ヘンプを



カナビスは薬用ばかりではなく、布や紙から始まって食用、化粧品、石鹸、プラスチック、建材、油脂、重油など様々な用途で利用されてきた。日用生活に必要なものはすべてカナビスから作ることができるとさえ言われている。この驚くべき植物は栽培も容易で環境に対する負荷も少なく、地球を環境破壊から救うと期待されている。

カナビスはまたヘンプとも呼ばれるが、余りに対象が広範囲になりすぎるので、社会的あるいは政治的に特に薬用以外の用途を便宜的に区別して「ヘンプ」ということも多い。(本サイトではこの習慣にしたがっている。)


●歴史
  • エリザベス女王の時代のイギリスではヘンプを栽培していない農民には罰金が科せられた。
  • アメリカの植民地ではより換金性の高いタバコを生産したがったが、帆船用のセールに使うヘンプの生産が要求された。
  • アメリカで最初のヘンプ法は1619年イギリス植民地のジェームス・タウンで施行された。バージニア植民地ではすべての農民がヘンプの栽培を義務つけられていた。
  • アメリカ合衆国の独立宣言はヘンプの紙に書かれた。
  • アメリカ大統領のトマス・ジェファーソンとジョージ・ワシントンはヘンプを育てていた。
  • ベンジャミン・フランクリンはヘンプ製紙ミルをもっていた。
  • アメリカでは1631年から1800年代初期まで税金をヘンプで払うことのできた。
  • 1812年のアメリカとイギリスの戦争はロシア産のヘンプをめぐる争いだった。
  • 1812年のナポレオンのロシア侵入もロシア産のヘンプを確保することが目的だった。
●ヘンプ織物
  • 歴史上最初の布は8000〜7000BCにヘンプから作られた。
  • 1800年初頭まで 「リネン」 という用語は主にヘンプから作られた粗い布を指していた。
  • オリジナルの丈夫なリーバイス・ジーンズは、金鉱堀が鉱石をポケット一杯にしても破れないようにヘンプで作られた。
  • ヘンプの繊維はコットンの10倍強靱。
  • ヘンプはコットンよりも柔らかく保温性がよく防水性も高い。
  • ヘンプの繊維は通気性がよいので夏期にはコットンよりも涼しい。
  • キャンバスという用語はカナビスから派生した。
  • 密に織ったヘンプの布は95%以上の紫外線をカットできる。
  • コットンの栽培には世界の農薬の半分が使われている。コットンをヘンプに置き換えればその使用量を劇的に減少させることができる。
  • ヘンプの生産にはコットンのように多量の水を必要としない。

●ヘンプ紙
  • 1883年以前には紙は75%以上がヘンプから作られていた。
  • ヘンプ紙は木製パルプ紙よりも丈夫で質がよく、長持ちして、黄色く変色しにくい。
  • ヘンプ紙は紙幣に使われている。
  • キンバリー社は聖書をつくるためにフランスにヘンプの製紙工場を所有している。
  • 紙を作るための繊維原料を得るには、木の場合はヘンプの4倍の面積が必要。木は生育するのに20年かかるがヘンプは4ヶ月。
  • 木に比較してヘンプは木質部が少ないので余り薬品を使わないでもパルプができる。もともと白っぽいので塩化漂白剤の使用も抑制することができる。木のパルプ工場では水系が非常に汚染される。
  • ヘンプ紙は何回もリサイクルできる。

●ヘンプ油
  • ヘンプからは1エーカー当たり年間でメタノール4000リットル相当の油がとれる。
  • ヘンプの油は同じ面積からピーナッツの2倍とれる。
  • ヘンプの油はランプ用オイルとして明るく、旧約聖書の時代から使われていた。
  • スキタイ人は自身の体を清めるためにヘンプの油を使っていた。
  • ヘンプ・オイルは「キネボイシン」という聖なる軟膏として聖書にも出てくる。
  • ヘンプ・オイルは機械のグリス用にも使われていた。

●ヘンプの栄養素
  • ヘンプの種には人間の免疫システムの維持に欠かせない必須アミノ酸と必須脂肪酸のすべて含まれている。
  • ヘンプの種には24%のタンパク質が含まれ、一掴みで一日の必要量がまかなえる。
  • ヘンプには大豆から作られた豆乳に見つかっているようなトリプシン阻害分子は含まれていない。

●その他のヘンプ製品
  • ヘンプの種子からは100%無害のペンキとニスが作れる。
  • 木や石油の消費を減らすことのできるヘンプ製品はセロファンからダイナマイトまで25000種以上ある。
  • アメリカで販売されている鳥のエサの大半はヘンプの種で、発芽しないように熱処理されている。

●ヘンプの生産
  • ヘンプには農薬は不要。虫にはまずい。
  • ヘンプには除草剤が不要。成長が早く生存競争に強い。
  • ヘンプは他のどの植物よりも日光の吸収効率がよい。
  • ヘンプはどのような気候・土壌でも育つ。やせた土地の改良にも役に立つ。
  • 1800年代には全アメリカの半分の産業用ヘンプがケンタッキーで生産された。
  • アメリカ政府は1937年にヘンプを禁止したが、1942年、第二次大戦で欠乏しつつある繊維やロープの原料として農民にヘンプの栽培を奨励し、「ヘンプで勝利を」 という宣伝映画を作成した。戦争が終わるとそれをキャンセルした。
  • アメリカ政府は産業用ヘンプをドラッグだとは考えていない。

●ヘンプ自動車
  • 1941年8月、ヘンリ・フォードはプラスチック車体の自動車を開発した。強靱なボディは70%がヘンプ繊維でつくられた。プラスチックは金属よりも凹みには10倍強かった。車体の重量は3分の2になった。畑からとれるアルコールやヘンプの油を燃料に使おうとしたが、禁酒法とマリファナ税法で石油を使わざるを得なかった。フォードは「土から自動車を育てたい」というビジョンを持っていた。
  • BMWはヘンプから作った材料でリサイクルに適した自動車の開発をしている。

●産業用ヘンプとマリファナ
  • 産業用ヘンプもマリファナも同じカナビス・サティバ・Lから作られる。
  • 産業用ヘンプは茎を長くして繊維が最も多くなるように育てられ、マリファナは茎の生育を抑制して葉の薬効成分のTHCが最も多くなるように育てられる。
  • 産業用ヘンプ畑とマリファナ用の畑は簡単に見分けられる。
  • 産業用ヘンプのTHC含有量は1%以下で、マリファナは3から20%。