナビスの法改革を求める地域発議でも多数の支持が寄せられている。アーカンソー州では、フェイエットビル市(人口6万7000人)の 66% が「クエスチョン16」に賛成票を投じている。この発議では、成人のカナビス1オンス以下の所持に対して、警察は捜査や追訴活動の優先順位を最下位にするように命じる内容になっている。まだ、市当局にも、州および連邦議員たちに、「同様の非優先化法の成立に向けて早急に踏み出す」ことを要請する書簡を送ることも求めている。
ハワイ州のハワイ郡(ハワイ島、人口17万2000人)でも、非優先化発議 「クエスチョン1」 がおよそ3対2のマージンで通過 している。この発議では、成人による24オンス以下のカナビス所持と24本以下の栽培に対して捜査や逮捕の優先順位を最下位にすることを命じている。また、ハワイ島のカナビスを根絶するために連邦政府が拠出している助成金を郡議会が受け取ることも禁じている。
マサチューセツ州の4箇所の下院選挙区(15都市)でも、選出議員に対してカナビスの医療使用を合法化する法案が提出された場合には同調することを求めた非拘束性社会政策発議が、どの地区でも70%以上の賛成で通過している。
また、カリフォルニア州 のバークレー市でも、医療カナビス患者が所持できるカナビス量の制限を無くすことと、ディスペンサリーの出店可能地域のゾーニングを緩和することを求めたJJ発議が通過している。
一方、カリフォルニア州で提案されていた 「プロポジション5」(非暴力違反者リハビリ発議、NORA)は残念ながら賛成40%で否決された。この発議では、ドラッグの非暴力違反者を治療施設に送る措置を拡大することと、軽微なカナビス違反を非刑事罰則で扱うことを求めていた。しかし、この発議に対しては、共和党のシュワルツネッカー知事や民主党のダニー・ファインスタイン上院議員をはじめ、警察関係者やカリフォルニア・ビール販売協議会なども加わって反対のロビー活動を精力的に展開していた。
田中良太氏は『「マリファナ論争」を展開した毎日の「記者の目」-わがホームグラウンドの思い出』で指摘している。
いまは記者の目も大人しくなって、「マリファナ論争」などやらないだろう。「論争」などやらずに、みんなで「マリファナ叩き」をするのが、日本の「言論」である。端的に言えば「言論」になっていない。
マスコミは、「大麻=悪」という思い込みから離れ、大麻の何が問題なのか、研究や制度の進んだ海外の状況も含め、医学的・社会学的に検証すべきではないだろうか。現在の大麻事件報道は、あまりに冷静さを欠いている。端的に言えば「ジャーナリズム」になっていないのである。
●カナビス・スタディハウス/住民投票、ドラッグ戦争主義を拒絶
●「マリファナ論争」を展開した毎日の「記者の目」――わがホームグラウンドの思い出
大手のマスコミは記者クラブという既得権益に溺れ、警察当局の言いなりに、大麻の医学的事実や医療的価値、海外の現状を検証することもなく、反大麻報道で言論の自由と権力を監視する役割を放棄している。そして、「既存マス・メディアのニュース価値にかかわりなく市民の視点に立って良質な言論を創り上げます」と、聞こえの良い宣言を謳うJanJanにも、大麻について公平に議論する言論の自由などないように思われる。
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